サンフレッチェ広島は幾多の試練を乗り越えて「全力」で広島の未来へと駆けていく。
サンフレッチェ広島、森保一監督は、どんな思いをその胸に仕舞い込み、J1の荒波の中、大切なチームを、サンフレッチェイレブンをゴールのない未来へと導こうとしているのだろうか?
監督就任イヤーからいきなりのJI・2連覇。その偉業とサンフレッチェ広島の置かれている環境、サポーターの熱い声援、そして「流出」の止まらない「戦力」と、次々に紫のユニホームに袖を通す新たな希望の「戦力」たち…。
ある関係者は「新たに好きな女性ができたら、もうその人の気持ちは変えられない」と地方クラブからの選手流出に歯止めをかけることの難しさを説く。
確かに…、そうだ。
長崎出身の森保監督が、高校卒業後に少しずつ広島の人になっていく過程をこの場で語りあかすことはしない。
しかし、Jリーグオリジナル10にサンフレッチェ広島が名を連ね、1993年秋のドーハの悲劇でどん底に突き落とされ、1994年のサンフレッチェ広島前期優勝の歓喜の輪の中でその笑顔が弾け、そしてクラブの経営危機や移籍や引退や指導者としての研鑽を経て、広島の顔としてこのチームを率いるようになって今年で3シースン目。
そうであることはみんな知っている、そして「誰もが尊敬する」「誰からも愛される」指揮官としての資質を備えていなければ、ルーキー監督のJ1連覇もありえない。
周囲から「ACLも…というのは無理がある」という声があがっているのを承知の上でアジアのステージにも挑み、摩訶不思議なアウェーの判定にも泣かされながら、ひとつ高いところにまでチームを導くことに成功した。
ただ、限られた戦力に負荷をかければ当然何らかのマイナス要素が、リーグ戦の長丁場を戦っていく上でそこここに頭をもたげてくる。
それでもフル代表、年代別代表にも選手を送り込み、そしてナビスコ杯も天皇杯もやりくりしながら全力でぶつかっていく。
「いるもので戦う」「そしてベストを尽くす」
自らにそう言い聞かせ、言い出したらキリのないようなマイナス思考の言葉は絶対に口にしない。
夏の終わりのエディオンスタジアム広島で公式戦の前日練習を終えた森保監督が、報道陣に次のようなコメントを残している。おそらく自身の気持ちを再確認する意味でもチームの目指すべき方向性についてメディアに再確認する意味でもいいタイミングだと感じていたのだろう。
「天皇杯、J1で残っているのは8チームだけ。元旦決勝で負けて悔しい思いをしたのでもう一度、優勝のタイトルを取りにいく。でもその前に目の前のゲームをどうするか?うまくいかないこともたくさんある。うまくいかなくて当たり前のことをやっている…。もちろんJ1での3連覇を我々は目指しているし、天皇杯もナビスコ杯もある。常に上を目指してやらなければいけないし、難しいことをやりながら高みを目指す。例えばヨーロッパの強豪チーム。バイエルンミュンヘンは優勝してチームの土台はそのままで補強して…、というその積み重ね。でも我々は、連覇する時の中心メンバー、優勝メンバーは入れ替わりながら高みを目指す、という形をとっている。そして選手も素晴らしいトライをしてくれているからこそ去年の連覇も成し遂げることができた。今年は順位的なこともあるけれど、そして怪我人も含めて試練はたくさんありますが、チームのコンセプトを構築しながら高みを目指すことは変わらない」
…だから実りの秋はきっとくる。
来年も、再来年も。
森保監督が紫のユニホームに袖を通した、はじめの日を起点にしてこの挑戦に終わりはない。
残るはJ1リーグ戦3分の1とナビスコ杯。その「高み」へと「全力」で挑み続けることで、新たな風景がきっとまた見えてくる。これまでの20数年がそうであったのと同じように…
文責・ひろスポ!サンフレッチェ広島取材班