初代広島市民球場、満員のライトスタンド
広島のエース黒田博樹の素顔」第9回
黒田博樹の中の一番のプライオリティー(優先順位)は常に「ファンのみなさん」
2006年の11・6、黒田博樹の「残留宣言」
そして2014年12・27未明からの衝撃の「黒田、広島復帰」のニュース。
この2つの出来事は広島ファンのみならず全国のプロ野球ファンの心の中に深く刻まれた。
その理由は至極簡単…
黒田が常にファンのことを最優先に考えているからだ。
2006年のオフ、迷える剛腕が最後に下した「広島残留」の決断は“ファンの力”によって実現した。
黒田はこの”騒動“のあと、実際にこう話していた。
「いろいろ判断する材料はありましたけど、最後にファンの人にあれだけのことをやってもらいました。ファンの人の動きを見て最後に気持ちがしっかりしました」
11・6から3週間前の10・16広島市民球場。右肘痛を発症し実戦から離れていた黒田が九回、7-5と2点リードの場面でリーフカーに乗ってグラウンドに登場した。マーティー・ブラウン監督ならではの演出だった。それまで「ファンやメディアに自分が動かされることはない」と言っていたが「ギリ&ニンジョウ」に弱い「ナイスガイ」の指揮官だった。
スタンドは沸き立ち、1万6415人の入りとは思えない熱気を発した。黒田もそれは分かっていた。「ブルペンに入った時点でもう目に焼き付いていた。熱いものを感じました」
46日ぶりのマウンドで黒田が投じたのはわずかに4球。この時点ではまだ誰にもその先のことは分からなかった。「阪神か…、メジャー挑戦か…」新聞はそう書き立て、ウイニングボールをスタンドに投げ込む黒田の背中もまた「先のことは分からない」と語っているように見えた。
そして、今回もまた分かれ道に立った黒田はギリギリのところで「広島行き」の道を選んだ。
新井が帰ってきた、球団の誠意を感じた、もうすぐ40歳になる。理由はいろいろあるだろう。だが最後はやはり「ファンのため」、そしてそう自分の手でファンに優勝を届けるために平成の剛腕は古巣に戻ってきたのである。