森保監督も残留要請の佐藤寿人、しかし「出場機会」求めての最終決断は風間新監督の名古屋か…いずれにせよその環境は日本最高レベル

2016年11月18日: 編集部

２０１５年６月２日、史上初のＪ１・Ｊ２通算２００ゴールを達成した佐藤寿人は森保監督のもとへ駆け寄る（撮影・春木睦子）

去就が注目されるサンフレッチェ広島の佐藤寿人が１１月１８日、サンフレッチェ広島と広島市西区のクラブ事務所で交渉の席についた。交渉はおよそ１時間で、そのあと佐藤寿人は「練習再開までには結論を出したい」と語った。

サンフレッチェ広島は天皇杯に向けて練習を再開するが、１２月４日まではオフとなる。

佐藤寿人の移籍が有力視されている名古屋グランパスはこの日、風間八宏新監督の就任が確実になった。

風間監督は今季、川崎フロンターレをチャンピオンシップに導いた”辣腕”の持ち主。しかもサンフレッチェ広島時代には森保監督とともにチームを初のリーグ優勝（ステージ優勝）にも導いた。その時のキャプテンでもあった風間監督の背中を、森保監督は見続けている。

加えて言うなら風間監督、森保監督ともに日本代表、五輪代表監督候補として日本サッカー協会関係者の間では常に名前が挙がっている「今後の代表強化を考えた場合の切り札的存在」（協会に近い関係者）である。話が”違う”と言ってしまえばそれまでだが、佐藤寿人は”どちらにしても”Ｊリーグ日本人監督の最高峰のもとでプレーする、その「２者択一」ということになる。

佐藤寿人とすでに直接、話し合いを行った森保監督の考え方は普遍的だ。それは佐藤寿人にもあてはまるし、今のチーム全員にもあてはまる。

「世代交代はどのチームでも起こり得ること。サンフレッチェもありえること。ただし必ずしも世代交代を目的に選手の入れ替えをすることはない。あくまで競争の中で自然と出場する選手が変っていく。ベテランもたくさんいて、有望な若手もたくさんいます。ベテランの選手をプレーの評価もせずサブに置いたり、若手に試合に出る資格もないまま、練習でプレーもみせないまま起用することはない」

佐藤寿人もこの考え方にはおそらく頷くしかないだろう。

昨季のＪ１制覇を遂げたチームの原動力となったドウグラスは３３試合で２１得点の快記録を残しながらもオイルマネーの国、ＵＡＥのアル・アインＦＣにさらわれた。さらには佐藤寿人を目標に育ってきた浅野拓磨も８月、新天地に向け旅立った。

それでも佐藤寿人にはスタメン完全復帰のチャンスは訪れず、ワントップは新外国人のウタカに奪われた。佐藤寿人が万全ならウタカは２列目。事実、第１ステージの１、２、３節は佐藤寿人がスタメンで、後半途中から浅野が投入されるという昨季のパターンが踏襲されていた。そのあと第４節で浅野が試され、第５節からウタカがワントップに入った。

第２ステージになると、ベンチに座ったままで試合終了のホイッスルという形が増えた。皆川佑介や宮吉拓実がウタカ交代のあとの時間帯で試されていた。佐藤寿人は典型的な「世代交代の波」に飲まれつつあった。

だが、その「波」はまだ「大波」にはなっていない。チーム内の現状を見渡して仮にウタカが故障した場合、その穴を埋める戦力としてはやはり実績では申し分のない佐藤寿人が一番手だ。

それでも佐藤寿人本人は「ピッチ上での自分に対する必要度」の大きさ、という観点でこの先のＹ字路をどちらに進むか、その決断を下すという姿勢でいる。

最後に、余談ではあるが風間監督は現役のころからこんな話をよく周りにしていた。

「安定とか何年契約とか、そうではなくて明日どうなるか分からない、それが人生。自分は単身ドイツに渡った時も、サンフレッチェ広島にお世話になってからも、いつもそう思っているんですよ」

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