画像は九里(左)と大瀬良
広島の九里亜蓮(30)が11月22日、マツダスタジアムで会見に臨み、国内FA権を行使せず残留することを発表した。
球団の提示した条件は3年契約で総額6・5億円。18日にやはりFA権を行使せず残留宣言した大瀬良大地(30)の“上を行く”破格の好条件が巨人などへの流出の危機に対する防波堤になった。
コロナ禍にあって、今の選手たちの働きは数字だけでは評価できない。今季、プロ8年目を終えた九里と大瀬良のチームへの貢献度は互角と言っていい。ただし過去の実績では大瀬良が上回る。それが今季の旧年俸、大瀬良1億5000万円、九里8700万円によく表れている。その差、6300万円。
大瀬良は3年8億円で今回、契約を更新した。1年換算で約2億6700万円。旧年俸の1・8倍。
九里は1年換算で約2億1700万円、旧年俸の2・5倍で大瀬良の増加率を遥かに上回る。
ふたりの差は1年あたり5000万円。旧年俸差の6300万円から縮小された。
ドラフト1位、2位右腕がともに互角の“戦い”をする。スカウト冥利に尽きる話であり、球団としてもファンとしてもこれほど頼もしいことはない。
もちろん鈴木誠也(27)のポスティングシステムを使ったメジャー挑戦の置き土産なしには、このW残留はあり得なかっただろう。
コロナ禍以前の話ではあるが、2019年10月にやはり国内FA権を行使せず、残留会見した曾澤翼(33)は旧年俸9200万円で九里と似た状況だった。新たな契約は「2億円プラス出来高」と報じられ、結果的に2020年、21年の年俸はともに1億8000万円と報じられた。
同じ年に同じく残留を決めた野村祐輔(32)はドラフト1位、8年目でのFA残留で大瀬良と同じ状況だった。2年契約で旧年俸1億2000万円、新年俸は総額3億円。各年では現状維持の1億2000万円プラス出来高3000万円。結果的には2020年、21年とも1億2000万円。しかし今季は0勝に終わり、“二軍扱い”の大野練習場で契約を更新、その額も限度額いっぱい40パーセントダウンの7200万円となった。
田中広輔も昨年オフ、FAせず残留会見。現状維持の1億5000万円プラス出来高の2年契約でサインした。選手会長として、目には見えない仕事も背負う。ただ、2019年に右膝を手術。今季はショートのポジションを小園海斗(21)に明け渡した。
これらの数字、実績からすれば、大瀬良と九里のW契約更新は成績ダウンの危険性もはらみながら、しかし、チームの来季を考えると“豪華に”更新せざるを得ない状況だった。
ケビン・クロンという見てくれと実力差の大きな空砲で臨んだ今季、チーム本塁打数は123本。巨人169本、ヤクルト142本、DeNA136本に続く第4位だが、鈴木誠の38発を減じるとたったの85本になる。今季最少だった中日の69本に近づき、面白味の欠ける攻撃に終始する危険度大…
オフェンス弱体化のマイナス面は、ディフェンスでカバー。しかし、打線の援護が期待できない投手の難しさは誰より佐々岡真司監督が熟知している。
来季、大瀬良と九里がふたりで何勝できるか?複数年契約した曾澤、野村、田中広はいずれも故障対策に腐心するシーズンが続いている。九里は故障知らずだが、大瀬良はコロナ禍以外の離脱も今季経験した。この先も良きライバル関係の続く両右腕にとっては、漲るやる気×大きな重圧の3年勝負が始まることになる。