相手が社会人とはいえ、重圧のかかる場面でバントを成功させた鈴木誠也
今季、広島の一番を打つのは誰か?
3月に入った現在、本命視されているのがドラフト1位、大卒新人の野間峻祥。2月1日のキャンプインと同時に、その非凡なバットコントロール、スイング軌道、打球の質、さらには走っても守ってもプロの標準以上という能力の高さで、ここまで実戦で最も多くの打席を与えられ、素晴らしい打球や守備力を随所で披露してきた。
対抗馬に挙げられるのが、同じく左打ちで社会人2年目の田中。緒方監督も「打つ、守るの両面で大きな上積みが期待できる」として、有力候補に挙げている。
二番が菊池、三番が丸。来季に続いてこの二人を固定するなら一番は左バッターでもいい。
だが、ここにもうひとり、将来を嘱望された若武者がいる。一昨年、現役を引退した前田智徳さんの若いころの背番号51を引き継ぐ鈴木誠也。キャンプではずっと野間峻祥とライトのポジションを競り合ってきた。
鈴木誠也もまた野間峻祥同様、宮崎・日南と沖縄で重点強化選手として多くの経験を積んできた。
対外試合でも結果を出してきた。ただ、3月1日、沖縄キャンプでの最後の対外試合となったDeNAとの練習試合で3度、バントをファウルにして緒方から「そんなに甘いもんじゃない」と指摘され、メディアでもそのことが大きく紹介された。
こうした背景があって、3月5日に行われた社会人オール広島との練習試合。今季、本拠地マツダスタジアムで行われる初めての実戦で鈴木誠也がその存在感を見せつけた。
まず試合前。
鈴木誠也だけウインドブレーカーなしでアップをした。気合いが入っていた。
試合には「一番・ライト」でスタメン出場。初回、初球を左前打して先頭打者として塁に出た。
三回の第2打席では右中間を深々と破りながら三塁をオーバーランしてタッチアウトになった。
迎えた六回の第3打席は無死一塁から初球バントはファウル…。
2球目もバントのサイン。重圧がかかる…
しかし、今度はきっちりと決めてみせた。2日前、全体練習がオフの日も、ひとりバント練習に取り組み、こういう場面に備えてきた。
さらに…。
七回、第4打席は二死三塁の場面で中前適時打
すかさず二盗成功…
「今は野球にだけ集中する」というその言葉通り、ミスをしてもまた取り返す。伸びシロが大いに期待できるだけに、使ってみたくなる選手の筆頭にこの鈴木誠也もいると考えていい。
野間峻祥の方は、この日から使用が可能になったマツダスタジアムに隣接する屋内練習場などで調整を行った。
あす6日にもマツダスタジアムで中日との練習試合が組まれており、土・日には同じくマツダスタジアムでヤクルトとのオープン戦も行われる。
ここでも一番打者とライトのポジションを巡る激しいバトルが続くことになる。かつて緒方監督が若いころに背負っていた37番をつける野間峻祥と前田智徳の51番の戦い。歴史は繰り返される…。