５月１３日、サンフレッチェ広島の久保会長が旧広島市民球場跡地スタジアム建設概要発表、注目される広島市・県・広島商工会議所の反応は？

2016年05月10日: 編集部

２００８年９月２８日をもってカープの本拠地としての役目を終えた旧広島市民球場（すでに解体）を見守る原爆ドーム。誰がどう考えても、カープがいなくなったのなら、次はサンフレッチェ広島…というのがスポーツ王国広島の存在意義からして当然のはずだが…

大型連休中、一時休止していた広島のサッカースタジアム問題がまた動き出す。広島市の松井市長は連休中に、ジュネーブの国連欧州本部を訪れ、核軍縮の進展を目指す作業部会に出席した。「作業部会」と聞くと無用の反応が起こるようになった…。悲しいこと、だ。

サンフレッチェ広島の久保允誉会長は５月１３日、旧広島市民球場跡地を見下ろす広島市中区のエディオン広島本店で、「将来的にサッカーＪ１サンフレッチェ広島のホームグラウンドとしても活用させていただくことを前提に」（サンフレッチェ広島）した旧広島市民球場跡地でのサッカースタジアムHiroshima Peace Memorial Stadium（仮）建設案を発表する。

サンフレッチェ広島では「広島の皆様の利益に叶う、さらには広島が世界に誇れるスタジアムが建設される候補地としては、広島市の発展の中心軸であり続けた旧・広島市民球場跡地こそがふさわしい」との立場を少なくとも２０１３年以降、明確にしてきた。

その流れを受け３月３日には久保会長が自ら会見。多くのマスコミの前で、広島市・広島県・広島商工会議所が「優位」と位置付ける広島みなと公園へのスタジアム建設が実現してもサンフレッチェ広島はそのスタジアムを使わない、経営的に見て使えないと明言し、旧広島市民球場跡地への独自建設プランをその場で披露した。

これに対して県・市・商議所の３者会談の実動組織である「作業部会」から、久保プランについての「主にスタジアムの具体的な仕様や多目的利用に関する、確認事項１」（サンフレッチェ広島）が文書で届いたという。

サンフレッチェ広島では「その公益性に鑑みて、現在、弊社代表取締役会長・久保允誉から湯崎広島県知事・松井広島市長・深山広島商工会議所会頭に直接ご説明申し上げる機会を設定いただくように重ねて要請申し上げておりますが、同時に、今月中に記者会見を行って市民/県民/全国のサポーターの皆様に広くご理解いただくことを計画」し、４月中の会見を予定していたが、熊本地震の影響配慮して５月１３日に発表を延期した。

今回の会見も当然、広島の各メディアがこぞって集まるのは間違いない。また、すでに全国誌や全国誌電子版などでも広島のスタジアム問題が報道されていることから、場合によっては県外メディアの取材が増えるケースも考えられる。

ここで気になるのが作業部会とその上に立つ松井市長、湯崎知事、深山会頭の反応だ。この会見を”なかったもの”として、広島みなと公園でのスタジアム建設に向け、水面下で粛々と「作業」を進めるのではないか？

サンフレッチェ広島のホームページにアップしてある久保会長のインタビュー動画、「作業部会（県・市・商工会議所）資料の問題点」（４月２２日アップ）の中で久保会長が指摘する作業部会の「問題」に対する、作業部会サイドの”言い分”からも、その可能性が高いことが見てとれる。

サンフレッチェ広島ホームページ、久保允誉会長動画
www.sanfrecce.co.jp/peace_stadium/

ひろスポ!４月２５日アップ
サンフレッチェ久保会長、広島市などが示したサッカースタジアム詳細資料を「民間企業であればイチからやり直し」と一蹴！それもそのはず、まるで数字遊び…？
hirospo.com/pickup/28991.html
以下は当サッカースタジアム取材と、作業部会を構成する広島市スポーツ振興課担当者の電話でのやりとり。

取材班　久保会長のＨＰでの問題点指摘は知っていますか？

担当者　…。

取材班　会長は作業部会の示した数字が広島みなと公園での整備費用のアップ率と同じように旧広島市民球場跡地での整備費用もアップしており「これもなかなかおかしな数字だと思います」と言っています。どうでしょうか？

担当者　我々の示したデータのうち、最初の数字はサッカースタジアム検討協議会が出したもの。ですから基本設計の前段階です。整備費が増えたというあとの数字は、他都市のスタジアムが何㎡でいくらかなど詳細に検討して、平均的な数字を出しながらこれぐらいで…と我々が細かく条件を積み上げたものです。

