画像は愛宕山スポーツコンプレックス、ソフトボール場そばに立つ米国チーム応援幟
東京五輪第5日(7月27日)、ソフトボール決勝、日本-米国が横浜スタジアムで行われる。午後8時開始予定。
1次リーグで4連勝した日本はその時点で銀メダル以上を決め、26日の米国戦は1―2でサヨナラ負けした。
決勝は2008年北京五輪に続く金メダルを懸け、1次リーグを5戦全勝、1位通過の米国と対戦する。
ところで日本-米国の決勝は、広島県に隣接する山口県岩国市と深い関係があるのだが、それを知る広島県人はもしかしたら多くないかもしれない。
中国地方とは縁遠い?首都圏の人ならなおさらだろう。
東京の南西、約960キロメートル(約600マイル)、岩国市には米海兵隊岩国航空基地がある。基地には米軍と海上自衛隊が駐留。岩国基地の人口は米軍人、米軍属、米人家族、日本人従業員、自衛隊員、そのほかの日本人勤務者を含めておよそ1万3千人にもなる。
1997年、騒音や安全の問題を考慮し瀬戸内海を埋め立て、岩国基地の滑走路を1キロ沖合いに移設する事業が開始され、埋め立てには岩国市の愛宕山から掘削された土砂が使用された。事業は2010年3月に終了。新滑走路は同年5月から使用開始された。さらに、2012年12月には岩国錦帯橋空港が基地内に開港した。
これについて触れると長くなるので岩国錦帯橋空港HPから一部引用するとこうなる。
「防衛施設庁から空母艦載機の岩国飛行場への移転等に伴い必要となる施設整備について、米側で作成された包括的な施設整備のマスタープランが提示され、この中で現滑走路の北端先地域の基地内及び隣接の国有地が、民航ターミナル地域として示される」
広島県内でも山口寄りの自治体に住む人は「遠くて不便な」広島空港より岩国錦帯橋空港の恩恵に預かっている。
前出の愛宕山を削ったあと、そこをどうするか?この件でも喧々諤々あって最終的にはアメリカ風のスポーツ施設群や医療、防災施設がレイアウトされた他ではなかなかお目にかかれないような空間が誕生した。愛宕山スポーツコンプレックスだ。
ソフトボール米国チームが岩国錦帯橋空港に降り立ったのは7月5日午後2時過ぎのことだった。
選手18人とコーチ、スタッフ計31人。空港では福田良彦市長や米軍岩国基地司令官のランス・ルイス大佐らが出迎えた。ここがミソ、だろう。岩国市は東京五輪パラ、米国ホストタウン…
米国チームが練習、試合を行ったソフトボール場にはそのまま横断幕が残されている
カープ二軍も使ったキズナスタジアム
一行は14日まで、事前合宿を行ったが、宿泊先が基地内のホテルだったのがいかにも“らしい”。11日にはコンプレックス内のソフトボール場で練習試合も行われ、感染対策を取ったうえで見学OKとなった。岩国市民やアメリカ軍基地の関係者などおよそ1100人が訪れたという。
岩国の地図の中にはまり込んでいる基地は、沖縄の基地群とはかなり様子が異なるかもしれない。うまく表現できないが、基地と市民生活との隔たりようが岩国の方がより”平面的”なような…だが、悪化する一方の騒音問題や安全の担保上の問題など基地の町が抱える共通点は多々存在する。
「オスプレイ」と「岩国基地」の関係がますますクローズアップされる中、メディアの中には「被爆地・広島を飛び回るオスプレイ 岩国空域(ラプコン)占有する米軍」との見出しを取る社もある。
岩国基地問題を報じるNHKニュース画面より
基地近くの風景
基地ゲート
岩国と広島、そして東京五輪。国内開催で金メダルを目指す日本チームにとって忘れられない決勝となるのはもちろんだが、米国選手、関係者にとっても思い出の日本、となるだろう。
これを機会に日米ソフトボール定期戦でも始まれば、平和を考える機会もより増える。
侍ジャパンと対戦するメキシコ代表の親善試合がコロナ禍で先ごろ中止になったマツダスタジアムにも、米国代表を招いて…
広島スポーツ100年取材班&田辺一球