画像は北中米W杯アジア最終予選オーストラリア戦を控えた埼玉スタジアム2002
ひろスポ!は10月11日に下記のヘッドラインで記事をアップした。
その続編…
日本被団協にノーベル平和賞。国内外を大きく揺さぶる発表から4日目となった10月14日、日本代表を率いる森保一監督が、北中米W杯アジア最終予選オーストラリア戦を翌日に控えた公式会見でこう語った。
「みなさんとコミュニケーションを取れる記者会見の場ができるのも、平和な世界があるからだと思います。戦争や紛争をやっている地域で、このように穏やかな時間は取れないと思いますので、シンプルに我々が好きなことをやれる、スポーツをやれることは平和があるからこそだということを我々自身が胸に刻み、見ている方々にも機会があれば、平和について考えていただくことに繋がれば嬉しいです」
さらにその胸の中にずっと大切に仕舞いこんである思いも吐露した。
「平和であったり、というところは戦争や紛争の大きな問題だけでなく、日常からやはり相手のことを尊重して意識して良い関係を作っていくこと、お互いを尊重するということが大切だと思いますし、スポーツの中で、サッカーの中では勝ち負けを競い合うことになりますが、ルールがあってその中でお互いをリスペクトしながら競い合うというところをいろいろな方々に見てもらい、スポーツから平和を発信することに繋がればなと思います」
ひろスポ!では長らく森保一監督の姿に“平和発信”の4文字を重ねてきた。大きなひとつの節目が訪れた。
アメリカのジョー・バイデン大統領も13日、被団協のノーベル平和賞の受賞決定に際して声をあげた。
「核兵器が二度と使用されないための歴史的な活動が評価された。アメリカを代表して心からお祝い申し上げる。(2023年5月の広島サミットで)被爆者の方とお会いした際に強く感じたように、私たちは世界から核兵器を最終的かつ永久に廃絶する日を目指し前に進まなければならない。アメリアは核の脅威を減らしていくために、前提条件なしにロシア・中国。北朝鮮と協議を行う用意がある」
一方でイスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使は祝福の言葉とともに、今回の受賞に際し被団協から「ガザ地区と80年前の日本とが重なる」旨の発言があったことに関して「ガザと80年前の日本との比較は不適切で根拠に欠ける。こうした比較は歴史を歪曲し、テロ犠牲者を貶めることになる」と立場の違いに言及した。
今回、ノーベル賞委員会が被爆地の声に「平和賞」を贈ることにしたのは「核戦争」がより現実味を帯びているという世界情勢や被爆者の声を直接聞き取ることができる時間はもう残り少なくなっている現状がある。
「いつの日か歴史の証人としての被爆者はいなくなる。しかしその記憶をとどめる組織的な取り組みによって、日本の新たな世代は被爆者たちの体験とメッセージを継承している」(ノーベル賞委員会)
その日本の前トップ、岸田文雄氏からバトンを引き継いだ石破茂首相はしかし問題となって久しい核兵器禁止条約(73の国と地域が批准も日本はスルー)へのオブザーバー参加についてでさえ「等閑視するつもりはなく真剣に考える」としながらも「日本の周りは核保有国だらけだ。片方でアメリカの抑止力に頼りながら片方では禁止します、ということをどう両立させるかだ」と現実的な高い壁の前で立ち竦んでいる。
アメリカのバラク・オバマ元大統領も、被団協に祝意を示し、「核兵器のない世界を追求することが、安全で安心できる世界を子どもたちに残すために不可欠であることを気づかせてくれる」とコメントした。オバマ元大統領は在任中の2009年にノーベル平和賞を受賞。また2016年にはアメリカの現職大統領として初めて広島を訪れ、原爆慰霊碑や原爆ドームをその目に焼き付けた。
ただ、核兵器使用を幾度となく口にして、実際に行動(その演習や関連兵器移動等々)も起こしているロシアのウラジーミル・プーチン大統領や、核弾頭数を着々と増やしつつある中国の習近平国家主席、それにミサイル発射実験を頻繁に繰り返す北朝鮮からは何の反応も聞こえてこない。
特にロシア。2018年にW杯を開催したばかりなのに「平和」とは無縁の暴挙に出ている。「ベルギー戦の14秒」または「ロストフの14秒」として記憶される、あの日のSAMURAI BLUEのラストシーン。その「ロストフ・ナ・ドヌ」に「ワグネルの反乱」で2023年6月に進軍したエフゲニー・プリコジン氏はその2か月後、搭乗機撃墜により帰らぬ人となった。平和とは真反対の思考回路を有する独裁者に「スポーツから平和を発信」と言ったところで何の足しにもならない。それもまた相手の立場からすれば真実…
デーモン・プーチンが原爆慰霊碑や原爆ドームの前に立ち、エディオンピースウイング広島のピッチから広島の空を見上げる日など、来るはずもないのだから…(ひろスポ!広島スポーツ100年取材班&田辺一球)