わずか10分で勝者が決まる。
第3戦は、
苛烈を極めた…
挑戦者、広島ドラゴンフライズは恐れることなく向かっていった。
前半開始21秒、ダニエル・ディロンの2Pで先制。特殊な舞台でモノを言うのはやはり、経験だ。
ダニエル・ディロンのミドルが決まって、広島ドラゴンフライズ先制
だが、島根スサノオマジックもその30秒後には追いつく。そして、その1分後には、ここでも安部潤の3Pが決まって、島根スサノオマジックが5-2とリード。
試合前、島根スサノオマジックの勝久マイケルヘッドコーチが選手に伝えたこと。
「ルールの確認、2戦目を忘れること、メンタルのタフさの話、自分たちのバスケットをできた方が勝つ、という話」
そして「最初得点を取った方がショートゲームでも勝つとは限らない」ということ…
さすがはB2最高勝率…
前半8-4、島根スサノオマジックのリードで後半、ラスト5分へ。
先に島根スサノオマジックが2Pを沈めて10-4、開始2分、鵤誠司のジャンプショットで広島ドラゴンフライズが追いかけ10-6。
何度でも広島ドラゴンフライズの前に立ちふさがる安部潤(右)のマークを振り切り、鵤誠司が貴重な2Pを沈める
さらに残り1分20秒、コナー・ラマートの3Pも決まって、10-9、広島ドラゴンフライズ、B1昇格まであと2点…
しかしそこから1分近くスコアは動かず、残り23秒、広島ドラゴンフライズタイムアウト。
いよいよ残り10秒、逆に島根スサノオマジックにフリースロー。2本目は外したがこれで11-9。
もう、コートに立っているのがやっとのような、互いに総力を尽くした上でのラスト10秒。9秒、8秒…
広島ドラゴンフライズは時間をファウルで調整して、ラストワンプレーに懸ける作戦に出た。
これまで何度もチームの危機を救ってきたダニエル・ディロンのカットイン。決まれば同点、ファウルトラブルに持っていけばフリースロー…
最後のワンショットにすべてを託し、そして…
けっきょく、広島ドラゴンフライズには届かなかったその2点。
第3戦、最終スコアは9-11のまま。
シュート成功率は、
島根スサノオマジック30.8パーセント
広島ドラゴンフライズ23.5パーセント
その差は、4203人の大声援が交錯した、松江市総合体育館の”演出”にあったのか
あるいは、変則第3戦を経験しているか、していないかの違いだったのか…
ありがとう、5・14…
ゲームのあと、見上げる島根の空もブルー…
激闘から中1日。広島ドラゴンフライズは広島市内で練習を再開した。もちろん、B.LEAGUE B2プレーオフ3位決定戦を勝ち抜き、その先の入れ替え戦にも勝利して悲願のB1昇格を果たすためだ。
2日前、試合後の会見で島根スサノオマジック、勝久マイケルヘッドコーチには「B1で戦い抜くための条件は何だと思うか」という質問も投げかけられた。
「きょうはこの勝利をエンジョイしたい、来季どうしたいかはまだまだ先に考えさせてください」と苦笑いの同ヘッドコーチは、しかしこう答えた。
「だけど、ひとつだけ言うとしたら、自分を信じること。B1はものすごくレベルが高い。でも島根にも素晴らしい選手が揃っている。B1だからどうだ、ではなくて闘争心を持ってやり続けること…」
同じことはこのチーム、このメンバーにも言える。
勝久マイケルヘッドコーチの話を伝え聞いた朝山正悟キャプテンも、最終ターゲットにフォーカスインしながらその先を見据えた。
「負けた日はそのあと長く感じました。やっぱり、いろいろと…。落ち込むところもあったりして…でも、もうきょうはしっかりと切り替えて、次の目標がありますから。みんな、自分たちがどこを目指して、どこに行きたいのか分かっているし、ヘッドコーチからもそういう話をしていただきましたし、非常にいい雰囲気だったと思います」
「負けてチャンスがあるっていうのはすごく幸せなことだと思っています。最後までバスケットができるっていうのも本当に幸せだと思うんで…。自分たちもシーズン前から自分たちを信じて、辛い時もいい時もこのチームで乗り越えてきたわけですし、それだけは最後まで崩さず、そして最後まで、バスケをできるように今週末しっかりやりたいと思います」
島根スサノオマジックB1昇格おめでとう、そして次もまた新たな舞台でもっと激しく…広島ドラゴンフライズ5・14ドキュメント(後編)
企画制作・撮影・構成・テキストともに、ひろスポ!広島ドラゴンフライズB1への道取材班