試合前の段階でシーズン171安打の菊池が神宮球場であったヤクルト戦で二回と六回にヒットを放ち、野村監督のシーズン最多安打数である173安打に並んだ。
野村監督は1年目39安打、2年目149安打、3年目170安打で173安打はプロ7年目。そして17年目で2000本安打に到達した。
菊池は1年目46安打、昨年133安打、そして今季このままいけば144試合終了時点での通算安打数でも指揮官と肩を並べそうな勢いだ。右打者でありながらこの驚異の安打ペース。守備と同じく打撃力も「異次元」であることが証明された。
さらに広島関係者に居並ぶ名球会バットマンにも菊池は迫る。
菊池の師匠でもある新井打撃コーチのシーズン最多安打は184本でプロ13年目に記録。石井琢朗守備・走塁コーチは174安打で打者転向7年目に記録。
そしてプロ野球解説で活躍中の前田智徳さんはプロ16年目に172安打記録しているがきょう、菊池に追い越された…。
前田さんも、丸を球界を代表する左打者に育てた新井コーチも、一流と言われるバッターはそれぞれ独自の打撃理論武装している。
ところが菊池にはそれが”ない”。「特に形にはこだわりません」と言い放ち、スイング軌道がどうとか、間がとれるとかとれないとか、軸回転がどうのこうのとか、内角のさばきがどうとか、真っ直ぐに押し込まれるとか、落ちる球や緩急に弱いとか…、そんな会話をほとんど交わすことなく名球界打者の”仲間入り”。
だが、そんなことを振っても気にも留めずに毎日、グラウンドに飛び出していく。それが菊池の菊池たる所以でもあるのだが…。