また、何ひとつ「決定事項」を残せないまま、広島の旧広島市民球場跡地問題とサッカースタジアム問題が年の瀬を迎える。
12月25日、クリスマスだがプレゼントはなし…
毎年のことで、この時期、ひろスポ!でも同じようなことを綴ってきた。
市民・県民の関心も薄れ、メディアの扱いもまばらで、ピントも外れ、そのため話の芯の部分が見えなくなっている。
いや、見えなくしている。行政などの手によって、だ。
この日、広島商工会議所の深山英樹会頭は会見の席で「(スタジアム建設)場所の絞り込みは最低でも(年内に)やりたいと進めてきた」とコメントした。
が、さにあらず。「第3の候補地、中央公園」を言いだしたのは表向きは深山会頭だ。責任がある。
一応、確認のため記しておく。
旧広島市民球場跡地問題とサッカースタジアム問題は、いくら行政側や一部のステークスホルダーが潰しにかかろうとも、やはりリンクしている。
ところで「跡地」の活用策失敗例は全国に散らばる。
それは自分たちの住む街の「誇り」を失うことにさえ繋がる。逆に「跡地」が以前より価値のある空間に生まれ変われば、そこに住みたい、そこに戻りたいという人々が増える。
トップ画像は2017年2月に撮影した。空爆を受けたどこかの都市のようにさえ見える。だが、日本の風景だ。
画像後方の超高層ホテルはシェラトン・グランデ・オーシャンリゾート。高さはリーガロイヤルホテル広島とほぼ一緒。
その手前はオーシャンドーム「跡地」だ。今はもう跡形もない。
1987年制定のリゾート法(総合保養地域整備法)。主要中央省庁が競って補助制度を設立した時代の話だ。金融緩和政策による「バブル経済」の影響もあって、全国各地の 自治体はリゾート法制定に奔走…。その第一号がシーガイアだ。
国有林の指定を解除し、巨大な施設を建設したあげくに経営に 行き詰まった。2000億円を投資して、残されたのは巨額の借金と自然破壊。
420億円をかけ1993年に開業した「大型屋内プール」オーシャンドームは、2007年には閉鎖された。客が来ないから維持できなかった。
420億円あれば広島の街中に欧州の一流クラブ顔負けのスタジアムができる。
2014年8月、シーガイアを運営するフェニックスリゾートはオーシャンドームの解体を発表。
2015年8月、宮崎県、宮崎市、フェニックスリゾートはオーシャンドームの跡地に「屋外型ナショナルトレーニングセンター(NTC)」の誘致を目指すと発表した。
屋外型NTCは五輪選手などの強化を目的に国が調査研究を進めている施設。誘致が実現すれば「スポーツランドみやざき」としてのブランド力が向上するなど、効果が期待できると判断、市は8月末、文部科学省へ共同で誘致に関する提案・要望書を提出した。
このころは、「跡地の利用策を決定後に解体に着手する」ということになっていた。
2016年8月4日、解体工事開始。
そして2017年12月25日(きょう)、宮崎市役所内にある観光戦略課なる部署に聞いてみた。跡地活用策は決まっていますか?と。
答えは「決まっていません」だった。
屋外型ナショナルトレーニングセンター(NTC)は、宮崎市にある必然性がない。宮崎市側から言うならその必然性を創出できない。
かくして全長300メートル、幅100メートル、高さ38メートルの世界最大の屋内遊泳施設、オーシャンドームは”オジャンドーム”になった。
”人任せ”にしていると、街の誇りが失われる。その典型例だ。
その責任は誰がどういう形でとったのか。
「観光戦略課」の名前からすれば市民にはその「戦略」が示されている、と理解したいところだが、電話口の様子では、どうもそれもなさそうだった。
広島県内にも跡地は山のように点在する。JR三原駅前の「跡地」はその立地からして見栄えが最もよくないダメなモデルケースと言える。だが、旧広島市民球場跡地も負けてはいない。
2017年12月24日、ひろスポ!取材班は、県北のとある街中でカメラを構えていた。このタイミングで「跡地関連」取材。かなり寂しい状況で、オマケに雨まで降ってきた…
クリスマスイブの午後6時、日曜のイブだからなのか、いつもそうなのか、電線の地中化や道路美装化、街路灯整備が施された通りは絵に描いたような風景を創り出し、しかしだれひとり歩いていない。(露光調整で画像は明るいがもっと暗くて寂しい感じ…)
きっと君はこない、ひとりきりの…とそう口ずさむには確かにピッタリのシチュエーションではあるのだが…
この項続く
広島新サッカースタジアム取材班