4者会談に臨む松井市長と湯崎知事、夢のあるスタジアムの話し合いを行うのにこれほど厳しい表情なのはなぜか?
8月10日に広島のサッカースタジアム問題を話し合うトップ会談、4者会談が行われた。
状況は異なるが、2004年の球界再編問題を受け「カープの危機」を察知した関係者の尽力により緊急招集された「新球場建設促進会議」では、当時の秋葉市長の呼びかけで政財界のトップが一堂に会し、密度の濃い話し合いを続けて短期間のうちに「新球場建設」に関する必要事項をまとめ上げた。話し合いはすべて公開された。
それなのに今回の4者会談はなぜ非公開だったのか?早くから4者会談の開催を希望していたサンフレッチェ広島の久保会長は当初から公開での論議の場を希望していた。
ひろスポ!ではすでに広島みなと公園が6月の時点でスタジアム建設候補地から実質的に脱落したことを指摘し続けてきた。
そのことは先の4者会談ではいったいどう扱われたのか?
だが大方の予想はできる。
あれほど「広島みなと公園優位」を叫んでいた湯崎知事と松井市長はこの件ではこの日、報道陣に向けて何ら具体的な話をしなかった。
ひろスポ!では広島商工会議所・深山会頭が一手に引き受ける形になった4者会談後の記者会見でこの件について聞いてみた。その時のやりとりは次のとおり。
ひろスポ! 今まで知事、市長はみなと公園優位を強く言ってきたが、どのあたりでそれは言われなくなったのか。またその理由は?
深山 それは今回の4者会談に向けて、どういうスタンスで臨むかということで、だから今回の階段においてそういうスタンスで行こう、ということになったんではないかと、なったんではないか、とした、と思います。
ひろスポ! 同じように久保会長の方はあくまで旧広島市民球場跡地という姿勢できており、すぐに「はいそうです」とはならないのでは?久保会長は何と?
深山 えーこれは、やはり今までどおり「旧広島市民球場跡地が現在でもベストと思っている」との発言でした。
このやりとりは録音を起こしたものであり、細部までは聞き取りにくい。しかし深山会頭の答えは一部、微妙に言い方が澱んでいる。
松井市長と湯崎知事は3月3日の久保会長の旧広島市民球場跡地におけるスタジアム独自案発表以降、非常に厳しい言い回しでその言動を批判してきた。枚挙にいとまがない、とはこのことだが、その矛先を収めた理由が「今回の4者会談に向けて、どういうスタンスで臨むかということで、だから今回の階段においてそういうスタンスで行こう、ということになった」というのはあまりにも不自然だ。
また、このことは裏を返せば「作業部会レベルの話し合いなしに4者会談はできない」と言い続けていた3者側に、久保会長に歩み寄りの姿勢を見せざるを得ない理由ができた、と見ることができる。
しかし歩み寄りの姿勢を見せたのなら、今回の4者会談の「結論」は当然、「広島みなと公園とともに建設候補地としてサッカースタジアム検討協議会が示した旧広島市民球場跡地をスタジアム建設候補地として、久保案の具体的検討に入る」ことになる。
ところが深山会頭の会見を聞いていると、まったくそんな話し合いをした形跡はない。久保会長は4者会談の中で「旧広島市民球場跡地が現在でもベストを思っている」との発言したらしいが、この点については松井市長が旧広島市民球場跡地についてスタジアム以外の用途を検討中、と説明したとなっている。仮にそうであってもそこから互いに意見を出し合えばいい。また湯崎知事、深山会頭には別の見方があってもよさそうなものだが…。
4者会談後の松井市長、湯崎知事、久保会長の囲み取材での発言からも、4者が「旧広島市民球場跡地にスタジアムを造ること」について話し合った形跡がいっさいない。
…ということであれば、ハナから久保会長の旧広島市民球場跡地案への代案を3者側が持ってこの4者会談に臨んだ、と考える方が自然である。多忙なトップ4人が1時間もかけて話し合いをして、「旧広島市民球場跡地」を巡る論戦をしなかったなら、「旧広島市民球場跡地案」の代案について話し合ったとしか考えようがない。
そうなれば、深山会頭の会見内容は実際のモノとは大きくズレてくる可能性が高い。
深山会頭の発言が先の発言以外にもう一カ所、非常にあいまいになったところがある。サッカースタジアム問題を長らく取材していれば見えないものも見えてくる。
深山会頭のやりとり(2)
中国新聞 今までの3者のみなと優位ということと旧広島市民球場跡地を含めて第3ウンヌンの議論をするのか、ふたつは落とすのか?
深山 最終的なふたつの案も含めて、えー、さらに、さらなる候補地を検討しようということであります。で、みなと公園が優位というのは検討協議会の結論ではなくて、その結論を踏まえて3者が出した、まあ方向性であります。まあ、いずれにしてもフラットにして優劣はつけずにということでとらえていただければいい。みなと公園と旧広島市民球場跡地とさらなる新しい候補地を再検討しうようということであります。
中国新聞 それは「優位」という見解を取り下げるということでしょうか?
深山 取り下げるというワケではないんだけど、並列にして検討していこうと。
中国新聞 もう1点。第3の候補地について具体的な名前はきょうは出たのか。
深山 えっと、これは、まあ、きょうは、えー、それはありません。次回へ向けそういう検討をしていこうじゃないかと。
以上
深山会頭は「きょうは、えー、それはありません」としている「中央公園芝生広場」について、それが「旧広島市民球場跡地案」の対抗馬として堂々の論議された、と考えないとこの話は収まりようがない。もっと言えば「その他の候補地」などはすべてダミーである。
深山会頭は4者会談に漕ぎつける前に、単身、大阪市内のエディオン本社に久保会長を訪ね「中央公園芝生広場」の打診をし、その前後に何度もメディアに向け「中央公園」と繰り返した。それは深山会頭個人の考えではなく、湯崎知事、松井市長との共通理解である、とそんなことは誰でも分かる。それなのに4者会談で「それはありません」というのは不可解を通り越して間の抜けた話になってしまう。
それよりもそのあとの「次回へ向けそういう検討をして行こうじゃないか」との部分。「そういう」を「中央公園芝生広場を第3の候補地じゃなくて最有力候補地として」と置き換えればすべて納得、である。
この見方が合っているかどうかは、この先、行われるであろう4者会談の流れを見ていけばすぐに分かることでもある。
都議会を「ブラックボックス」と呼ぶらしいが、広島も負けてはいない。
なお、ひろスポ!では1年以上も前にも”こうなること”を見越して「広島みなと公園優位」を決めた湯崎知事に直接、その場で質問したことがあった。
以下、その時のやりとり。
ひろスポ! 「3者のどなたにお答えいただいても構いません。宇品は港湾関係者が物流の妨げになることに強い危機感を抱いておられます。宇品が優位、とするのは現状にそぐわないのでは?」
湯崎知事 「私が答えましょう。だから交通調査などを行ってみよう、ということです」
以上
その時点ではまだ新聞報道などは皆無だったが、すでに港湾関係者らの意思は固く、スタジアム建設候補地を巡る論議が遠回りすることは火を見るよりも明らかだった。
この先も似たようなことが起これば、サンフレッチェ広島のクラブと選手、サポーター、市民・県民が被る損失は計り知れない。
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