黒田博樹が広島復帰後、2度目の対戦となる阪神打線を6回9安打で3失点に抑えて3勝目をマークした。
開幕から4戦連続でクオリティスタートに成功していた黒田は、これで5戦連続で試合をきっちりと作り、最下位に沈むチームに貴重な勝利をもたらしたことになる。
ただし、「ゲームの中で修正しようとしてもどうにもならなかった」と言う通り初回だけでも32球を投じる大苦戦を強いられた。
1-0で迎えた二回にはあっさり同点打を許し、これまでの相手を圧倒するような投球が影を潜めていた。
しかし…
二回、攻撃の方で本調子にはほど遠いピッチングとは別の手段で相手を圧倒することになる。
一死一塁の場面で打席に入り、バントの構えをしたところボールワンからの2球目も胸元へのボール球。これを後ろに倒れ込みながらクールに見送ったまでは良かったが、次の1球はさらに厳しいところに来て思わずのけ反り、尻餅までついた。
むくりと起き上がった黒田は自分より19歳も年下の藤浪が帽子をとって頭を下げていることもお構いなしにその”間合い”を詰め始めた。
3万観衆で埋まったマツダスタジアムのスタンドがその背中をあと押しした。さらに両軍ベンチからも選手や首脳陣が飛び出してきてた。演出効果抜群の”男気劇場”が最高潮に達した瞬間だった。
かつて広島のエースとして気迫を前面に押し出し投げ、打ち、走っていた時でも黒田がこれほどまでに気持ちを出したことはかった。
異様な空気がまだ漂うグラウンドで黒田のバスターは一ゴロに終わった。だが、続く田中の一ゴロはゴメスの後逸を招き勝ち越し点が入った。
続く三回にもシアーホルツの内野フライがサード西岡の落球を招きこれで無死満塁になると、野間の一ゴロが3・2・3と渡りホームゲッツーになるはずが、梅野の一塁悪送球を誘発して2点が転がり込んできた。
なるほど、男気とは単に凄みのあるピッチングだけを指すものではないことがこの日の勝利で証明された。そして黒田の闘争心によって火が点いた広島打線は、今季最多の11得点を叩き出してもうすぐやってくるコイの季節に備えて弾みをつけた。