松井市長がサッカースタジアム建設候補地に絞り込んだ広島市南区の広島みなと公園で先ごろ開催された広島みなとフェスタ。参加者の一部は公園側から横断歩道を渡る。この時、信号のタイミング以上に車の往来は阻害される。
集客力の脆弱なこのエリアに賑わいを生もうと始められたのがこのイベントだが、しかしこのエリアに賑わい、交流の場が生まれることと、海の玄関口としての宇品・出島地区の「物流機能」の集積や、その合理的な運用は実は二律背反する。
よって「物流」に欠かせない「定時性」をまともに脅かす3万人あるいは4万人収容のスタジアムが広島みなと公園に建設されれば、出島地区と東部・安芸郡坂地区との間を頻繁に行き来する「陸運」が「脳梗塞」を起こし、「物流」拠点は山口・岡山両県などに「転出」していく可能性が高い。
「ひろスポ!」は「新サッカースタジアム取材班」を編成し、昨年4月の開設以来「旧広島市民球場の活用策」「新サッカースタメン検討協議会」ほか、広島市街地での建設を急ぐ「複合型」「多目的」の「グラウンドに陸上競技場トラックのない」サッカー専用スタメンの建設問題について紹介してきた。
また、まだ広島市がスタジアムの建設場所について「検討中」としているにもかかわらず、すでに広島市の松井市長が関係者に対してサッカースタジアムの建設場所について、サンフレッチェ広島や多くの市民、サポーターが希望し、支持している「旧広島市民球場跡地」ではなく宇品地区の「広島みなと公園」であることを告げた、という事実も報じた。
これまでの主な記事はつぎのとおり。
2014年12月8日 広島サッカースタジアム構想空転でサンフレッチェ広島、久保会長が広島政財界に協力要請、広島市の松井市長は祝辞でスタジアムの話題「割愛」
1月13日 サンフレッチェ広島ピンチ!?サッカースタジアム建設問題に関して県内トップ4者会談から県サッカー協会離脱
1月17日 サンフレッチェ広島社長、小谷野薫氏が広島市市長選立候補へ、広島のサッカースタジアム建設と街作り推進目指す
1月27日 広島のサッカースタジアム問題関連で、地元中国新聞1月27日紙面に「屋根付き広場」
1月28日 サッカースタジアム建設場所、広島市議会では「これから絞り込み」、しかし松井市長は「もう宇品しか考えておらん」で完全に市民は置き去り
1月29日 サッカースタジアム建設候補地、松井市長は「宇品しか…」、サンフレッチェ広島は「旧広島市民球場跡地」、では市民、サポーターらのジャッジは
この中で1月28日の記事を読んだ港湾関係者から「ひろスポ!」宛てにメールが届いた。事実関係などを確認した上で、この時期にこのメールを掲載することが必要、との判断に至った。
宇品・吉島地区の港湾関係者とその背後に広がる日本全国、アジア地域、全世界の港湾関係者をも巻き込み、このままでは広島の臨海部が激震に見舞われることになりそうだ。
広島市並びに松井市長、広島県関係者に向けた港湾関係者の切実な思いとその理由は次のとおり。
貴誌を時折読ませていただいております。
さて、サッカー場建設候補地に「広島みなと公園」が、旧球場跡地と共に残されておりますことについて、昨年の誌面において、「みなと公園1本に絞ると市長が発言」との記事、われわれ港湾関係者は、かなりの衝撃を受けています。
その後、われわれも様々なルートで確認を取り、現実的に県、市、広島商工会議所が密かに結託しているという情報を得ました。
しかしながら、これも確証はないまま現在に至っています。
統一選挙後には、宇品出島で決めるとのウワサもキャッチしています。
さて、広島みなと公園は、埋め立て地の出島地域の入口に位置しており、出島自体は、物流、海上・港湾・港湾倉庫・トラック事業の会社も多くあります。
海上を経由してくる船舶輸送貨物は、出島地域の岸壁に寄港し、貨物の積み卸しを行い、倉庫、上屋、保管庫、野積み場を使用します。
