カープがキャンプを張る宮崎県日南市の油津では3月5日、歓迎祝賀パレード(広島東洋カープ日南協力会主催)が行われる。
コースの途中にある油津(あぶらつ)商店街は長らくシャッター通りと化していた。かつてマグロ漁や飫肥杉の積み出しで活気に満ちていた町は人口減少、人材の福岡などへの流出、急速な高齢化に伴い、街の顔である油津商店街は見る影もない状況となった。
閉鎖されたままの店舗は多い
インパクトのある打開策を探る日南市は2013年3月、街再生の人材を公募。”年俸”は1000万円超えの”4年契約”。2人が選ばれた。そのうちのひとりが木藤亮太さん。福岡市のコンサルト会社で街づくりを手掛けていた。「現地に移り住むこと」が条件だったため、”逆ルート”で日南にやってきた。
木藤さんは福岡生まれ、日南市との契約は3月まで、総仕上げの日々が続く
「補助金を投下する従来の手法ではなく、専門の人材を町に住まわせ、市民との対話を重視する」
木藤さんのコンセプトはハナから他の”プロ”が出してきた町再生の企画とは異なっていた。着任当初は当然、逆風が吹いた。月額90万円の高収入。やっかみもあっただろう。
だが、しばらくすると、空き店舗がどんどん埋まり、通りの表情が変わってきた。アーケード街の通行料は2倍になった。株式会社、油津応援団を立ち上げ、東京などからIT、ゲーム関連企業もすでに二ケタ、10社誘致した。野球で言えば「大ホームラン」の連発だ。
シャッター商店街が見違えるようになった
建設ラッシュ
再開発が相次ぎ、複合型施設のオープンが続く
そのけん引役となったのが、「多世代交流」施設、「油津Yotten(よってん)」。飲食できるパーティ、イベントスペース、販売スペースが確保され、土日の賑わいを生み出した。
間髪入れずその向かいの空き地にコンテナ6つを配置して異次元空間を演出、ケーキ店などが軒を連ねる「アブラツガーデン」を誕生させた。屋台風食堂空間、あぶらつ食堂もできた。そこに昨年の2月より、カープテイストを存分に加える演出も始まった。そしてカープ25年ぶりのリーグ優勝。会心のタイムリーヒット…
油津Yotten内部
油津Yotten内カープ展示充実
手作り感、プラス明るさ、楽しさ
地元ケーブルテレビの取材もちゃっちゃとこなす
スタッフとデータを確認しながら、作業を進める
カウンターにも立つ、野球で言えば走・守・攻の三拍子
油津商店街には、域に欠かすことのできない店が根付いている。
木藤さんが持ち込んだ新たな潮流に、地元のみなさんがいかに乗っていけるのか?カープ力も借りながら「神ってる」勢いを持ち始めた商店街はこの先も”消滅都市回避”へのモデルケースとなり続けることができるのか?
来年、また日本一のパレードが開催されるようならば、木藤さんも笑顔で駆けつけることになるのだろう。