画像は広島商-海田から、広島商は四回、小田健登(2年)の左前適時打で海田のエース・松本遼太がこの回6点目
第106回全国高校野球選手権記念広島大会第11日(7月22日)
熱中症警戒アラートが今年最多の39都府県41地域に発表される中、電光石火きんさいスタジアム三次とぶんちゃんしまなみ球場で準々決勝4試合があり、第1シードの尾道と広陵、ノーシードの呉港と広島商が準決勝に進んだ。23日と24日は試合がなく、25日にぶんちゃんしまなみ球場で広島商-尾道(午前10時)、呉港-広陵(午後0時30分)が行われる予定。
24日午後2時ごろの時点で「特別警戒アラート」が発表された場合には、県高野連は当日の朝、最終判断を下すが2試合とも中止される可能性がある。
<電光石火きんさいスタジアム三次>
尾 道 000 202 000・4
広島国際学院 000 000 001・1
尾道は四回、エースで四番の田原永遠(3年)の2点適時打で先制して試合の主導権を握った。田原永遠は投げても先発と球界二死からの”火消し”で計8回1/3、120球6安打12三振の無失点で中2日のインターバルへ。試合の流れを知り尽くしている片岡新之介監督一方、広島国際学院の3年生エース村上大地も9回148球を投げ切って被安打5と数字の上では負けていなかった。ただ味方打線が9安打を放つも九回に1点を返すのが精一杯だった。
崇徳 002 000 100・3
呉港 013 100 00X ・5
4回戦で尾道商に接戦の末、勝利した呉港は、準々決勝でも勝負強さを発揮した。九回、一死一二塁のピンチも2年生エースの小野寺澄司を投入、逃げ切りに成功してシード校を押し切ったかっこう。先発した中村元音(2年)は8回121球9安打で3失点。試合の流れを知り尽くした片岡新之介監督(77)の采配が光る。
片岡新之介監督は倉敷工から芝浦工大へ進み、クラレ岡山を経て1969年度ドラフト5位で西鉄(現在の西武)に入団。その後、阪神、阪急でプレーして現役16年間で通算成績1439打数344安打139打点36本塁打。引退後はプロ野球の広島でコーチを務め、退団後は社会人のJR九州でコーチ。さらに社会人野球のMSH医療専門学校で監督を務めた。呉港の監督就任は2019年12月。
崇徳の2年生エース脇本晃寿は、12安打されながらも116球完投した前日の広島新庄戦に続いて猛暑の中、8回121球を投げ切った。崇徳は4年連続でベスト4の壁にはね返された。安打数はともに9だった。
<ぶんちゃんしまなみ球場>
広 陵 007 006・13
総合技術 000 002・2
(六回コールド)
2試合連続のサヨナラ勝ち、の勢いで広陵に挑んだ総合技術は六回、エース高尾響(3年)を温存する広陵継投策の前に2点を返して意地を見せたが及ばなかった。
今大会1、2戦目で自慢の集中打が見られなかった広陵打線はこのタイミングでビッグイニング2度と地力を発揮し始めた。特に注目されるのがクリーンアップに続く六番を打つ世古口啓志(2年)。その名前は大会パンフレットや中国新聞が7月4日付で紹介した全校メンバー表の中にはない。が、4試合で13打数6安打、三塁打2本、二塁打1本で打点はこの日4、前日の市立呉戦が3。最後の最後でベンチ入りした背番号20が今後も台風の目になりそうだ。
広島商 001 610 2・10
海 田 001 000 0・1
(七回コールド)
序盤3回は互いに譲らぬ展開になった。海田の先発は1年生左腕の澤秀太。2回戦の庄原格致戦で4回49球、3回戦の庄原実業戦で1/3・9球、4回戦の竹原戦で4回2/3・72球を投げこの日も先発を任された。
