阪神矢野監督の旅はまだ終わらない、矢野vs高津、そして高津vs中嶋＋水本から多くのことを学ぶはずの新井監督はカープ新ユニホームに袖を通す

画像は高津、新井両監督の母校、広島工のグラウンド、サッカー部、ラグビー部との共用が今も続く、以前にはグラウンドの中に運動器具が設置されていて”守備の邪魔”になっていたが撤去された

阪神の矢野燿大監督が10月15日、大阪市福島区の阪神電鉄本社で退任会見を開いた。

「僕の夢はまだまだ続く。子どもたちを笑顔にしていくのも僕の大きな夢ですし…」と言いながら言葉を詰まらせた。最後は矢野ガッツを報道陣に披露して監督としての戦いを終えた。

同じ頃、マツダスタジアムでは来季の「カープ新ユニホーム発表会見」に新井貴浩監督が“乱入”して背番号が25をつけることを公表した。両監督は阪神で２シーズンだけ“かぶって”いる。阪神はこの日、井上一樹ヘッドら6人のコーチ陣の退団を発表した。

その中に新井カープに呼ばれる“人材”がいる可能性もあるだろう。

新井監督は、先の神宮球場での矢野監督vs「母校広島工の先輩」高津監督の戦いのエンディングをどんな思いで見ていただろうか？

……

「阪神中島みゆき打線」の終わりに－

セ・リーグ、CSファイナルステージ第3戦。

胸を泥だらけにしたサードの村上が姿勢を下げる。一塁ベンチの高津監督は表情を変えず、三塁側の矢野監督は一度視線を足元に落とした。満員の神宮球場のスタンドから、マウンド上のマクガフへ…。

「いざ、にっぽんシリーズへ…」実況アナの声が最高潮に達する。

代打原口が膝から崩れ落ちるように空振り三振してゲームセット。ヤクルトの2年連続日本シリーズ出場が決まった。

もし「矢野さんの4年間」を30分番組にまとめるなら、そんな絵割（カット割）で入ることになるだろう。

現場の最前線で取材するディレクター・記者が話題や問題の深に迫る、NHK大阪放送局制作の「かんさい熱視線」で過去オンエアされた「悲願の日本一へ虎を導く～阪神矢野燿大監督～」には、そんなエンディングが用意されていた。

ゲームセットに沸き立つ神宮球場のグラウンド。矢野監督はヤクルトベンチに足を運び、高津監督と言葉を交わし握手した。何度も高津監督の肩を叩いた。

このカットで中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」がフェードインする。

「俺たちの」旅はまだ終わらない、と…

そんな番組をまた制作していただけたら…

ふたりは同級生。矢野監督は高津監督にいろいろな思いを託したのだろう。

阪神打線は、お笑いコンビ・ますだおかだの増田英彦から「中島みゆき打線」と名付けられている。先見性のある、ナイスセンス、さすが虎党。

先の関西発の番組の中で矢野監督は自分のことを「学校の先生」だと言っていた。プロの世界でそれってどうなん？と考える人は多いだろう。かつての名将たちのキャラや言動とはその姿勢は大きく異なるようにも感じられる。

だが時代の流れが選手の資質も変えていく。昔は移動のバスの中でゲームをやったり、選手自身がSNSでプライベートを発信することなどあり得なかった。

監督業は多岐に渡る。プロ野球にはJリーグのような監督になるための「ライセンス制度」がない。だから監督を目指すなら教員採用試験受験者並みに自分で学ぶしかない？

高津監督に関してはこれまでもひろスポ！で何度も取り上げてきた。高津監督もまた「学校の先生」タイプだろう。

「環境の変化に合わせ、指導者の発想も変えていかなければならない」と言っている。

さらに「指導者として僕が考えていることは、選手の手は引っ張るが足は引っ張らない。背中は押すが頭は抑え込まない」（プレジデント社・２０２２年2月10日「徹底解明精神科、心療内科のウラ側」）と話している。

そして２０２１年開幕前のこの言葉。

「僕は自信がありません。でも、君らがやる自信はもっている。君らは絶対できる。そこは自信を持ってください」

そのメッセージ力がどんなものであったか。ひろスポ！では２０２１年の日本シリーズ終了後、高津監督の小・中・高校生時代に過ごした場所を訪ね、そのエネルギーの源（みなもと）と向き合った。

新井監督もその力の源を知っている。通学路は違っていたが、同じ広島の空の下で過ごし、同じ広島工のグラウンドで甲子園を目指した。

新井監督は矢野vs高津に続く日本シリーズでの高津vs（中嶋監督＋水本ヘッド）から多くのことを学ぶはずだ。

そして25番のカープ新ユニホームに身を包み、来季は高津監督に挑むことになる。（ひろスポ！広島スポーツ１００年取材班＆田辺一球）

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