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2023年12月25日
編集部

限りなく透明に近いドジャーブルー、大谷翔平、そして山本由伸…黒田博樹も投げたカリフォルニア物語の新たな幕開け(Ⅲ)

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大谷翔平
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  • レッドヘルメット

画像は日米のクリスマスを彩るドジャーブルーな?ニュース面

 

NHKからのクリスマスイヴの贈り物、「メジャーリーガー大谷翔平2023 伝説と代償そして新たな章へ」が12月24日午後9時からのNHKスペシャルでオンエアされました。

 

NHKプラスでも配信されています。ご覧になった方は多いでしょう。

 

大谷翔平選手がカリフォルニアの青い空の下でドジャース入団会見を行ったのは12月15日(日本時間、以下同)。

 

その時点でひろスポ!では黒田博樹さんのメジャー挑戦とリアル二刀流が重なりました。

 

そして22日にはポスティングシステムを使いオリックス・バファローズから米大リーグ移籍を目指していた山本由伸投手のドジャース入りが報じられました。

 

街にクリスマスのイルミネーションが輝くこの時期、いつも新たなドラマの幕が上がります。

 

 

今から9年前の広島の街へのクリスマスプレゼントは、「ミスター完投」とも呼ばれていた剛腕、黒田博樹さん(現広島東洋カープ球団アドバイザー)の“再登板”でした。

 

 

ひろスポ!ではクリスマス特別企画として、コイの街のダイアリー|田辺一球|note で連載中の「限りなく透明に近いドジャーブルー」を一挙連載します。今回はその3回目、です。

 

カープダイアリー第8470話「限りなく透明に近いドジャーブルー、1480億円のシナリオ」(2023年12月22日)

イスラエルとハマスによる殺りくの都市が二カ月と半を経過して瓦礫の山と化し、ロシアに侵攻されたウクライナが戦時下での2度目のクリスマスを迎えようとする中、日本国内のメディアは山本由伸の動向に聞き耳を立てていた。

日本時間の朝から情報が錯そうしたから。だ。

「ヤンキースと9年契約、3億2600万ドルで合意か」という話がSNSにアップされたり、一部のメディアが「ロサンゼルスで開催されるアメフットのゲームと大谷翔平と山本由伸が観戦する」と報じたり…

そして日本時間の午後2時前、MLBが公式にロサンゼルス・ドジャースとの契約完了を伝えた。TBSは「ひるおび!」の天気予報のコーナーを「速報」に差し替え、NHK総合テレビも午後1時54分に生番組の中でアナウンサーが報じた。ネットでは日刊スポーツが一番乗りで午後1時44分にはニュースをアップした。

 

 

けっきょく大谷翔平と山本由伸が“同期”することになった。

WBCでともに戦い、ともに世界一になり、現地時間の12月14日にカリフォルニアの青空の下でドジャース入団会見を行った大谷翔平がその前日に、同じくドジャー・スタジアムで山本由伸と球団側との面談に参加していたことものちに判明した。

こうした流れから考えれば結末は見えていたようなもの。リアル二刀流の「後払い」契約の理由の一端も伺えようというものだ。

この夢のようなシナリオをリアルに変えるのも大谷流、ということか?

Dodgers strike again: LA signing

Japanese pitching star to $325M deal

米メディアはこの結末を、またしてもセンセーショナルに報じるしかなかった。シナリオの存在を知らなかったから、だ⁉

 

 

 

リアル二刀流が10年7億ドル、1015億円。パ・リーグ3年連続四冠、3年連続沢村賞右腕が12年3億2500万ドル、465億円。

ふたり合わせると1480億円になる。田中将大はニューヨーク・ヤンキースと7年で161億円、千賀滉大はニューヨーク・メッツと5年で103億円。西川龍馬と先日、福井県敦賀市でイベントに出席した吉田正尚はボストン・レッドソックスと5年で123億円、カープをリーグ3連覇に導いた鈴木誠也もシカゴ・カブスと5年で101億円だったから今回のドジャースが、いかに太っ腹かがわかる。

テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」はこの日の放送の中で日本人訪問客による「チケット価格」高騰について触れつつ「メジャーリーグ中継はドル箱コンテツ」であり、このふたりの単純計算による年俸合計がNPB12球団の全選手の4割に相当する、とした。

