前日練習で時間を確認するヨンソン監督(トップ画像)
サンフレッチェ広島はアウェーでのヴィッセル神戸戦を控え11月17日、エディオンスタジアム広島で軽めの前日練習を行った。ハーフコートの11対11ではワントップにアンデルソンロペスが入り、パトリックは控え組だった。
サンフレッチェ広島は”やってはいけない”3連敗を喫したことで一気に苦しい状況に追い込まれた。その前のコンサドーレ札幌戦も1-1引き分け。要するに4試合で勝ち点を1しか上積みできなかった。
サンフレッチェ広島の最近4試合の成績
9月30日、コンサドーレ札幌 △1-1
10月14日、鹿島アントラーズ戦 ●0-2
10月21日、川崎フロンターレ戦 ●0-3
10月29日、浦和レッズ戦 ●0-1
鹿島アントラーズ戦では前線にワントップのパトリック以下、外国人3人を配してノーゴール、降格圏の16位に下がり、そのあとも完封負けが続く。
…で、残り3試合というこの状況でアンデルソンロペスの出番となった。吉と出るか凶と出るか?いや、もう勝つしかない。
「サッカーとは人生である。どちらもいつ何が起こるかわからないからだ」
「終わるまですべてのことが起こる、人生とはそういうもの、サッカーは特にそうだ」
有名なオシム語録から言葉を引っ張ってきた。そう、諦める訳にはいかない。サッカーは人生だ。
だが、ヨンソン監督が新たに広島のピッチに立ち、丹羽やパトリックが加わり、メンタルについても熱く語り、椋原もそうしてきたがチームケミストリーに大きな変化は見られない。兆しはあったほどなく消えた。
11月12日付の中国新聞、「つかめ残留サンフレにエール」の連載企画でサンフレッチェ広島OBの中島浩司さんがこう言っている。
今できることは迷い不安を取り除くこと。勝てないと良いイメージが沸かず、意見が出なくなり、気持ちを外に出さなくなる。
中島さんの言葉は重い。
例えば放送局で言えば視聴率が「ゴール」数だ。「視聴率」がじり貧になると、番組スタート当時は意気揚々だったスタッフは語らなくなり、中には逃げ出す輩もいる。数字は時に冷酷で、その人間性まで全否定されているかのようにも思ってしまう。しかし、「終わりまですべて起こる」。どこかを突けば劇的な化学反応が起こることもある。
だた、Jリーグは甘くない。3度の日本一を経験したサンフレッチェ広島イレブンも、当時は相手に容赦なくその怖さを思い知らせてきた。
J2はひと足先に11月19日、最終節を迎える。
すでに優勝、自動昇格の2位までが確定した 。残る戦いは、プレーオフ進出争いとJ2残留争だ。
佐藤寿人の名古屋グランパスは、あれだけ潤沢な資金を持ち、風間八宏監督を据えての「1シーズンでのJ1復帰」を約束しながらJ2でもがいている。
前節、7戦無敗で3位をキープしていた名古屋グランパス(2位までが自動昇格)は敵地で9位のジェフユナイテッド千葉と対戦。後半11分間で3失点して完敗した。遅れてキックオフを迎えた2位のV・ファーレン長崎が快勝してクラブ初のJ1昇格を決めたため名古屋グランパスはプレーオフに回ることが決まった。
また勝ったジェフユナイテッド千葉は順位をひとつ上げて、プレーオフ圏内(6位以上)の可能性を残した。まさに「終わるまで何が起こるか分からない」。V・ファーレン長崎を率いて悲願を達成したのが、かつて風間主将の下でサンフレッチェ広島に前期優勝をもたらせたアジアの大砲・高木琢也だった、というのもドラマ的だ。
ちまたでは(ひろスポ!も以前にそう書いたが…)、「残り3試合でサンフレッチェ広島の相手はどうこう」、「勝ち点差で1の15位ヴァンフォーレ甲府の相手は最下位・アルビレックス新潟と…」などと言われているが、もうやるか、やられるかの状況だから、それは言わない方がいい。
前日練習終了後、あるベテラン選手がヨンソン監督を呼び止めて通訳を交え話し合いをしていたのを見かけた。中島さんの言葉を借りれば、もうこの時期にきたら思う存分、言いたいことは言い、みんなで納得して共通の「絵」を見てピッチ立つべき、ということだろう。
残り3試合、270分でサンフレッチェ広島とサポーターと広島市民・県民と広島の街の未来は大きく変わる。
もっと言えば、今度J2に落ちたら人材の流出に歯止めがかからず、当分J1に上がるチャンスはなく、それにともなってクラブ経営もじり貧になる…という最悪の事態も想定される。
そうならないためには、どうするか?大一番でバタついてあっと言う間に3失点の名古屋グランパスはまさにそうあってはいけない、という反面教師だ。
ゆえに、第1に先制されないこと。
第2に、まず1点取ること。
第3に自分とみんなを信じて12月の最終節のホイッスルを聞くこと。
そしてサンフレッチェ広島の誇りを胸に「終わるまですべて起こる」と心の中で叫び続けること、
最後に、このヨンソン監督の話の内容をしっかり受け止めること、である。
練習後のヨンソン監督の話
きょう、練習前にタクトがみんなに言葉をかけてくれた。ケガが直ってみんなといい準備を進めてきた、と。そのとおり。ガンバ大阪とのトレーニングマッチ(11月11日)までも、そのあとも、トレーニングマッチも練習の一貫と考えいい準備ができた。
きょうは短めだったがいい感じに仕上がった。大事なのはフォーカスすること、コンセントレーション、シャープさ、それにリラックスというのとは違うが過度な緊張感を抱かないことだ。
※ガンバ大阪トレーニングマッチ(ガンバ大阪第1練習場)
試合時間135分 (45分×3)
試合結果 ガンバ大阪 1-2 サンフレッチェ広島
【1本目】0-1
【2本目】0-1
【3本目】1-0
得点経過
【1本目】36分:柴崎晃誠(0-1)
【2本目】30分:松本泰志(0-2)
【3本目】23分:≪ガンバ大阪≫(1-2)
(3試合連続無得点の攻撃については)アンデルソンロペスが中央でプレーするという形でのスタートの可能性はある。彼はサイドでプレーしていたが中に入ってきてプレーした。今もいい感じだ。
(勝ち点3を取るためのキーは)やはり堅い守り。攻撃面ではこれまでどおり決定機を多く作る。もしシュートがポストに当たったとしても今回はそれがゴールになるように。そこは強い気持ちの問題だ。メンタル面でもみんないい状況で臨もうとしている。得点は入っていないが、決定機を作り自信は失っていない。その思いがバックボーンとなってあすの神戸戦に挑むという気構えがみんなできている。
11対11でヘディングシュートを放つアンデルソンロペス(オレンジビブス)、右端はアンデルソンロペスとの距離を計りながら攻撃を組み立てるフェリペ・シウバ
アンデルソンロペスの話
練習ではうまくできている。でもハーフコート。実際は距離感も違う。そこでしっかり自分のプレーをしたい。使ってもらえるならピッチの中で監督に恩返ししたい。ゴールに近いポジション。攻撃にかけるエネルギーの割合を増やせる。ボールがこない時間帯でも冷静に。もうここからは失敗は許されない。3試合とも決勝戦だと思って戦う。
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