もうこの瞬間から来季へ向けた戦いが始まっている、広島ドラゴンフライズvs信州ブレイブウォリアーズ、5月8日9日広島サンプラザホール昇格組同士、最初で最後の激突

2021年05月07日: 編集部

画像は朝山正悟

広島ドラゴンフライズは5月8日、9日の信州ブレイブウォリアーズ戦（広島サンプラザホール）でB1での最初のシーズンを終える。全60戦のうち５戦はコロナ禍の影響で開催不可能となり全55試合。

ここまで７勝46敗、勝率・１３２。ゆえにもう勝ち数は二桁に届かない。

しかもまだホームで３勝しかしていない。さらにここまで6度、三桁失点負けしているがそのうち5度までがホームゲーム…

シーズン途中での成績不振によるヘッドコーチ交代、チームやクラブスタッフのコロナ感染拡大の影響、ジャマリ・トレイラーの大麻リキッド密輸入逮捕とその契約解除を受けた岡崎修司ＧＭの就任といろいろなことがあり過ぎた。

ここでもう一度、噛み締めるべきは２０２０年4月24日、B1ライセンス交付が決まった日のことだろう。

悲願だったB1の舞台。当時の大川正明チェアマンからはリモートで「B1に上がったチームはけっこう苦戦するんだけれども広島からチャンピオンシップをいきなり狙うぐらい、朝山選手とか経験値のある選手はいっぱいいるので、そんなとこを目指してぜひ大暴れして欲しいと思っています」のコメントが寄せられた。

この日のために長らく広島ドラゴンフライズの歴史を支え続けた朝山正悟もこう言った。

「やはり今シーズンこうして今いる選手たちとスタッフ、球団関係者のみなさんと作り上げたチームだと思っています。その中でこういった結果を出せたことには満足いってますし、今年はほんとに強いチームだったなと思います」

「その中で、さっき成也も言ってましたけど広島ドラゴンフライズ１年目から、またずーっと積み上げてきたものの中で今自分たちがある、と思っています。これまで広島ドラゴンフライズに多くの人たちが携わってきた、その上に自分たちが立っている。その強さというものをしっかりと次の舞台で出せるように頑張っていきたいと思っています」

ところが、だ…

前節、５日のホームゲーム、エヴェッサ大阪戦で77－102の完敗を喫したあとの朝山正悟のコメントは次のようなものだった。

「今日は、今自分たちの戦績や置かれている状況の中で、やってはいけない試合だった。シュートが入る、入らないはその日によってあるがそれ以前に、チームとしてやらなければいけないルール、守備のところや細かいルールを遂行しなければいけない。自分たちとしては今シーズンそこがなかなかできなかった。それがこういった結果につながっている部分もあると思う。最後、自分の中ではこのままでは終われないという気持ちでやったが、本来こういうことではないと思う」

強い気持ちでコートに立とうとしても、もはや成す術なし、如何ともしがたいものがあるのだろう。朝山正悟はさらにこう続けた。

「自分はいつも『個でやっても結果的に勝てない』と言っているが、ああいう（積極的にシュートを狙う）形で自分がやれと言われればいくらでもできる。ただ、チームとして40分間戦えていたのか、という部分ではそういう試合ではなかった。非常に悔やまれるというか、今シーズン、自分たちがなかなか結果を出せなかった要因がもろに出てしまった試合だった」

「なので、よりチームとして遂行しなければならないところに尽きる。だが、その中でなかなか戦う感じにはなっていなかったので、それだったら自分がやろうという思いで最後はプレーした。だがそれはバスケット本来のところではない。そういうところで当然自分自身にも反省点はあるが、もっとチームとしてやらなければいけないところがたくさんあり、反省点が多く残る試合だった。（シーズン）終盤にやってはいけない試合だった。悔しい気持ちで一杯。これが、まとまってはいないけど自分の率直な気持ち」

…百戦錬磨のチームの顔ですら“禅問答”のようなコメントになっている。広島ドラゴンフライズは、初代ヘッドコーチ佐古賢一氏によって誘（いざな）われた朝山正悟とともにある。おそらく5年先も、いや10年先もかもしれない。

1年前の4月、信州ブレイブウォリアーズもB1ライセンス交付に沸いた。いやその喜びは広島より遥かに大きかったはずだ。

今から２年前、２０１９年３月12日。Bリーグは信州ブレイブウォリアーズにB2ライセンスを交付した。２０１８―19シーズンの信州ブレイブウォリアーズはこの時、B2トップを快走していたが、B1ライセンス条件のひとつ「ライセンス申請者の計算書類において、申請期日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである（債務超過である）場合は本基準は充足しないものとする」に抵触した。

けっきょく信州ブレイブウォリアーズはそのままB2中地区1位を確保して、レギュラーシーズン48勝12敗の勝率・800もB２ナンバーワン。さらにプレーオフも制してB2王者になった。

広島ドラゴンフライズの置かれた状況よりさらに厳しい環境下でチームを指揮しているのは島根スサノオマジックをB1に引き上げた勝久マイケル氏。そう、佐古賢一ヘッドコーチの広島ドラゴンフライズとBリーグ史上に残る死闘を演じた名指導者だ。

前節の信州ブレイブウォリアーズはことぶきアリーナ千曲でのホーム最終戦に臨み、9位の三遠ネオフェニックスに80―75で競り勝った。通算20勝32敗。これまでのB1昇格組の最多勝利数は2018―19シーズンに秋田ノーザンハピネッツが記録した17勝。

同じ立場にありながら広島ドラゴンフライズは大差をつけられた。

レギュラーシーズン途中、打ち切りの昨年のこの時期、コロナがなければB2王者を決めるプレーオフで対戦していたはずの両チーム…

信州ブレイブウォリアーズもやはりコロナ陽性反応者が出てこの日が4月14日以来の試合となり、しかも8人で戦った。「プレーも精神面も成長した」と勝久マイケルヘッドコーチは話している。

そして広島で連勝すれば7位から6位浮上のフィニッシュ…

コロナの関係で2020―21シーズンの広島ドラゴンフライズ最終戦は、昇格組同士の最初にして最後の2試合となる。

TIP OFFはともに午後１時35分。コロナ禍にあって広島サンプラザホールの入場上限設定は２１７３人。８日は１２００人、９日は１７００人程度の入場が予想され、当日券観戦の余裕あり。

アリーナ席から送られる熱い拍手を背にコートに立つ、朝山正悟と広島ドラゴンフライズ来季はもう今この瞬間から始まっている。（ひろスポ！広島スポーツ100年取材班＆田辺一球）

島根スサノオマジックB1昇格おめでとう、そして次もまた新たな舞台でもっと激しく…広島ドラゴンフライズ５・14ドキュメント（後編） | 【ひろスポ！】広島スポーツニュースメディア (hirospo.com)
（２０１７年５月16日掲載）

島根スサノオマジックB1昇格おめでとう、そして次もまた新たな舞台でもっと激しく…広島ドラゴンフライズ５・14ドキュメント（中編） | 【ひろスポ！】広島スポーツニュースメディア (hirospo.com)
（２０１７年５月16日掲載）

島根スサノオマジックB1昇格おめでとう、そして次もまた新たな舞台でもっと激しく…広島ドラゴンフライズ５・14ドキュメント（前編） | 【ひろスポ！】広島スポーツニュースメディア (hirospo.com)
（２０１７年５月15日掲載）

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