そして「日本とアメリカの選手の実力の差は非常に接近しているのに、ビジネスとしてのスケールの違いは依然として非常に大きい」と結んだ。

ただ、要らぬ世話だろうけども、ひとりのアスリート、選手が家族などを養いながら一生のうちに使うことのできる額には、よほどのことを目指さない限り自ずと限界がある。

 

 

 

2014年、街がクリスマスのイルミネーションに彩られるころ、黒田博樹さんは腹を決め、ヤンキースからの20億円オファーを振り切り、カープの鈴木清明球団本部長に「僕は、帰ります」と電話で告げた。

あれからもう9年。今では、カープのユニホームを着てともに戦った新井貴浩監督を補佐する球団アドバイザーとして活動しながら「カープで幸せな人生を歩ませてもらいました」と感謝の言葉を口にするのである。

 

 

カープダイアリー第8471話「限りなく透明に近いドジャーブルー、エースの条件」(2023年12月23日)

米国フロリダ州マイアミにあるマイアミ・マーリンズの本拠地、ローンデポ・パークで開催されたWBC決勝。米国を振り切った日本が3大会ぶり3度目の優勝を果たしたのは、日本時間で3月22日のことだった。あれから9カ月…

大谷翔平と山本由伸。

栗山ジャパンの二枚看板は、来シーズンからドジャーブルーに染まる。日米の街角にクリスマスのイルミネーションが輝くこの時期、新たなドラマの幕が上がる。

 

 

12月7日に広島東洋カープとのアドバイザー契約を更新した黒田博樹さん。新井貴浩監督を支える「総監督」の声も聞こえてくる。

1975年、カープが初めてリーグ優勝した年に生まれた黒田博樹さんは77年早や生まれの新井貴浩監督の2学年上。ともに大卒でカープのユニホームに袖を通し、エースと主砲に成長する過程で同期した。しかしチーム力は上がらず、旧広島市民球場のスタンドにも閑古鳥。2005年には15勝&43発でタイトル奪取もシンクロしたが、山本浩二監督最終年となったチームの順位は最下位だった。

「優勝争いがしたい…」

当時、Bクラス常連だったチームから新たな舞台へ…カープファンのことを思い、ゆえに後ろ髪を引かれる思いで2008年オフ、やはりふたりは同時に広島をあとにした。

そして2014年オフ、「カープを優勝させたい」と、またふたり揃って“広島帰還”を果たし、復帰2年目の2016年、カープファンに25年ぶりのリーグ優勝をプレゼントした。

 

 

カープエース時代の黒田博樹さんは「メジャーに特別な興味はなかった」と話していた。またドジャース入りが決まったあとも「ただ、やらなきゃいけない気持ち」だけに支配され、“やってやるぞ”という類の高揚感とは無縁だったという。

日本人選手のメジャー挑戦を取り巻く環境は、2000年代初頭と今とでは大きく異なる。それでも日米双方による今回の華やか過ぎる大谷・山本ドジャース移籍報道と比べれば、黒田博樹さんのそれはずいぶん悲壮感に満ちたものであったようだ。

「エースの条件とは何か?」

海を渡る前にそう聞かれた黒田博樹さんは「ファンに信頼されるピッチングをすること」と即答した。

カープファンは当時、その剛腕、その”男気”に心底惚れ込んでいた。

だからFA宣言することを決断して、旧広島市民球場で番記者らに囲まれた時には涙をこらえることができなかった。

そうまでしてドジャーブルーのマウンドに立つからには、今度はロサンセルスのファンに認めてもらうだけ…

それはドジャース入りを自身のインスタグラムで発表した大谷翔平も一緒。

「生涯ドジャース」を宣言したその文面には、野球人生の全てを注ぎ込む約束が綴られている。

And to all Dodgers fans, I pledge to always do what’s best for the team and always continue to give it my all to be the best version of myself.

