ドカベンの明訓よりスゴイ！全部員2リットル弁当の広島基町高校、ベスト８かけ広島４強に挑む

各種競技スポーツ

2014年07月22日: 編集部

基町高校外観基町高校内観

美術館のような外観、そして内部から望む広島城はカープの名に由来する鯉城としても知られている。

ここは広島基町高校。「高校受験ランク」では県内トップクラスにランキングされ、今年3月の大学合格者を見ると、東京大学３名、京都大学10名、大阪大学11名…

夏休みの３者面談も始まった7月22日、緊張感あふれる校舎内を進み、お邪魔したのがこちらの部屋。

基町高校平沢弘監督

ひろスポ!編集部（以下編）突然すいません。野球部監督の平沢弘さんですか？

平沢　はい。どちらさまでしょうか？

編　ほんとアポなしで申し訳ございません。スポーツＷＥＢ媒体「ひろスポ!」です。一応、ここの野球部ＯＢです。今、三者面談の準備中とお聞きしましたがあす4回戦ですよね。ちょっとだけお話を聞かせていただけませんか？「文武両道」でやっていらっしゃるとは思うのですがひろスポ!のテーマの中に「文武両道」「広島の子供たちの明るい未来…」というのがありますものですから…。

平沢　（あっさりと）いいですよ！

編　ありがとうございます。ではさっそく、ここまで広島大会1回戦で美鈴が丘に８－１、2回戦で安芸南に４－０、3回戦も広島市工に４－０と手堅く勝ち進んできてあすはいよいよ春の県大会ベスト４、シード校の市立呉戦ですね。今グラウンドで選手に「監督は面談の準備で忙しい」と聞いて来たのですがグラウンドには…？

平沢　ここ一週間くらいはなかなかグラウンドには顔が出せない状況です。それにうちは自分たちで考え取り組んで、できなければ聞きにくるという形をとっています。試合でも自分たちで判断することが大切ですから。打つこと、守ること、僕が動かせばある程度できるようになるとは思うのですがプラスアルファを求めていなかいと勝てない、と…。

編　あすの大一番を前にしても自然体ですね。もちろん狙いもあってのことだとは思いますが…。

平沢　そうですね。私は以前、舟入高校にいました。そのころはボールはこう握れ、バットはこう構えろと細かいことを言い続けていました。ただ、こちらに来てから気づいたことがあるんです。それは”いくら細かい技術を伝えても元になる体、肝心の振る力などがないと成果はあがらない”ということです。２、3年前に強豪校と試合をした時、相手の打球は芯を外れても内野の間を鋭く抜けていきました。それが、こちらは芯でとらえてもなかなか抜けてくれない、そんな状況を目の当たりにして、それで逆の発想に行きつきました。

編　どんな風に指導されたのですか？

平沢　中学時代、ハードにやってこなかった子がほとんどなのでまずは体作り、ということで”しっかり食べる”ことを徹底しました。具体的には２リットル弁当箱。これを3年くらい前に取り入れました。

編　それってドカベンの山田太郎と一緒ですよね。

平沢　はい、本気で食べることを習慣にしていけば体が大きくなり打てるようにもなることも分かってきました。そこで次には単純に振ることを繰り返してやるような方向に持っていきました。自宅でも振り込むのが一番ですが、そうもいかない家庭も多いので学校での限られた時間の中で強制的に、思い切り振れ、とは言い続けてきています。構えはこうしろとか、タイミングの取り方はこうとかそういう類の話はほとんどしません。

編　守備はどうですか？今大会は３試合で失点１です。

平沢　同じくできるだけ言わないようにしていますけど守備は良くないです。今回、失点が少ないのはたまたまです。

編　ここまでひとりで投げてきた２年生左腕、西田健大投手の踏ん張りも大きいですね。

平沢　彼はここでこう投げたらこう打ち取れる、というイメージができていて場馴れもしています。加えてコントロールもあり左投手の特徴もうまく出せています。２、３戦目はストレートも走っていて失点ゼロ、ゼロで来ました。ただし市立呉戦では西田ひとりでは難しいと思います。

編　相手は今春の県大会ベスト４ですね。

平沢　はい、春の3位です。実は春の県大会でもベスト８をかけ市立呉と対戦しました。結果は０－８で負けました。相手はあわよくば甲子園というチームですから…。

編　尾道商で現カープ投手コーチの山内投手を育て、賀茂では現オリックスの海田投手を育てた中村監督のチームですから相当鍛えられていることは容易に想像できます。

平沢　総力戦になることは覚悟しています。子供らにはリベンジの思いはあるでしょう。でも力量差はやはりありますから３、４、５点勝負に持ち込めれば…。先ほどお話したプラスアルファの部分などは、こういうチームと試合をして勝つためにどうすればいいか、ということに繋がっていくわけですが今はまだその途中段階です。もっともっと自主性が出せるように、そういうチーム作りをしていかないといけない、という思いはあります。

編　なるほど。ところで最初にお話した「文武両道」については野球部はやはり厳しいのですか？

平沢　厳しくやっています！（きっぱり）授業中、寝ていたり追試を受けるようになれば次の追試まで出場停止にするなど、そこはしっかりやっています。自己申告させていますがきっちり守ってくれていますね。

編　受験はどのあたりを目標にしているのですか？

平沢　東大を受けた者はいますが合格者はいません。東大の今の準エースは修道から行っていますけどね。うちは京大に合格した者はいます。やはり勉強が本分ですからそこはしっかりやってもらわないといけません。

編　いろいろとお話していただきありがとうございました。それではグラウンドに行って四番を打つ選手と主将に話を聞いて帰ります。ありがとうございました。

基町高校ナインダッシュ
工夫しながらの練習の合間に給水
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ダッシュを繰り返す内野陣

基町高校葉山君
四番を打つ葉山奨内野手（３年）
ボクは２・２リットルの弁当箱でご飯８、おかず２の割合です。おかずには必ずキャベツを母に入れてもらいます。ほかにおにぎりも１、2個食べます。入学時は１８２センチ、72キロでしたが今は１９０センチ、88キロです。高校通算27本塁打ですが、公式戦では1回戦の美鈴が丘戦で打ったホームランが初めてで感触は今も残っています。試合でホームランを狙うことはありませんが、フルスイングすることは心がけています。えっ？勉強ですか？一日３時間以上は自宅でやることにしています。国立法学部を目指しています。

基町高校伊藤主将
葉山選手と同じ早稲田中学出身の伊藤将貴主将（３年）
僕が特別どうこうする、というよりみんなで話をして、選手間のコミュニケーションを大事にしています。この春、市立呉と対戦した時は二回、一死一、二塁の場面で向こうのエース左腕、西田君が出てきてゲッツーにとられてから流れが変わってしまいました。今度の対戦では相手に流れを握られないよう、先制して自分たちのリズム、ペースに持ち込みたいですね。