8回を投げ7安打1失点でスコアボードは5対1。お役御免となった広島のエース、前田健太のところに野村監督が歩みより何事か意見交換を始めた。
試合後、野村監督がその内容を明らかにした。「六番から九番の左バッターに対して球数を要したことについて確認した」という。
この日の前田の球数は132球でそのうち半分以上のおよそ70球を根元、鈴木、金澤、加藤(スイッチヒッター)の4人に投じることになった。
昨日もこの下位打線に抑えのひとり永川がソロホームランを浴びるなど痛い目に遭わされたばかり。井口、サブロー、今江のクリーンアップを少ない球数でテンポよく打ち取る前田もまた鈴木、金澤、加藤の3連打で唯一の失点を許し、九回を任された一岡も金澤と加藤に開幕以来初のタイムリーヒットを許した。
ただし前田は自身に課していた”絶対にやってはいけない”失敗だけはしっかりと回避した。
この試合の前まで開幕から9試合に投げ被本塁打5本は自己ワーストペースでしかも4本は左バッターに打たれたもの。
同じ轍を踏むことはエースとしては許されない。ゆえにこの六番以降の4人に許したヒット5本は全部シングルだった。
そして1点を失いなおも一死一、二塁の場面でロッテ伊東監督が打ってきた「代打ブラゼル」の勝負手も、決め球のチェンジアップで空振り三振に仕留めた。前夜、代打起用に応え永川から逆転スリーランを放ったそのバットを黙らせた時点でこの試合最大のヤマ場は越えていた。
マツダスタジアムのネット裏にはブラウン監督時代に広島で通訳を務めていたジョー古河氏の姿もあった。今はテキサス・レンジャーズのスカウトとして「日本通」の情報網を駆使して活躍している。
そしてレンジャーズと言えば、ダルビッシュ。チームの日本重視の方針の中にあって「マエケン」の存在は当然、大きなパーセンテージを占める。
この日の前田のストレートはいつも以上に勢いがあり、150キロ台を何度も掲示させていた。古河氏の手に持つスピードガンの数字も全部、記録に残された。
そしてお立ち台のヒーローはスタンドに向けてこう言った。
「自分の状態はすごく上がってきています。これからも上げられるように頑張っていきたいです」