また、出島の東南には平成15年に供用開始した、「広島国際コンテナターミナル」があって、海田のターミナルと併せて、年間約20万本のコンテナを取り扱っています。
全国62港の国際コンテナ港で、平均10位に位置するコンテナ港です。
広島港の管理者は広島県知事です、市長ではありません。
広島港は政令・港湾法2条2号に指定された旧・特定重要港湾であって、2011年の改正で「国際拠点港湾」と名称変更されました。
出島ターミナルは、SOLAS対応の岸壁と海域で、保税地域にも指定されており、多くの輸出入コンテナ貨物が寄港して、荷役作業され、各荷主に配送されています。
船会社や港湾業者のいう広島港コンテナターミナルとは、出島のコンテナターミナルと海田コンテナターミナルを指します。
一見すると離れていますが、一元的な業務を行っているのです。
そのため、港湾物流途上の、しかも出島入口に位置する「広島みなと公園」に、不特定多数の集客施設を造るということは、世界の港湾事情から見ると類を見ない愚行であると考えています。
実現した際には、世界中の港湾有識者から笑いものになるのは必至です。
12月に県、市、商工会議所に対し、その点を述べた反対陳情書を提出したところです。
広島市は港湾管理者になったことは無いため、港湾事情に見識のある役人は皆無です。広島港の管理者である知事が、一向にこの事態収拾をしないということは、港湾労働者から見ると港湾管理者としての執務懈怠と解釈されることでしょう。
いずれにしても、もしどうしても広島みなと公園に建設する場合には、400億円を投じて造った出島のコンテナターミナルは、物流に支障が考えられる港と判断されるため、寄港は無くなるか、減少して、閑古鳥が鳴くことになります。
そうなるとほとんど国の費用で造った国際コンテナターミナルですから、数年後には、数百億円を国庫に変換せざるを得ない状況になります。広島県は市に請求するでしょうから、実施者の広島市に払えるのでしょうか?
港湾に引き続き、倉庫協会、トラック協会有志による陳情書も提出されていますが、御誌上ですら、海上・港湾業界の対応については論じられていません。
スタジアム検討協議会の議事録を読みましたが、海上港湾業界については欠落しています。
議論にもなっていません。有識者なる方々の選別は誰がどのように行ったのでしょうか。
選定した方々の見識不足が悔やまれますし、あれで有識者とはさすが広島です。
7月には決定と言うことでなので、もう時間が有りませんが、港湾に携わる、一読者の声として投書させていただきました。
長文となったことをお詫び致します。港湾についても注視しておいて下さい。
このメールをもとにひろスポ!、新サッカースタジアム取材班では現地で各方面に取材を進め、驚くべき現状と数々の問題点について現場の声をキャッチした。
松井市長は昨夏の土砂災害で甚大な被害、人命の喪失を引き起こしたその惨状に対し「まるで他人事もように対処した」あるいはとうとう「謝罪の言葉もなかった」として現地から、そして安佐南区、安佐北区の住民から厳しい声があがっている。
さらには地元の声に抗い、結果的には市議会でも否決された「安佐市民病院移転問題」でも安佐北区の住民から厳しい視線を送られている。
そして今度はサッカースタジアムの建設場所の問題で、広島みなと公園案を水面下で推し進め、南区の住民と国内港湾関係者からもブーイングを浴びる状況となりつつある。
2013年12月、松井市長はサンフレッチェ広島のJ1優勝決定戦直前にスタジアム建設を急ぐことになるから「サンフレは2位でいい」とサンフレッチェ広島関係者の前で言い放ち、この時は全国のサポーターから大ブーイングを浴びて即刻、発言訂正に追い込まれた。
広島みなと公園へのサッカースタジアム建設案にまつわる港湾関係者の切実な、そして怒りの声は、広島市長選の行方次第では県・市を巻き込んでの大問題に発展する可能性が高い。
新サッカースタジアム取材班