昨年7月に開催された3者会談では「宇品」でいく流れが固まりつつある中、湯崎知事は厳しい表情を見せた。
松井市長、湯崎知事、深山会頭の3者で進める広島の新サッカースタジアム「建設場所決め」は、3月に発表予定の「久保プラン」封じを狙ってか、それよりも早く「決定」される可能性もある。
「対抗馬」が出てきても堂々と渡り合えばいいようなものだが、そうはいかない。その最たる理由がコンパクトにまとめてある日刊廣島1月27日号の記事を、転載の許可をいただき、そのまま紹介する。
ひろスポ!でもすでに報告した通り広島県内外在住の、この問題に関心のあるみなさんの「ジャッジ」は「宇品0票」、「旧広島市民球場跡地18票」でまさに暴挙!!
広島新サッカースタジアム取材班
日刊廣島1月27日号
「港湾物流経路への集客施設建設は世界に類を見ない暴挙」
新サッカースタジアム建設で港湾物流業界
サッカースタジアム建設地として、旧市民球場跡地と共に候補地となっている広島みなと公園(南区)。県・市、経済界、サッカー協会で設置した有識者による「サッカースタジアム建設検討協議会」が一昨年十一月に二候補地に絞り、以後は県・市、経済界による作業部会が年度末の最終決定を目指している。松井市長が二候補地のうち広島みなと公園の優位性に言及し、知事と商議所会頭も異議を唱えてはいないところから、事実上は広島みなと公園が第一候補とみられている。
ところが二候補地が公表されて以後、広島みなと公園へのスタジアム建設に「断固反対」を唱えているのが港湾物流業界だ。県・市及び両議会、広島商工会議所宛に反対の陳情も提出している。
広島みなと公園へのスタジアム建設による交通への影響については「深刻でどうにもならない」と危惧する見解あり、一方で「わずか年間二十試合ほどのホームゲーム数であり、対応は可能だ」と楽観する見解あり。港湾物流業界はどう分析し、懸念しているのか、ひろしまみなと振興会・企画総務部の戸田拓夫会長(広島荷役代表取締役)に過日、話を伺った。
出島、搬送に危惧
戸田会長は「我々は決してスタジアムの建設自体に反対しているわけではない」と断った上で「行政や議員にはなかなか実状や真意をご理解いただけない」として、以下の通り想定される影響や反対理由、これまでの経緯等を述べた。
◇海田〜宇品〜出島は一連する港湾物流エリアである。海田と出島にコンテナターミナルがあるが、二つの橋をくぐる必要のある海田は将来、船舶の大型化により利用が困難になり、出島がメインとなる。
◇出島からの輸送経路は非常に限られており、現状ではみなと公園の西側の道路から広島南道路に出るしかない。
◇二万人、三万人の入退場と車の増加による混雑で、運送の遅滞が発生することは避けられない。納期は荷主との最優先の約束事であり遅滞が発生すれば港湾物流の信頼性が大きく失墜する。
◇出島での荷揚げを荷主、船主が次第に敬遠する事態になれば多大な損失が発生し、また将来的にも周辺経済への影響が危惧される。
◇サッカースタジアム建設検討協議会では、港湾物流の視点からの検討はまったく欠落していた。その後、港湾物流業界の討議への参加等を要請してきたが、受け容れられていない。
◇「宇品ありき」のようなこれまでの経緯には強い疑問と憤りを覚える。
交通インフラの追加整備は困難
戸田会長によれば「交通に支障を来さない十分な対策が為されれば反対するものではない」。とはいえ、出島からの運送経路は極めて限定され、地理的にも迂回路や橋を整備するのは極めて困難だ。唯一、可能性のあるのは出島から高速三号に繋ぐ高架の道路を新設することだが、概算で百六十億かかるという。