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2023年12月24日
編集部

限りなく透明に近いドジャーブルー、大谷翔平、そして山本由伸…黒田博樹も投げたカリフォルニア物語の新たな幕開け(Ⅱ)

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黒田博樹
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    飛翔会

  • 2

    ダグ

  • レッドヘルメット

画像は、2008年に広島からロサンゼルスに活躍の舞台を移した黒田博樹とともにドジャーブルーに染まった「TAKASHI SAITO」…2008年のドジャース、掌サイズの日程表から、大谷翔平と山本由伸も同じようにドジャースの”顔”になる…

 

大谷翔平選手が12月15日(日本時間、以下同)、カリフォルニアの青い空の下でドジャース入団会見を行いました。

 

 

22日にはポスティングシステムを使いオリックス・バファローズから米大リーグ移籍を目指していた山本由伸投手のドジャース入りが報じられました。

 

 

そして大谷サンタのプレゼントはポルシェ…報道…

 

 

街にクリスマスのイルミネーションが輝くこの時期、いつも新たなドラマの幕が上がります。

 

 

今から9年前の広島の街へのクリスマスプレゼントは、「ミスター完投」とも呼ばれていた剛腕、黒田博樹さん(現広島東洋カープ球団アドバイザー)の“再登板”でした。

 

 

ひろスポ!ではクリスマス特別企画として、コイの街のダイアリー|田辺一球|note で連載中の「限りなく透明に近いドジャーブルー」を一挙連載します。今回はその2回目、です。

 

カープダイアリー第8466話「限りなく透明に近いドジャーブルー、ユニバーサルな戦い」(2023年12月18日)

ボストン・レッドソックスの吉田正尚とオリックス・バファローズの西川龍馬。1学年違いの先輩・後輩コンビが福井県敦賀市の市民文化センターで「敦賀気比高校OBアスリートトークショー」の壇上に上がったのは2日前、16日のことだった。

地元の野球チームの子どもたちや市民らおよそ1000人を前にふたりの思いや来季の抱負を語り、会場は熱気に包まれた。

残念ながら翌17日の中国新聞にも、18日月曜日の地元局夕方ローカル番組でも、その様子は報じられなかった。すでに過去の人?カープファンにとってはまだとっても気になる存在だろうに…

このイベントは、 北陸新幹線の金沢-敦賀間の延伸開業まで約100日となることを記念して同校を運営する学校法人嶺南学園が主催した。学校経営者側にとって、ふたりはこれ以上ない人的資源だ。

少子化が進む中、都市圏でも地方でも中小規模の私立大学のうち3割以上が赤字経営に苦しんでいる。広島でも広島国際学院大学が5月で閉校となり、今は無人の校舎だけが残されている。私立の高校も状況はいっしょ。

総務省が7月26日付で公表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、今年1月1日時点の福井県の総人口は前年比7784人減の75万9777人で、全国で5番目に少なかった。10年連続で減少し、減少数、減少率とも最大だった。最も減少したのは福井市で1701人、次いで越前市1242人、敦賀市671人の順だった。

北陸新幹線は、人口減に歯止めがかからない日本海側の北陸各都市に向けての救世主。金沢市内では2015年延伸に備えて中心部の再開発が急ピッチで進められた。その結果、街並みは一変し、北陸新幹線が伸びてくる前段階で多くの観光客を惹きつける条件を整えることができた。

金沢駅-敦賀駅間の着工は2012年。12年の歳月を経てやっと新幹線が敦賀まで行き来するようになる。最終的に敦賀-新大阪間が結ばれる計画だが、いつのことになるか誰にも分からない。

敦賀と言えば原発、そして「もんじゅ」。市内には「もんじゅ」の名を冠した宿泊施設もある。2001年に制作された映画「戦線布告」では北からの潜水艦が原発に近い駿河半島浅瀬で挫傷し、そこから自衛隊との交戦が始まり、やがて周辺国や米国も戦闘態勢に入る…