……

2008年4月4日午後7時過ぎ、(日本時間5日後前11時過ぎ)、敵地のサンディエゴで黒田博樹さんはメジャーデビュー戦のマウンドに上がり見事、初勝利を掴み取った。開幕から4試合目のことだった。

 

 

カープダイアリー第8472話「限りなく透明に近いドジャーブルー、銀のポルシェとデザインされたパフォーマンスの光と影と」(2023年12月24日)

「17番」をリアル二刀流に譲ったロサンゼルス・ドジャースのジョー・ケリー投手。その自宅前に、現地時間のクリスマスイヴ・イヴに届けられたのはシルバーメタリックのポルシェ。妻アシェリーさんが自宅のドアを開けるところから始まる動画では関係者の「あなたのものです、翔平がポルシェをあなたへと…」という音声も拾われている。

にわかに信じがたいような翔平サンタからのプレゼントは、ロサンセルス・ドジャースの公式Xによって配信された。

日本国内ではおよそ6万個のグローブが全小学校に向けて贈られ、すでに大谷翔平の母校、岩手県奥州市の姉体小では22日、児童がそのグローブでキャッチボールなどを楽しんだ。

日米同時並行で、すごいことになっている。

 

 

 

この日、NHKでは繰り返し番宣していた「メジャーリーガー大谷翔平2023 伝説と代償そして新たな章へ」を午後9時からのNHKスペシャルでオンエアした。

ロサンセルスの広大な平野を見下ろす高台などで「3日前」にロケやインタビューを行い、返す刀で即流す。こんな芸当は簡単にできるものではない。関係者の証言も多岐に渡る。いったいどんだけ人とお金を投じているのか?

そして番組は…

ドジャース入りについて→「壊れる怖さ」(栗山英樹さん)→データに裏付けされた投球と打撃→2度手術した右肘の不安と可能性→ドジャースでの10年契約に向けての決意

…という流れで進んでいく。(NHKプラスで閲覧可)

 

 

 

途中、別々のパートで何度か「デザイン」という言葉が用いられている。そして「デザイン」こそが二刀流のリアルさを究極まで追求する。人気沸騰中のBリーグ、バスケの世界で「デザイン」はよく使われる用語で、この場合はチームプレー、チームの連携を指す。

だが、野球においての「デザイン」は投手、野手の個々の身体の動きをいかに無駄なく使い切るか、いかにパフォーマンスを上げることができる動きができるか、を指す。

ところが生身の人間の場合には、いくら鍛えようとも自ずと限界があり、データを追いかけ過ぎるとやがて破滅のシナリオに引き込まれていくのではないか…と、そういうニュアンスがきちんと番組内に織り込まれている。

こうなってくると、この番組どう締める?きっと関係者は迷ったはずだ。とはいえ編集して仕上げるための時間は限られており、最後は大谷流の「自然体」に助けられつつのエンディングになっている。

そんな1時間4分の放送枠の中で大谷翔平がお金の話をしたのは一度だけ。と同時に自身の「責任」についても自ら触れていた。

メディアや周囲は7億ドルにばかり気が向くが、番組の中で大谷翔平自身の口からそのあたりのことははっきりとした口調で述べられてもいる。

 

 

 

番組タイトルにあるように、リアル二刀流の物語は「新たな章」へと向かう。

孤軍奮闘だったエンゼルス時代を考えれば、もしかしたら少しは肘や肩や膝や腰にかかる“過負荷”を弱めることができるかもしれない。相手のマークが分散するからだ。

ところが大谷翔平の場合はそうでない可能性の方が高い。周りがハイパフォーマンスなら自分もまた周り以上のパフォーマンスを発揮しようとするだろう。

順調に回復しているとされる右肘だが「3度目」はもうない。あとがない状態でどうこの先戦っていくのか?

できることなら、まだその肉体があるがままの状態だった、リアル二刀流デビューの日にまで遡り、ケガのない日々を歩んで欲しかった、とそんな思いを巡らせる関係者も多いのではないだろうか。

日本ハム入団1年目の2013年6月18日のマツダスタジアム。「五番投手」でスタメン出場して、投げては4回4安打3失点、打っては1安打1打点…あれからもう10年。

ポルシェにはコーナーリング時の安定性や操縦性を高めるために「ポルシェ トルク ベクタリング」というシャシー技術が採用されている。二刀流がコースアウトすることなく、10年にも及ぶ耐久レースを駆け抜けることができるか、どうか、それは誰にも分からない。1年後の今頃、またNHKの単独マイクの前で何を語るかすら予想だにつかない。それが大谷翔平…

(つづく)

※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。

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