画像は世界基準に合わせるために、広島での秋季練習から長いマスコットバットを振り込んできた菊池涼介、侍ジャパン起死回生のタイムリー2本は、その巧みなバットコントロールから生まれた
侍ジャパン注目のプレミア12初戦が11月5日、台湾、桃園市にある桃園国際野球場であった。相手は4年前に同じ場所で激闘の末、日本がサヨナラ勝ちした相手、ベネズエラ。
今回もまた死闘になった。
先発の山口俊は4回1失点。しかし日本はベネズエラの先発左腕、ドゥブロンの前に三回まで無安打。四回、浅村栄斗がチーム初安打を右前に打ち返すのがやっとだった。
四番に座る鈴木誠也は初回、菊池涼介、近藤健介が連続四球を選んだ一死一、二塁で打席へ。パスボールで二、三塁になったが5球目の膝元へのカットボールを見逃して三振。バットを一度も振らなかった。
四回も先頭の近藤健介が四球で出塁。鈴木誠也はボールカウント2-1から中途半端な初スイングで空振り。5球目、今度はアウトローを見逃して三振した。
新井貴浩氏の訓えは、こういう大会はあっという間に終わってしまう。投球を見ていくのではなく、振っていこう、というものだった。
鈴木誠也はそのことを理解した上で1、2打席目をこういう使い方にした。
そのせいかどうなのか、2度目の見逃し三振のあともベンチに戻った時の表情に余裕があった。
五回、ベネズエラベンチも継投策に出る。二番手は右腕のソティリエット。一死から九番の小林誠司が四球で出て一番・坂本勇人へ繋ぐ。坂本勇人の打球は遊ゴロだったが、セカンドへのトスがとんでもなく高くなり一、三塁のチャンスをもらった。
新井貴浩氏はやはり広島のリーグ3連覇で苦楽を共にした菊池涼介とも沖縄以降、言葉を交わしてきた。もともと積極的な打撃がウリのそのバットはここぞという場面で余計にそのキレ味を増す。ボールカウント1-0からの2球目を見事ライト線へ。これで1対1同点。近藤健介は申告敬遠。そして鈴木誠也の第3打席。その表情は2打席連続の見逃し三振とは思えないほど平然としていたが、結果もその通りに…初球をセンター前に勝ち越し適時打して一塁上で笑顔を見せた。
直後の六回、イニング跨ぎとなった山岡泰輔、大竹寛、中川皓太を注ぎ込んで結果、3点を奪われた。その裏、日本は一死一、三塁として小林誠司に代打・会澤翼を送ったが一邪飛。さらに沖縄での強化試合で快音が聞かれず、あえて一番を任された坂本勇人も空振り三振…
追い込まれていく日本はしかし八回に一挙6点のビッグイニングで試合を決めた。ベネズエラ5人目のエスコバーの乱調に乗じて無死一、二塁。二塁走者の浅村栄斗の代走に源田壮亮。稲葉篤紀監督、勝負手の連発。ベネズエラも速球右腕のビスカヤにスイッチ…
しかし絶対に決めて欲しあった松田宣浩の送りバントは一飛。それでも稲葉篤紀監督は表情を変えない。
続く會澤翼が四球を選び一死満塁になってまた日本は息を吹き返す。すると、坂本勇人ではなくここは代打・山田哲人。
…この交代の決断が吉と出る。その初球、打球はレフトポールのわずかに外側にキレていくファウル。フルカウントから押し出しでまず1点。菊池涼介、今度は初球を引っ張って同点タイムリー。
勝ち越しを狙う稲葉篤紀監督はサードランナーを會澤翼から周東佑京にスイッチ。近藤健介がこの日4つ目の四球を選んで周東佑京はゆっくり勝ち越しのホームイン。
なおも一死満塁で、鈴木誠也の第5打席。マウンドにはベネズエラ7人目のソコロビッチ。鈴木誠也がルーキーだった2013年に広島にいた右腕との対決は、鈴木誠也に軍配が上がり、ここもボールカウント1-1からのレフトへの犠牲フライ、これで6対4。さらに吉田正尚の申告敬遠を挟み、打席の回ってきた源田壮亮の適時内野安打と丸佳浩の押し出し四球で8対4。
8安打の日本が10安打のベネズエラを振り切った。菊池涼介、近藤健介、鈴木誠也、それに浅村栄斗で計12出塁、6打点だった。(ひろスポ!・田辺一球)