巨費を投じ、けっきょく廃炉となった「もんじゅ」。こちらは映画ではなくて「リアル」の世界の話だが、やはりこの地方に暗い影を落とす。トラブルに次ぐトラブル、隠蔽に次ぐ隠蔽で矢面に立たされた関係者は自殺した。夢の「核燃料サイクル」は夢のまま終わった。

京セラドーム大阪の近くで少年時代を過ごした西川龍馬は「野球に集中できる環境が欲しいから…」と敦賀を目指した。寮生活と学校と野球部専用グラウンドの“トライアングル生活”が自分に合っている、と…

1年夏からレギュラーになり、3年春には甲子園の舞台にも立った。

敦賀気比は校舎もグラウンドも高台にあり、吹き付ける冬の風は冷たい。雪も降る。だが、どんな時でもバットを振ることを止めなかった。やがてテニスラケットのように、自在にボールを操れるようになった。王子製紙での3年間で“龍馬打法”に磨きをかけた。

2015年のドラフト5位指名でその年の12月、カープ入団会見に臨んだ。ひな壇での代表質問のあとの囲み取材で同世代の大谷翔平や藤浪晋太郎の話を振られると…

「自分は大谷や藤浪と同い年ですが、(僕が)一番凄い選手だと思っています」

…と答えた。

その時点では質問した記者らは「おい、おい…」と思ったはずだ。だが、今の西川龍馬は尊敬する先輩のオリックス時代の7番を背負い、4年総額12億円以上の契約を手にするまでになった。

栗山英樹“監督”の演出によるWBCファイナルカット「準決勝編」では、3点を追いかける七回、二死一、二塁から四番・吉田正尚の一振りで追いついた。再び4対5ビハインドで迎えた九回には先頭の大谷翔平選手がツーベースヒット。塁上で「カモーン!」のパフォーマンスで自軍を鼓舞すると、続く吉田正尚が四球を選んで村上宗隆がサヨナラ打!という流れになった。

普通では考えられないことが起こる。それが栗山ジャパン…

西川龍馬の一番の武器は、そんな吉田正尚を身近な存在としていることだろう。

前年オフ、ポスティング申請してボストン・レッドソックスと総額9000万ドル(約128億円)で5年契約した吉田正尚の、今季年俸は1500万ドル(約21億3000万円)だった。

西川龍馬はそんな吉田正尚を通して、大谷翔平をより身近に感じることができる。気軽にやり取りできる関係はカープ打線を一緒になって牽引した鈴木誠也とも構築されている。

ロサンセルスと大阪、ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドとユニバーサル・スタジオ・ジャパン…「一番凄い選手」を目指す映画のようなストーリーは、来季、両都市で同時に展開されることになる。

 

 

 

カープダイアリー第8467話「限りなく透明に近いドジャーブルー、Cut my veins, and I bleed Dodger blue.」(2023年12月19日)

「マイナスからのスタートになると思っております」

福岡PayPayドームでの入団会見に臨んだ山川穂高の眼は半開きのように見えた。やはり、まともにカメラの方を向くことができないのか?

西武から国内フリーエージェント権を行使して、新天地で勝負をかける。4年契約で総額16億円(金額は推定)の大型契約と見られる。背番号は25。

ホークスファンから球団へ、抗議の声が殺到している。三笠杉彦GMはその事実を認めた。

シーズン最中の5月、強制性交の疑いで書類送検された山川穂高は8月に不起訴処分になった。だが、ダーティなイメージは払しょくできていない。

9月3日には西武から無期限の公式試合出場停止処分を受けた。ファンの目には「無期限」がいとも容易く解除されたように映る。

WBCで縁の下側に回った山川穂高はいい仕事をした。準決勝のメキシコ戦。3対5、2点のビハインドで迎えた八回、一死二、三塁で代打犠牲フライを放った。

この一打が九回の先頭大谷翔平の二塁打と、続く吉田正尚の四球と、村上宗隆のサヨナラ打へとつながった。

だが「世界一に貢献した」とは、もう誰も言ってはくれないだろう。

似たような話は海の向こうにもある。

今季、カープ打線も4度対戦したトレバー・バウアー。2021年2月、ロサンゼルス・ドジャースと3年契約してせっかく新たな活躍の場を手にしたのに、6月になって暴行疑惑が表面化した。

