広島市が過去、「杭」の問題で「一部構造計算にミスがった」と認めたマツダスタジアムについて、広島市が当然必要とされる再調査に手をつけていないことが11月16日、ひろスポ!独自の取材で分かった。
三 井不動産レジデンシャルが発注、三井住友建設が施工し2007年12月に完成した横浜の分譲マンションの「傾き」が指摘されたのが2014年。それ以降、住民の声に耳を貸そうとしない担当者らが外堀を埋められて「杭打ちデータ改ざん」を認めたのは10月16日のことだった。
矢面に立たされたのは旭化成建材。11月13日には「266件の改ざん」と「杭打ちデータ50人以上の関与」が発表された。と同時にこの日、業界最大手のジャパンパイルも担当する物件の「データ流用」などが判明。
翌14日の中国新聞社会面には「同社はマツダスタジアムなどの大型物件も手掛けているが調査を終えていないという」の記事が掲載された。
だが11月3日、ひろスポ!ではすでに以下のように報じている。
「広島新サッカースタジアム問題…サンフレッチェが3回優勝したら考えます→サンフレは2位でいい、とした松井広島市長は、今何を考えているのか?」
上記ニュースの中より以下抜粋。
ところで今、広島市が抱えるスタジアム問題は新サッカースタジアムだけではない。マツダスタジアムもそうだ。
「必要な本数の杭が打たれていない」(事情に詳しい複数の広島市関係者、市議会関係者)としてマツダスタジアムの「構造欠陥」並びに「構造計算書偽装」を指摘する声が秋葉前市長の時代に上がったのは周知のとおり。
さらに松井市長もマツダスタジアムの構造的な問題については詳しくその状況を関係から「直接聞いている」という確たる証言がある。
大騒動になっている旭化成などの「杭打ち偽装」問題は、マンション住民や自治体関係者にとっては寝耳に水、だが、マツダスタジアムの場合「広島市の当時の担当者も含めて工事にかかわったすべての人がその問題性を認識して蓋をしたままにしている」とマツダスタジアムの構造設計資料をその手元に置く広島市の元幹部職員がそう言いきっている。
引用は以上。
そして11月13日現在、マツダスタジアムの建設にかかわるすべての公文書について精査を進めているこの広島市の元幹部職員が市の担当者に確認したところ「まだマツダスタジアムの杭のチェックなどは手をつけておりません」との返答だった。
「なぜすぐにやらないのか?」との問いには「(中国新聞にジャパンパイルの名前が掲載され事実を)知ったのが14日土曜日でまだ時間がないから」との理由だった、という。
例えば庄原市では、今回の事件発覚以後すみやかに行動に移し16日、「旭化成杭打ち」について過去10年に遡り調査した結果、同社の3件の杭打ちデータについて「流用は確認できなかった」と発表した。
広島市の場合はすでに外部からの指摘でマツダスタジアムの「杭」の問題で「一部構造計算にミスがった」と認めた経緯があるにもかかわらず、この問題に対して積極的な姿勢が見られない。
マツダスタジアムは「当初はあるはずだった」杭がおよそ200本も「間引かれ」る、という特異な状況で工事が進められたという経緯があり、「杭」にまつわる案件はすべて最重要となっている。
マツダスタジアムを支える杭の本数は453。その資料は優に1700ページにも及ぶが、1本1本についてのデータに流用がないか、などはやろうと思えばすぐにでもできる状況にある。
だが、広島市民球場を管轄する市都市機能調整部は「ジャパンパイルから連絡がないので詳細が分からない」とまるで他人事のよう…。
一部専門家の中からは「マツダスタジアムは震度7前後の地震で大きなダメージを受ける可能性はある」との声も上がっているが、これではまさに昨夏の広島市の大規模土砂災害の二の舞、「人災」の繰り返しとなる恐れすらある、と言えるだろう。
新サッカースタジアム取材班