第90回記念選抜高校野球大会、第1日(3月23日、甲子園)
瀬戸内(広島)のセンバツが…、大会初日で終わった。
選手宣誓の大役は、新保利於主将が見事にやってのけた。そして第3試合、早くも出番が回ってきた。
相手は春夏通じて初出場の明秀学園日立(茨城)。春夏初勝利を目指して甲子園に乗り込んできた打線のチームだ。
瀬戸内のエース、浴本一樹は初回、先頭バッターに三塁打され失点。だがその裏の攻撃で、三番の東大翔が右前打。門叶直己、浴本一樹の連続夜四球で二死満塁。続く大本泰成も四球。押し出しで追いついた。
三回、1点を勝ち越されたがその裏、東大翔は死球、門叶直己はフルカウントからセンター前ヒット。強い打球でエンドランが決まり無死一、三塁。後続が連続三振で二死…。
ここで一走・門叶直己が一、二塁間に挟まれ、三走・東大翔はホームへ。相手のバックホームが逸れて同点。四回には新保利於主将の適時二塁打で3対2と勝ち越した。
五回を終えて浴本一樹97球、明秀学園日立の主戦・細川拓也は98球。五回、浴本一樹にぶつけるなど細川拓也も制球に苦しんでいた。
試合はそのまま八回へ。明秀学園日立はライト門叶直己の好守もあって3者凡退。瀬戸内は二死一塁から二盗を狙ってアウト。
そして九回。すでに140球を投げていた浴本一樹は全体的にボールが高めに集まり始めた。一死も奪えず3連打で同点。送りバントでさらに一死二、三塁。
瀬戸内の長谷川義法監督は、ここで二番手の山根彗生にスイッチしたが三番・池田陵人に犠飛を上げられて3対4になった。あっという間にひっくり返された。
その裏、相手のエラーに乗じて二死三塁。ここで、昨秋の中国大会1回戦(米子松蔭)、4本塁打の”瀬戸内怪童”に打順が回ってきた。
初球、高めの変化球。無理なスイングで二飛。最後の打者となり、門叶直己は試合後は座り込んだ。帽子を顔で覆って号泣した。
注目されても自分は大丈夫、平常心でやれる…
昨秋の中国大会も、最後は継投がうまくいかず準決勝で敗れた。それからは、チームバッティングをさらに考えるようになった。
「1試合4発はいずれも左方向」。大舞台ではそんな甘い球ばかりは来ない。だから帽子のツバには「栄光に近道なし」と記して、バットを何百、何千回と振ってきた。センターから右方向にも強い打球を打てるようになるために。
ところがこの試合、七回の第4打席、一死一塁の場面でアウトロー137キロを見逃して三振に取られた。相手の意地の1球だった。ギリギリのコースだったけど、それをファウルにしないと…。ひと冬越えて、鍛錬してきたのはそのためだった。
前の打席で厳しい球を見送ったおかげで、九回、細川拓也との5度目の対決では「決めてやる」という気持ちが早打ちに繋がった。
けっきょく九回、浴本一樹の球は相手打者の打てるところに集まり、それを痛打された。逆に九回の瀬戸内打線は、巧い具合に散らばる細川拓也の球を、どんどん振って行って142球完投を許した。
来月、瀬戸内は創部100年を迎える。長い歴史の中で甲子園の土を踏めた選手はほんのひと握りだ。
広島市内ではもうすぐサクラが咲く。野球部のグラウンドまで坂道も薄紅に染まる。
門叶と長谷川監督
そしてすぐに夏がやってくる。
第100回全国高等学校野球選手権記念大会に”怪童”出現。センバツの経験を、あの1球をを糧にして、栄光に近道なし。