SNSで知り合った女性に傷だらけの顔の写真を公開され、訴えられた。2020年までの8シーズンで75勝を挙げ、前年にはサイ・ヤング賞を受賞していたのに、だ。

2022年2月、地元のロサンゼルス警察は刑事訴追しない方針を明らかにしたが、ロサンゼルス・タイムズはすぐに「球団は復帰させない姿勢を明確にすべき」とのコラムを掲載した。

ドジャーブルーに染まる資格なし。MLBでの居場所はなくなり、DeNAが救いの手を差し伸べた。

日本国内に再び目を転じると、この日午前10時ごろ、都内の自民党安倍派事務所と二階堂派事務所に東京地検特捜部が乗り込んだ。強制捜査の手が入ったことで自民党派閥の政治資金パーティーの裏金問題が刑事事件に発展した。前代未聞。

この先、仮に政治家本人が「シロ」と判断されても、国民の抱く悪い印象は変わらないだろう。今年の漢字は「税」ではなく「裏」だという声も多い。

山川穂高の場合も、残念ながら裏の顔の方がファン、国民に浸透し過ぎた。打てば打つほど逆風が増すかもしれない。

「こどもに夢を与える」のが大人たちの使命であるとするならば、裏表があるような人物をクラブや組織、あるいはメディアがヒーロー、ヒロインに担ぎ上げることはできない。

Cut my veins, and I bleed Dodger blue.

2021年に亡くなった元ドジャース監督、トミー・ラソーダ氏の言葉だ。

その崇高な精神は、おそらく崇高な肉体にしか宿らない。

そのふたつを併せ持つのがリアル二刀流、ということになる。

 

 

カープダイアリー第8468話「限りなく透明に近いドジャーブルー、あと何年野球ができるか…1球の重み」(2023年12月20日)

カメラの前で、カープ球団旗とともに笑顔のガッツポーズを決めた。現役ドラフトで赤いユニホームに袖を通した内間拓馬。2020年のドラフト4位で楽天に入団、2021年は11試合、2022年は1試合に投げたが、今季は一軍登板ゼロだった。

「僕の魅力はストレートで、そこに対して自信を持って投げて欲しいと言ってもらった。実績のない僕をとってもらい、結果を出すことで恩返しになると思う」

150キロ超えのその「ストレート」で一軍昇格を目指し、イースタン・リーグでは17試合に投げて3勝無敗だった。

53回1/3で被安打52、被本塁打5、与四球30、奪三振33、防御率は3・88。

大卒でプロの世界に飛び込んで来季が4年目になる。亜大で同期だった矢野からいろいろ「広島のこと」を聞かされ、すでにイメージは沸いている。新天地で勝負!まずは2月のキャンプで日南から、故郷の沖縄入りを目指すことになる。

背番号は、10年間つけたのち今回の現役ドラフトで西武に移籍した中村祐太の67を引き継ぐ。

ライアン、マットらが広島に別れを告げて“空き”になった外国人枠4つは、マット・レイノルズ内野手、ジェイク・シャイナー内野手、トーマス・ハッチ投手、テイラー・ハーン投手が埋めた。

一岡、薮田ら移籍、または球団スタッフなどに転身によって生じた7枠には、先の新入団会見でひな壇に並んだ常廣羽也斗ら8選手が当てられた。

新たに赤い帽子をかぶることになる選手は、もうひとり。龍馬のオリックスFA移籍によって生じる人的補償選手だ。

カープ球団関係者の話を総合すると「熟考中」であり、巨人にFA移籍した丸佳浩の人的補償で長野久義を獲得するタイミングが年明けになったように、年内に決まらない可能性が高い。

ネット上では“広島移住”の候補選手の名前がいろいろ取り沙汰されてきたが、現段階で確実に言えることは、取るなら投手、ということだろう。

投手重視の考えは現場からの要請でもあり、球団側の方針にも沿ったものになっている。

150キロ右腕の肩書を背負ってこの日の会見に臨んだ内間拓馬は、新たなスタートを切るに当たってこうも言った。

「行け、と言われればどこでも投げるし、黒田さんのことばではないが投げる試合が最後になるかもしれないという気持ちを持って1試合1試合結果を残し、チームが優勝するためにひとつのピースになりたい」

