画像は森下暢仁
上記、サイトコラムより5月4日、マツダスタジアムであったDeNA戦で”二刀流”の活躍をしたカープ森下暢仁の”素顔”に迫る。
カープダイアリー第8605話「森下“二刀流”で見据える未来、「マエケンさん」から学んだこと」(2024年5月4日)
青のビジパフォ以外、赤と白に染まった大入りのスタンドに向けて松山が叫んだ。
「鹿児島のばあちゃん、天国のじいちゃん、きょうオレやったよ!」
こどもの日を翌日に控えて“コイ祭り”にふさわしい締めコメになった。だが、試合は意外な展開でとなり、劣勢のまま終盤を迎えた。
右肘の張りの影響で開幕第2戦先発を黒原に譲った森下にとっては1カ月遅れのDeNA戦。その立ち上がりではテンポよく12球でアウト3つ。
ところが二回、打ち取ったはずの牧の三ゴロを二俣が悪送球して無死一塁。さらに牽制球を堂林がスルーして得点圏に走者を背負うハメになり宮崎一ゴロで三進されると大和に犠飛を上げられた。
松山とともにお立ち台に上がった森下はこの展開について聞かれてこう答えた。
「これ以上、点を取られたらやばいなぁと思っていたのでゼロで抑えておこうと思って投げました」
そう、打線の援護が期待できない今のチーム状況にあっては、2点目を取られた“Cエンド”。
4月30日の床田は阪神戦6回3失点で負け投手、5月1日の大瀬良は阪神戦5回2失点で勝ち負けつかず、前日3日のアドゥワは6回2失点で負け投手…
三、四、五回を3人ずつで片付けた森下は六回二死から一番・桑原にぶつけてさらに二盗も決められたが蝦名を空振り三振に仕留めた。七回は二死から宮崎に左前打されてノーヒット投球がストップすると、続く大和のピッチャー返しを自ら弾いて内野安打にした。だが、ここも山本を真っすぐで遊ゴロに取り2点目を与えなかった。
それだけではない。バットを握れば3安打。二回にはファウルで粘って9球目のカットボールをレフト左に二塁打!四回の第2打席でも153キロのストレートをレフト前に転がした。来た球に8分の力でヘッドをぶつけるからミート率が高い。
DeNA先発は新外国人左腕のケイ。開幕から4試合に投げて1勝2敗、左打者の被打率が・179で主武器のスライダーが効いていた。
新井監督は前日の東に封じされた打線をいじることなく、六番坂倉のところに曾澤に入れ替えるだけで点を取りにいく策を選択した。
おそらく森下は投げることについてだけでなく、打つことに関してもお見通しだったのではないか?自分が何とかしないと点が入らない…と…
迎えた七回、先頭の二俣は初球を打ってライトフライ。森下3度目の打席でDeNAバッテリーはがらりと配球を変えてきた。
森下もすぐに気づいたはずだ。初球真っすぐでストライク、2球目はチェンジアップで空振り。3球目はスライダーでファウルにした。4球目もスライダーでファウル。いずれも低目を突かれた。5球目も低目のチェンジアップだった。
これをお手本のようにショート頭上へ打ち返した。レフト前ヒット。秋山が左前打で続き菊池が四球を選んで満塁として、来日最多109球を投じたケイをマウンドから引きずり降ろした。
そしてDeNA二番手の徳山から野間の二ゴロ併殺崩れの間に森下が同点のホームを踏み、堂林の代打松山が徳山の真っ直ぐをライトスタンドへ運んだのである。
「暢仁がすごいいい見本を見せてくれてたんで、暢仁を見習って、僕も力まず、軽く打とうと思って打席に立ちました」という松山のヒーロー談話は傾聴に値する。
森下は投げても打ってもチームの勝利を引き寄せる力を持っている。年明けに行った「マエケンさん」との自主トレでその思いはいっそう強くなった。
カープでの8シーズンで97勝を挙げエースに成長したマエケンはデトロイト・タイガーズに移籍した今季、やはりMLB8シーズン目を迎えた。高い目標を掲げ、長く第一線で活躍するためにはどうあるべきか?
さらにはピッチングに関する考え方から打席での心構えまで、学ぶことは山のようにあった。
2010年シーズン、ノーノーを記録して投手三冠を手にしたマエケンは記憶にも残るスーパースターだ。2008年9月28日、旧広島市民球場でのラストゲームでプロ1号ホームラン。海を渡っても2016年4月6日のサンディエゴ・パドレス戦6回無失点投球で初勝利をつかむとともに、四回レフトスタンドにソロホームランを叩き込んだ。
カープ時代のマエケンは「スーパースターの条件」にある、表現力・スマートさ・意外性・可能性・明るさを兼ね備えていた。本人は「そんなんじゃないですよ、意外性…ありますかねぇ、はい…」とだけ答えていたが…
説明するまでもなく大谷翔平はその5条件を兼ね備えている。
そういえば森下は大谷翔平がロサンゼルス・ドジャース入団会見を行った日本時間の2023年12月15日に契約更に臨み、会見の第一声で「大谷選手より多くいただきました。1016億円です」と切り出した。単なるジョークではないだろう。MLBが遠い世界の話ではないことがそこから透けて見えてくる。今季の目標は「マエケンさん」がカープ時代に2度マークした15勝。1試合も1イニングも、そして1打席もムダにはできない。