カープダイアリー8434話「龍馬伝、タイムリミットぎりぎりの決断へ…寒風の広島市内、2007年新井・黒田の時もそうだった」

画像は２０１６年カープ優勝パレードから

運命の瞬間は一日伸びた。FA宣言する？しない？を“宣言”する日はとうとう明日に持ち越されリミットギリギリになった。

朝から冷たい雨が落ちた広島市内は、正午前には晴れた。だが気温は上がらず県北には雪が積もった。風が吹くと、マツダスタジアム関係者入り口そばのサクラの落ち葉が舞った。

あの時も、そうだった。

11月5日、広島市民球場から原爆ドームを望むと周囲の樹木が紅葉して、落ち葉が舞っていた。

その中を、高級手提げバッグを左手に持ち、スーツ姿で歩く１８５センチの大柄な男性。黒田球団アドバイザーの２００７年の姿だ。

「プロ野球人生の中で最も難しい決断」を球団に報告するためにやって来た。ＦＡ宣言、そしてメジャーリーグ挑戦…。

その3日後、11月8日、リーガロイヤルホテル広島で涙のFA会見。朝、自宅を出る前にシューズボックスの前でもまだ宣言しようかどうか迷っていた。新井監督が広島に別れを告げた時の話、だ。

出ていきたくて出た訳じゃない。広島生まれ、広島育ち、もっといえば広島市民球場育ち。

報道は真実を伝えず、ファンから「裏切り者」の大合唱。マスメディアが正しい訳ではない。場合によっては罪を作る。

２００４年の球界再編や、２００５年の同時タイトル獲得。右の主砲と剛腕は太い絆でつながっていた。

それからちょうど9年目の11月５日。

今度は広島の街が沸き立った。25年ぶりのリーグ優勝パレードが午前１０時３０分、平和大通りで始まった。ふたりはオープンカーから手を振った。だから…未来のことは誰にも分からない。

新井監督と黒田球団アドバイザーが一度は広島に別れを告げてから、もう16年…

今度は龍馬がゆく。自分の道を。

新井監督はチームを預かる者として最大限のことはやってきた。あとは本人しだい。

この日のマツダスタジアムには野間や堂林、それに曾澤も姿を見せた。トレーニングルームや部屋でどんな会話が交わされたかは分からない。

龍馬は番記者らに自分の気持ちを明日、話すことを告げきょうも“黙考”を貫いた。だが、もう結論は出ているはず…

ネット上にはカープファンが気を揉むような情報がアップされた。

「北陸新幹線敦賀開業100日前イベント」として龍馬とレッド・ソックス吉田正尚が「敦賀気比高OBアスリートトークショー」を12月16日、福井県敦賀市民文化センターで行う、という。

敦賀気比は龍馬の原点。大阪生まれ福井育ち、社会人の王子製紙（愛知県春日市）を経て２０１５年ドラフト５位入団、12月のリーガロイヤルホテル広島での入団会見から8年が経過しようとしている。夕暮れ時、平和大通りの電飾ドリミネーションが試験点灯した。広島市内はまた12月までイルミネーションの街になる。

そう、黒田球団アドバイザーが「僕は帰ります」とカープ球団に伝えた日もやはりそう、だった…歴史は繰り返す。でも、未来のことは誰にも分からない。（ひろスポ！取材班＆田辺一球）

※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。

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