先ごろ、カープ球団との間でアドバイザー契約を更新した黒田博樹さんのチームに対する影響力は計り知れない。

ロサンゼルス・ドジャースでの4シーズンで41勝、ニューヨーク・ヤンキースでの3シーズンで38勝。メジャー・リーグの名門チームでその剛腕を振り続けた黒田博樹さんは2014年の年の瀬に、カープファンへのクリスマスプレゼントとして”広島帰還”を実行に移した。

2015年2月17日の入団会見では金屏風の前で「あと何年野球ができるか分からないですし、カープで野球をすることの方が1球の重みを感じられるんじゃないかと判断しました」と話し、“男気”指数をさらに上げた。

その言葉は先日の青空会見で7000万人以上の視聴者に向けて大谷翔平が発した「野球選手として、あとどれくらいできるかっていうのは、正直、誰にも分からないですし、勝つことっていうのが僕にとって今、一番大事なことかなと思います」とも同期する。

黒田博樹さんは現役時代、何度マウンドに上がっても「投げる前は怖いし不安にもなる」と言っていた。大谷翔平の強靭なハートに宿る言い知れぬ重圧の存在は、本人にしか分からない。

 

 

カープダイアリー第8469話「限りなく透明に近いドジャーブルー、グローブ6万個が届くクリスマスを前に」(2023年12月21日)

年末年始の「カープ特番」。NHKを含む地元ローカル各局は、コロナ禍を経験するまで長年に渡りハワイロケなどの様々な「企画力」で勝負してきた。

2000年代の終わり、黒田博樹さんが正に「カープのエース」として活躍していたころ、瀬戸内海に浮かぶ島の子どもたちとの交流を紹介する、という切り口の年末年始特番がオンエアされた。

「企画」提案は黒田博樹さん自身。「同じやるなら、子どもたちに夢を与えられるようなものがいい」とテレビ新広島の担当部署に持ちかけた。

釣り、ゴルフ、料理・飲食、故郷や観光地訪問、スタジオでの対談などが中心だった時代にあって、異色の内容だったと言っていい。

黒田博樹さんはグローブやバットなどを携え、現地を訪ね、グラウンド整備、島の人たちとの交流、と何にでもチャレンジした。

そして、多くの人に見送られながら黒田博樹さんが船で島を去っていく、というエンディングになった。

日本国内のおよそ2万ある全ての小学校には、クリスマス前後に大谷グローブおよそ6万個が届くことになっている。広島でもすでにグローブを配布するための準備は整いつつある。

黒田博樹さんの思いと、大谷翔平の思いには、おそらく共通点が多いのではないだろうか。

大谷翔平より16年早くドジャー・スタジアムでの真剣勝負を経験した黒田博樹さんは「予想以上に厳しい世界でした。仮に一度、うまく抑えることができても、すぐに相手は対応してきた」と振り返る。

「カープで、これだというものを掴むのに5年はかかった」という中にあって、自身の投球スタイルの土台を確立すると、やがて「ミスター完投」の呼び名にふさわしい剛腕ぶりを発揮するようになった。だが、海の向こうのベースボールでは、常によりフレキシブルな変化を求められた。

打者の意図やそれに伴う動きを察知して、動くボールを細かく使い分ける。再びカープのユニホームを着た際に「フロントドア」や「バックドア」の球筋が話題になった。エース時代の真っすぐとフォークが中心だった投球スタイルは完全に過去のものとなっていた。

投げる大谷と打つ大谷。

すでに数多くの対戦を経験してきたメジャーの各打者、各投手は、あらゆる手を使い7億ドルの価値を有するリアル二刀流の“刃こぼれ”を狙う。

それをことごとく跳ね返すようでないと、ドジャースの大谷翔平はその光を失ってしまうことになる。その戦いに身を置くことが、どういうことを意味するのか。前人未踏のフィールドを歩む者にしか、その気持ちは分からない。

(つづく)

※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。

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