松井市長に要望書を手渡す広島市文化協会の山本会長
広島市文化協会の山本一隆会長が2月26日、広島市役所に松井市長を訪ね、「旧広島市民球場跡地利用に関する要望書」を手渡した。
要望書には「球場跡地を、街の賑わいづくりや活性化に寄与するイベントができる広場など、市民文化の創造発信の場として早急に整備されることを要望します」と記されている。
だが…。
かつて、旧広島市民球場跡地に「文化の創造発信の場」を作る案について注目すべきやりとりがあった。以下、その点について振り返ってみる。
「宇品か旧広島市民球場跡地か」の”不毛な論戦”の原因を作ったのがサッカースタジアム検討協議会であることはひろスポ!で何度も伝えてきた。
同協議会は2013年5月から2014年11月までの期間を擁しながら、建設主体、運営方法、建設場所という最重要課題をすべて見送る方向で論議を打ち切り、現在の混乱を招いた。
難しい舵取りを迫られたとはいえ同協議会の三浦浩之会長、山根恒弘副会長の責任は重いと言えるだろう。
ところが同協議会が立ち上げとなる以前にも、似たような玉虫色の結論に至った広島市が肝入りで始めた話し合いの場があった。
2011年10月から2013年1月にかけて”延々と”本会議だけでも7回開催された旧広島市民球場跡地委員会だ。松井市長が初当選したのが2011年4月。新体制の下、秋葉前市長時代の「球場を壊しただけで終わった負の遺産」(関係者)を「若者の賑わい場として」(松井市長)整備するための方向性を探るため幅広い分野の人たちで構成された。
しかし、人選に手を広げ過ぎたこともあり、出てきた意見は様々。それを長い時間をかけながらなんとかまとめていったものが広島市のHPに残されている。
旧市民球場跡地の活用方策
www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/1394687136096/index.html
この資料を見ていくと、最後に「球場跡地はハード先行型からソフト先行型都市開発へ、市民の智恵と創造力を結集し、ひろしま文化創造発信ゾーン、づくり」という広島市文化協会・山本一隆会長の「提言書」がここでも添付されている。
そこには、旧広島市民球場跡地に整備すべき舞台装置、仕掛けとして次のようなものが記されている。
・球場跡地のシンボル的展示芸術作品として、岡本太郎の「明日の神話」の誘致運動の際に市民の浄財で制作された実物大レプリカをエリア内の適地に恒久設置する。
「明日の神話」実物大レプリカ:縦5.5m、横幅30m
・音楽、演劇、舞踊、伝統芸能などの文化発信ができる「野外ステージ」と電源、音響、照明、楽器庫、楽屋、上下水道、トイレなどの付帯設備を整備する。
・日常的な行事から国際的な大会まで、多目的に使用できるイベント広場を整備する。
今回の松井市長との話し合いの中でも上下水道整備や照明関係の施設整備を急ぐべき、との確認がなされた。しかし、これらの整備だけで、あの貴重な空間を最大限活用できると市民が納得するだろうか?
旧広島市民球場跡地委員会の話し合いの中で、先の広島市HPにある「球場跡地活用イメージ: 4案6パターン」が検討される中で、ある委員が「文化芸術機能」を主たる機能とする案に対して「その案は隣りにある広島グリーンアリーナとどう違うのか」と質問した。しかし、「文化芸術」を熱心に推す委員はひと言も答えることができなかった。
今回、提出された要望書の中にも「イベント広場」ということ以外に何を造りたいかは書いてない。「イベント広場」なら広島グリーンアリーナの北側にすでに中央公園がある。
もっと言えばサンフレッチェ広島が3月3日に提案するHiroshima Peace Memorial Stadiumは「イベント開催機能」を十分に備えている可能性が非常に高い。
「文化芸術」と「スポーツ」は重なる部分が非常に多い。「音楽、演劇、舞踊、伝統芸能などの文化発信ができる「野外ステージ」と電源、音響、照明、楽器庫、楽屋、上下水道、トイレ」とあるが、その多くは「複合型」「多目的スタジアム」で十分に対応できる、というオチになれば今回の「要望」はほぼ満足のいく結果を見ることになる。
広島新サッカースタジアム取材班