画像はCS開幕前のチーム練習で、ボールの感触を確かめる寺嶋良(5月8日にドラフラベースで撮影)
クラブ史上初のBリーグチャンピオンシップ準決勝に進んだ広島ドラゴンフライズ(ワイルドカード上位・西地区では3位)は5月16日、広島県廿日市市の練習施設「ドラフラベース」で2日後に迫った2023-24チャンピオンシップ準決勝GAME1に向けて調整の様子をメディアに公開した。
三遠ネオフェニックス(中地区1位)相手に2連勝で準々決勝を突破したチームの士気は高い。18日から、再び愛知県内の新たな敵地、ドルフィンズアリーナ(愛知県名古屋市中区)で決勝進出を懸けて名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(西地区1位)と激突する。
この日の全体練習後のあと、共同会見でマイクの前に立った船生誠也、山崎稜、ドウェイン・エバンス、中村拓人の4選手とカイル・ミリングヘッドコーチは、攻撃力に秀でた三遠ネオフェニックスとよく似たスタイルで準決勝の舞台に立つ名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの大一番に向け自信をのぞかせた。
一方で、選手、スタッフ全員が改めて長期離脱中の司令塔・寺嶋良の分まで闘い、そしてBリーグ頂点へ…という強い思いを胸に秘めていることも確認できた。
広島ドラゴンフライズから前日15日に発表された、寺嶋良に関するリリースはショッキングな内容だった。
リリースに掲載された岡崎修司ゼネラルマネージャーのコメント
この度、寺嶋選手が右膝の半月板の手術を行うこととなりました。先日リリースした骨挫傷と内側側副靭帯損傷は改善傾向にあり、トレーニングを開始しておりましたが、先日の精密検査の結果、内側半月板損傷が十分な回復に至っていないことが判明しました。
寺嶋選手の将来を考え、手術をすることとなりました。早期の復帰を目指しながら、復帰時期については、経過を見つつ慎重に判断をしてまいります。CSのQFを突破し、勢いに乗るチームから離れることは、本人も苦渋の決断になったと思いますが、寺嶋選手の分も、チームは最後まで戦ってくれると思います。引き続き寺嶋選手への応援をよろしくお願いいたします。
……
3月3日に広島グリーンアリーナであった千葉ジェッツ戦で寺嶋良はアクシデントに見舞われた。第2クォーターで速攻を展開中に富樫勇樹と接触、そのまま倒れ込んで担架で運び出された。診断の結果は全治8~10週間で右大腿骨内顆骨(大腿骨下端の内側部分)挫傷と右脛骨近位骨(二本の下腿骨のうち親指側にあって下腿の実質上の主幹と向こうずねを成す太い骨の膝に近い部分)挫傷と右膝内側側副靱帯損傷だった。
要するに右膝に一定方向から大きな力が加わり骨端や関節を形成する靱帯を損傷(挫傷)したのである。富樫勇樹は接触プレーでいったいどんな動きをしたのか?あるいは動きをしなかったのか?
広島ドラゴンフライズより下位の「ワイルドカード下位」でCSに参戦した千葉ジェッツは13日、CS準々決勝で宇都宮ブレックス(東地区1位、CS出場順位も1位)との第3戦に挑み、103―93のスコアで勝って18日からの準決勝に進んだ。
”延長の延長”という死闘に決着をつけたのが主将の富樫勇樹だった。
2度目の延長開始早々に富樫勇樹の3ポイントシュートで先手を取り、残り1分14秒でも富樫勇樹が2本目の3ポイントを沈めて9点差となったところで勝負あり、となった。
この戦いを寺嶋良はどんな思いで見ていたか?あるいは、まったく見ないでいるのか?
レギュラーシーズン40試合で大ケガをして、残り20試合に出場できなかったばかりか、CSの最中に手術なんて、あまりも酷ではないか?
それでもレギュラーシーズン大詰めの、チームメイトの驚異的な粘りと、2年連続のCS切符ゲットの喜びと、朝山正悟引退セレモニーでみんなと同じ空間に居続けた寺嶋良は、三遠ネオフェニックスとの大一番を前にしても、やはりコートからチーム練習を見守っていた。
だが、チームが”勝てば決勝進出”という歴史的な準決勝に向けて総仕上げとなったこの日、とうとうその姿が消えた。
チャンピオンシップ開幕を控えて、寺嶋良のことも含めてチームについて話し合うカイル・ミリングヘッドコーチ(左)と岡崎修司ゼネラルマネージャー
名古屋ダイヤモンドドルフィンズは2日後から始まる準決勝でもベンチ入り14人でそのうち10人がこれまで通りコートに立つだろう。一方、広島ドラゴンフライズは三遠ネオフェニックスとのGAME1、GAME2をベンチ入り12人、出場9人で戦ってきた。
ただ、今週末の広島ドラゴンフライズのベンチには“みんなと共に戦う10人目”がいることを、名古屋ダイヤモンドドルフィンズベンチは意識して戦った方が良いかもしれない。
仲間たちの戦いにすら帯同できないであろう寺嶋良の悔しさ、寂しさ、辛さ、もしかしたら絶望感を、広島ドラゴンフライズの面々が強烈に意識してコートに立った時に、どうなるか?
誰だって、寺嶋良に優勝トロフィーを届けて(“常勝ドラゴンフライズ”を一緒に築き上げていこう!“と言いたいに決まっているのだから…(ひろスポ!広島スポーツ100年取材班&田辺一球)
※この項つづく