取材班　久保会長は「５月１３日に独自案の詳細説明は、２万５０００人から２万７２００人までの規模の専用スタジアムで原爆ドームが見える形の設計。掘り込みもしないでいける」とＨＰの動画で話しています。

担当者　勘違いされているのでは？我々はサッカースタジアム検討協議会（の結論に）沿って、候補地はどこがいい、などその条件で検討協議会の流れに沿ってやってきました。そのひとつが３万人のスタジアムということですから、２５０００じゃないと言われても主旨が違います。検討協議会で話し合われたものが可能かどうか？を我々はお示ししています。

取材班　久保案と作業部会の考えはこのままでは平行線のまま、なのでは？

担当者　我々はサンフレッチェ広島を応援する立場です。敵対しているかのように（久保会長に）言われても…。

取材班　久保会長は市長、知事、会頭の３者との４者会談を望んでいますが、やらないのですか？

担当者　その点も含めてサンフレッチェ広島さんと連絡を取り合っています。また、サンフレッチェ広島さんには、５月の会見で発表する内容も伝えて欲しい、とお願いしていますが今のところは、それはいただいていません。

取材班　メールでのやりとりですか？

担当者　封書です

取材班　…！

以上の発言からわかることは市の担当者が「想定問答集」を用意して、”よくある質問”に対して明確にその立場で返答していることが第１点。よって経験の浅い記者などは軽くあしらわれてしまうだろう。

繰り返しになるが我々、取材班の目は節穴ではない。

第２点は久保会長が指摘しているのは広島みなと公園に建設するスタジアムのコストがより精密な数字の積み重ねでアップしたとした場合、どうして旧広島市民球場跡地へ建設する場合もコスト増加率が跳ね上がるのか？という点についてまったく答えていないことが問題である。

第３点は「サッカースタジアム検討協議会」の存在をことあるごとに持ち出してくる、という部分。その「サッカースタジアム検討協議会」のメンバーだった複数の委員がはっきりと「議事録は認めない、ゆえに署名しなかった」と断言しているにもかかわらず、である。

この「サッカースタジアム検討協議会」議事録については、あまりにも多くの問題点があり、今回はその詳細は割愛するが、端的に言えば「スタジアム建設候補地は広島みなと公園ありき」（多くの関係者の証言）だった、ということにつきる。

そして３者会談に提出された「最終とりまとめ」の中に、ダミーの形で建設候補地のひとつとして旧広島市民球場跡地を残し、サッカースタジアム検討協議会解散（それとも休止？それすらはっきりしない）後、ほどなく「広島みなと公園が優位」という形にもっていったに過ぎない。

よって「サッカースタジアム検討協議会」を前提に話を進める作業部会と松井市長、湯崎知事らは、５月１３日の久保会長の記者発表にも関知せず…、という態度を貫く公算が極めて高い。

やりとりの中で市の担当者の発言の中に「それはいただいていません」とサンフレッチェ広島側が情報を出ししぶり、「敵対…」しているともとれる部分があるがそうではないだろう。

広島みなと公園へのスタジアム建設に反対し続けている港湾関係者は「こちらが”そうじゃない”と自分たちの意見を主張すると、それをうまく取りこみ次の話し合いではいかにも自分たちのプランですよ、という形で提示してくる」とあきれ顔で証言している。サンフレッチェ広島、並びに久保会長は、あくまで自分たちが”みんなのために”考えたプランをはっきりとした形で、市民、県民、全国のサポーター、そして松井市長、湯崎知事、深山会頭と広島の政財界に示したいに違いない。

問題はそのあと、だ。

普通に考えれば３者会談は、この会見を受け久保会長との４者会談に臨むべきだ。それをしないともう一歩も前には進まない。

だが、もうひとつの”火の手”が上がって久しい港湾関係者と３者会談の間の話し合いでも、早くから広島港を管轄する県のトップである湯崎知事との直接の話し合いを求める声があるが、こちらも湯崎知事は逃げの一手となっている。

このままでは宇品も紙屋町・基町も先の見えない消耗戦へと突入することになる。サンフレッチェ広島イレブンも、森保監督も、サポーターも、市民・県民もそして我々も、残念ながら永遠の生命と時間を与えられているわけではないのだが…。

広島新サッカースタジアム取材班

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