ご覧の通り、共同会見で湯崎知事(左端)と松井市長の間だけずいぶん離れている…
新型コロナウイルス感染拡大が止まらない最悪のタイミングで、広島の新サッカースタジアム(仮称・中央公園サッカースタジアム)に関わるトップ会談が3月30日、広島市中区であった。
トップ会談は4者会談とも呼ばれており、広島市と県、広島商工会議所、サンフレッチェ広島の4者のトップが基本計画を承認した。
前回、ひろスポ!では地元経済界からの寄付などの援助面において、非常に厳しい状況であることを報じた。スタジアム建設を延々先送りにしてきた広島市、県、広島商工会議所の3者のトップの責任も指摘しておいた。
もちろん松井一実市長、湯崎英彦知事、池田晃治会頭からこの日、そういった類の発言はいっさいなかったが…
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だから早く!と言ったのに…広島サッカースタジアム建設へ苦節17年、待っていたのは新型コロナ世界経済・地元企業大混乱下での「基本計画」決定(2020年3月30日掲載)
hirospo.com/pickup/64675.html
広島の危機管理能力の低さ、は今に始まったことではない。今回もまた新型コロナウイルス感染者に関する情報の公開に極めて消極的な行政側の姿勢に対して市民、県民らから強い批判の声が上がっている。
この先、感染が拡大した場合にもおそらく誰も責任は取らない。多くの生命や財産が失われた平成の広島を見てもそれは明らかだ。
2014年、広島市安佐南区と安佐北区を中心に甚大な被害をもたらした豪雨災害は”人災”と言われている。市の対応はお粗末で、当初、松井市長は「緊急メールによる通知」にさえ消極的な姿勢を示していた。
広島市が大きな過ちを犯したのに、2019年の西日本を中心とした豪雨災害では広島県も後手に回った。三原市の大洪水など、ダムの管理もまともにできなかったことも明らかになった。広島市に隣接する安芸郡府中町では雨が上がってしばらくして川が溢れ町は泥水に埋め尽くされた。
「市長と知事の不仲」が言われるようになって久しい。両者による「トップ会談」の開催もその数をめっきり減らしている。
今回の4者会談でも松井市長と湯崎知事は一度も目を遭わせなかった。重症だ。
最後の共同会見でもふたりの間だけ間が空いていた。末期症状と言ってもいい。
何枚撮影しても知事と市長の視線は遭わない…
こんなことで新スタジアムを核とした新しい広島の、世界に誇る舞台装置作りが順調に進むのか、はなはだ疑問ではある。
この4者会談、とてもおめでたいことを決定した割には、その4者の空間からほとんど熱が伝わってこなかった。
スタジアム問題で外部から様々な声を上げてきた関係者のひとりに広島県サッカー協会副会長の藤口光紀さん(広島経済大学教授)がいるが、その口癖である「パッション・ミッション・アクション」の「パッション」不足は明らかだ。
藤口さんはその言葉に沿って、サッカー不毛地帯だった浦和にレッズの”赤き血”を注入して、やがて4万人のスタジアムがたて続けに満員になる新たな風景を実現した。
前回、ひろスポ!では建設資金についてまず、紹介したが松井市長と湯崎知事のコメントは、ほとんど噛み合ってはいない。
さらに池田会頭の言葉からは、サッカースタジアム本体に対する思いがほとんど伝わってこなかった。
サッカースタジアム問題における4者の一角で、深山英樹前会頭が長らく重しの役目を果たしていた。深山前会頭はサンフレッチェ広島の試合を観戦するためエディオンスタジアム広島を再々訪れ、サッカースタジアムに関するシンポジウムなどでも一般席からその声に耳を傾けていた。
2019年11月にバトンは池田会頭に繋がれた。まだ間もない、ということもあるだろうが、今回の4者会談での池田会頭の発言の中ではJリーグ、広島スポーツ・広島サッカーといった類の語句は皆無であり、そのほとんどが立場上当然とはいえ、広島の街づくりに向けられていた。
目を遭わせない広島のツートップとサッカースタジアム本体への興味・関心の希薄な地元経済界トップ。この日の4者会談に対して、関係者の間からまさにそういう声が複数、上がっている。
広島の”スリートップ”のこうした姿勢を基本計画承認のタイミングで記しておくのは、2年後、3年後、そしてスタジアムオープンの時に、中央公園の風景がどうなっているか、を考えた上でのこと、である。
池田会頭の話
知事も申されましたように、都心に立地しまして広島ならではのサッカースタジアムを示すことができたと思っております。また様々な意見をお聞きしながら、基本計画の策定に取り組む中で街中スタジアム、これがまず広島の中枢拠点性をいっそう高め、県全体の活性化に繋がっていくことを確信したしだいです。
スタジアム建設も併せまして、中央公園全体の整備も動き出すということから広島の都心に新たな賑わいの拠点が生まれて、広島の街がいっそう魅力あるものへと変わっていくということに対して広島の経済界として大きな期待を寄せています。
サッカースタジアムの建設を契機といたしまして、広島の街をいっそう魅力あふれるものとなるようにしていきたいと思っているしだいです。
一方、事業を進める上で建設資金の確保が大変重要となってくる。今後、広島商工会議所が窓口になりまして、地元経済界が一体となって、できる限りの資金協力ができますよう、ご賛同いただける企業からの寄付を募るのみならず、スタジアム建設に向けた経済界としての取り組みを加速させていきたいと考えています。
企業の資金協力の依頼に対しましては、先ほど申し上げたようにスタジアム建設が広島市、県全体の活性化に繋がることを踏まえまして、ふるさと納税の利用対象となる広島市以外の県内企業にも積極的に声掛けをしていきたいと思っているしだいです。
県、市、また他の経済団体とも調整しまして、経済界の寄付目標額を定めて、令和2年度には企業を対象とした寄付金の募集活動をスタートさせたいと考えております。
以上、ひろスタ特命取材班(この項つづく)