画像は大逆転負けのあと、グラウンドに頭を下げる栗林良吏
ネット上に栗林良吏に対する罵詈雑言が溢れている。が、そんな行為に対して諫める声を挙げるファンもたくさん存在する。
こうした事態に危機感を抱く関係者は多い。新井貴浩監督も間違いなくそのひとりだろう。
守護神・栗林良吏は、しかし神ではない。開幕前、コンディション不良で様々な治療などを通して何とかグラウンドに戻ってきた。多くのファンはもう忘れているだろう。野間峻祥と栗林良吏が開幕前、マツダスタジアムに姿を見せなかった日があったことを。
現場では表に出ない苦労や事情がたくさんある。ファンが知る由もないネタはいくらでもある。もちろんファンが知らないことを責めることはできない。特にこの<カープ村>においては言論統制がロシアのごとく厳しく、広島のメディアは必要な情報であっても球団に忖度して表に出さない。だからファンは被害者でもある。
だが、知らないから何でもSNSで言いたい放題、はあっていいはずもない。
みんな、もう忘れてしまったか?
新井さんが、なんで泣きながら一度は広島を出て行ったのか?あの時の「裏切者」大合唱がどれだけ新井さんを苦しめ、追い込んだか…
新井さんは「広島ひと筋」とは言っていない。当時のスポーツ紙記者(そのあと広島県外に転勤したのに、今は広島の別会社に転職してプロ野球以外の担当記者として勤務中、決してマツダスタジアムには近づけないだろう)がその手の記事を書いたがために、ファンは「広島ひと筋」と言ったのに出て行くんか!お前は!という流れになった。
事実を知らないみなさんに、あえてお知らせしておこう。新井さんは好きで出て行ったのではなく、「嫌ならお前が出ていけ」と球団から言われたのだということを…当時、新井さんはチームのことを思い球団に意見した。だがカープ球団はプーチンと一緒の構図だから、それは自殺行為になる危険性があった。新井さんはあの涙会見の日、玄関を出るまでまだ迷っていた。
だから新井さんは、丸佳浩にカープファンが集中砲火を浴びせた時も「俺はお前の味方だから」と丸佳浩に伝えた。今回の栗林良吏に対する、何でもありの罵声にも心をひどく痛めているだろう。
今回の3連戦、BSTBS中継の時、槙原寛己さんが「カープは大きな補強もなく、去年と同じような戦力で良くやっていますね」と話していた。まったくその通りで、裏を返せば首位を走っていたのは正にミラクルであり、ライバル勢が加速するにつれて、経験の浅さもあってカープナインには周りについていくだけの余力がもうほとんどなかった、という解釈も成り立つ。
そうであるならば、その責任は補強しない、あるいはろくな選手を獲得できない球団サイドにある、ということになる。ファンは怒りの矛先を間違えてはいけない。
SNSが人の命を奪うことはすでに広く知られるところとなった。
だから教育が必要になる。SNSにより万能者にでもなったかのような振舞いをすることがないように、広島県内の小・中・高に「カープ科」でも作ってカープとの正しい向き合い方を学習した方がいい。さんざん広島教育界をかき回した県教委は、そういう今の時代に必要なことから手をつけたい。
県外のファンは「カープ講座」を受講して簡単な検定(原付免許程度!?)をパスしないと、マツダスタジアムに入れないぐらいでちょうどいい?だろう。
ファンは選手を罵倒する前に、試しにこのクソ酷暑の中でどっかのマウンドに立ち50球でも100球でも投げてみるといい。35度越えの中では5球も投げたら息苦しくなる。カープナインは屋外環境、異常熱波という際めて不利な状況の中で、ドーム球場を本拠地とする巨人と今、1位・2位を争っている。
そして、今夜もし戸郷翔征を打てずに負ければリーグ優勝の可能性はなくなるだろう。
その時またファンが戦犯探しをしてネットに罵詈雑言をぶちまけるようなら、選手側からきちんと声を上げた方がいい。他球団とは違ってカープ球団はたぶんこの手の問題に対処しようとはしないから、だ。
とんでもないことは起こる前に、調子に乗って言いたい放題のファン?クレーマー?に警鐘を鳴らしておく。(広島スポーツ100年取材班&田辺一球)