初回の二死一塁、二回の二死満塁を乗り越えた澤秀太はしかし三回、二死一塁で広島商の五番・真田樹希(3年)にセンターオーバーの大三塁打を打たれて先制された。すると海田ベンチはすかさずエースの松本遼太(3年)にスイッチ。広島商の六番・山崎玄太(3年)から空振り三振を奪って試合の流れを引き戻した。
その裏、広島商エースの西川雄也(3年)の前に完璧に抑えられていた海田は先頭の七番・内谷治起主将(3年)が四球で出塁。送りバントと相手のバッテリーミスで内谷治起が三塁に進み、一番・吉田淳之助(3年)の真っすぐのあとの変化球を仕留めたタイムリーで追いついた。
だが、海田の放った安打はこれが最初で最後になった…
四回、広島商は打者11人の猛攻で一挙6点。海田バッテリーとすれば七番から始まる相手打線の先頭に四球を与えたことが悔やまれる。
海田のエース松本遼太
今大会注目の快速球右腕、松本遼太は、前日の竹原戦でも五回途中から救援マウンドへ。5イニング目となった九回に竹原打線につかまり失点した。連投による疲労は明らかで、本来の球威や球のキレを欠く中、力みが出て与四死球と被安打の繰り返しになり失点が膨らんだ。
五回にも1点、七回にも2点を追加されて、結果的にはコールド負け。春の広島大会決勝で広陵に敗れたぶんちゃんしまなみ球場で、さらなる高みを目指した夏が終わった。海田の掲げる目標は文武両道、そして甲子園出場。後輩の背中を見ながら貴重な経験を積んだ澤秀太ら後輩たちが、その夢を引き継ぐ。
試合後の海田の選手たち
海田・平崎直樹監督(右から二人目)
海田・平崎直樹監督の話
-試合を終えて…
うーん…やっぱり6点取られた時に、松本があんなになるっていうところで子どもたちの気持ちが一気に引いちゃったというか、下がったというか…圧倒されてしまった。なので、そのあとの攻撃も、ちょっとさっぱりだったかなと…。
なかなかタイミングを取りづらいピッチャーだなとはすごく思っていて、そこで三回ぐらいに指示を出して、吉田が2打席目でああやっていいヒットを打ってくれて追いついて雰囲気的には上がったところだったんだけど…
-松本投手の登板のタイミングは?
基本的には大きなケガをする前に、と思ってたんでその前のイニングで満塁になって、左のいいバッター(広島商一番の3年生・武部順正)だったんだけど、ここはまだ澤の方がいいんじゃないかと。もし打たれたら松本と。1年生にあまり重いものは背負わせられませんから。うちにとっては……(声を詰まらせて)松本は大エースですから。
もう、最後は代えるつもりはなかったです。後輩が追加点を取られるわけにもいかないし…。ほんとにチームにとっての大黒柱で、ほんとに踏ん張って投げてくれたかなと思いますね。それだけは思います。(声を詰まらせて)だから最後は3年生で戦おうと。よくがんかりました。称えてやってください。
-きのうの竹原戦、九回には松本君もちょっと球威が落ちたかなと?
そうですね、やっぱりね疲労がけっこう取れてないですね。暑さでなかなか力が発揮できなかったかなという、いいボールももちろんあるんですがトータルで見たり、9イニングを考えたら難しいなと、それを1年生の澤がどの試合もよく投げて…(また声を詰まらせる)
-春は広陵、夏は広商、壁と言ったら失礼なのですが…この辺の壁を来夏ぶち破りたい…
まあ、チーム作りでは広商、新庄、広陵、尾道。この4つに勝たないと(甲子園に)行けないというのをね、言ってきているけど、広陵(春の広島大会決勝2-8)、尾道(春の中国大会準決勝0-7)、広商…、で去年の夏が新庄(広島大会2回戦0-8)、春が広陵(2023年5月の広島大会1回戦5-10)、まあちょっとまだ力が及ばないかな…
(ひろスポ!広島スポーツ100年取材班&田辺一球)