セ・リーグ首位を行く広島に急ブレーキがかかった。福岡でのソフトバンク戦連敗に続き神戸でもオリックスに連敗。12球団唯一の4戦全敗で交流戦最下位と“ふたつの顔”を持つことになった。
福岡ではソフトバンク打線のパワーと機動力に振り回され、神戸での初戦は前田健太対金子千尋のエース対決で後塵を拝した。
迎えた神戸での第2戦は、5連勝中の大瀬良を立てながらベンチワークでも完敗を喫した。
オリックスは今季初先発の八木をマウンドに送り込んできたが二回、1対1の同点に追いつかれると迷わず二番手のマエストリにスイッチした。二死二、三塁、一打勝ち越しの場面で今季、初めて一番に入った菊池はマエストリの前に空振り三振に終わった。
試合後、オリックス・森脇監督は決して口には出さなかったが、実は最初から“そういう筋書”ができていたのではないか?
広島打線が右投手に弱いことを察知した上で、あえて八木をもってきて広島ベンチが対左腕用の打線を組んだあとで、マエストリを投入…。マエストリは2012年に先発8試合をこなしており、長いイニングを投げる能力を十分に備えている。
そもそもローテーション通りなら右のディクソンの登板が有力視されていたのだから、そこには何等かの意図が見え隠れする。
広島ベンチもそのあたりのことを警戒してか七番には「左対左」でもそのまま木村をスタメンに起用。一方で交流戦に入って打線が低調なことから急きょ、ロサリオを一軍に呼び寄せて三番ロサリオ、四番エルドレッド、五番キラの重量クリーンアップを組んだ。機動力より長打力を優先する形になった。
広島が外国人長距離砲3人を併用するのは球団史上初のケースになった。対照的にオリックスは守備に不安のあるペーニャに加えて前日の試合で顎を負傷したヘルマンもスタメンから外し、国産打線で大瀬良攻略を試みた。
両者のこの試合に対するアプローチの差は、大事な局面でモロに勝敗の行方を左右した。
初回、大瀬良はその立ちあがりで1点を失ったがきっかけは四球出塁の糸井が次打者・T・岡田の初球に二盗を試みたことだった。
焦った石原の送球が糸井に当たって労せずして三進。T・岡田のしぶとい中前打でオリックスが2日続きで先制した。
オリックスの3対1で迎えた四回には外国人選手3人を配した広島の守備が破たんした。ライト前のゴロヒットをロサリオがお手玉してさらに尻餅でタイムリーエラー。ランナー二人を置いて、今度はファーストのキラが菊池の送球を逸らして緩慢な足取りで球を拾いに行っている間に2失点。意気消沈の大瀬良は続くT・岡田にツーランを許し、この回5失点で降板するしかなかった。
ミスミス失点を重ねる広島は何とか打撃戦に持ち込もうとしたが三回の無死一塁ではロサリオがショートゴロ併殺打。四、五回もうまくかわされて六回、二死から小窪がやっとの思いでマエストリから初ヒットを放ったかと思ったら、すぐにオリックスベンチが動いて3人目の中山との交代が告げられた。
二回の攻撃では無死一塁から七番。安達がバスターで三遊間を抜くヒットを放つなどこの日のオリックスの攻撃はパ・リーグ首位の名にふさわしい冴えを見せていた。
ダイエー・ソフトバンクでもコーチとしての経験を積んできた森脇監督は広島が3度目の日本一になった1984年から4年間、赤ヘル軍団の一員として機動力野球、投手王国広島の野球を肌で学ぶ機会にも恵まれている。
対する野村監督も1991年、広島が“最後のリーグ優勝”を遂げた時の立役者だ。
ちなみに現役時代の数字を見ると森脇監督の通算244安打、17盗塁に対して野村監督は2020安打、250盗塁。
それでもこの日に限っては“より赤ヘル野球”に近い形の展開に持ち込んだ森脇監督の“圧勝”だった。