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2024年07月21日
編集部

仏前にはウイニングボール3つ…迫田穆成さんの訓えを胸に第1シード校に挑む竹原、受けて立つ海田は打倒広陵まで負けられない…公立校対決激戦必至

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竹原
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    ダグ

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画像は2回戦で3ランを放つ竹原の福田海翔主将

 

第106回全国高校野球選手権記念広島大会

 

甲子園を目指す夏の広島大会、4回戦8試合がきょう7月21日、3会場である。その中で竹原と海田、公立高校同士のベスト8を懸けた戦いにひろスポ!は注目したい。

 

海田は2020年4月、平崎直樹監督(海田高校36期生)がコロナ禍の母校へ赴任したことで転機を迎えた。

 

平崎直樹監督が掲げたのは…

 

目標『甲子園出場』と目的『社会で必要とされる人になる』
部訓『凡事徹底(野球部員である前に立派な海高生であれ)』
4本柱『文武両道・時間厳守・挨拶励行・整理整頓』

そして「夢を持て 夢を追え 夢は実現させるためにある」と説いた。練習時間は短くても、文武両道を実践することで成長できる、と…

 

この春の県大会決勝。広陵に挑んだ海田は初回、互角の戦いを予感させる入りに成功しながら、大事にしてきた守りでミスが出て県内無敵の王者に完敗した。だからこの夏は忘れ物を取りにいく。1、2戦で投手起用などで様々な準備を続け、竹原戦もその流れの中にある。

 

竹原もほぼ同時期に新たな指導者によって、チーム力が飛躍的に高まった。2019年6月、竹原のグラウンドにやってきたのは、その4月に如水館の監督を辞した迫田穆成さんだった。

 

「無死一塁で打球が三遊間へ飛んで、ゲッツーコース…。サードからセカンドへ投げたらセーフになった。どちらが悪い?」

初めて会う選手たちにそう問いかけた。ひとりが「サード」と答え「セカンドカバーが遅れた」が多数派だった。が、正解は悪いのは「サード」…

「野球は思いやりのスポーツ、ボールを持っている側に主導権があるということをまずはよく理解してからプレーして欲しい」「そして大事なことは一生懸命に動くこと」

その話を複雑な表情で聞かされた選手たち、その数わずか11名だった。

 

その夏の広島大会後の新チームから迫田穆成さんの指導が始まった。2020年夏、コロナ禍による独自大会では観音と対戦して0対8五回コールド負け、21年も初戦で観音と当たって九回に逆転され5対6惜敗だった。

 

22年は初戦で千代田に15対1五回コールド勝ちして勢いに乗り4回戦まで進んだ。23年も初戦は祇園北に13対6で勝利して、2回戦では迫田穆成監督の下で夏7度、春1度甲子園の土を踏んだ如水館に1対8で敗れた。

 

その秋の広島南部地区高校野球1年生大会トーナメント(参加21校)。1028日に広島市安芸区の国際学院大学グラウンドで初めて「優勝」というものを経験した。9対2のスコアで快勝!決勝の相手は海田だった。

 

「今回の大会は呉港さん、市立呉さんが参加されておられないので、優勝と言っても…、ただ4試合で失点は1、1、0、2ですから、そこは選手がよくやってくれたと思います」

 

それが、ひろスポ!が直接聞いた迫田穆成さんの最後の言葉だった。この日、体調を崩していた迫田穆成さんはベンチに入らず、そして12月に帰らぬ人となった。

 

ラインでもやり取りして、グラウンドでもずっと話に耳を傾けてきた選手たちにとって、この大き過ぎる別れはどんな意味を持つことになるのか?

 

竹原はこの夏、3試合連続のコールド勝ちで4回戦まで進んだ。

 

安西との1回戦で初回に3点を先制すると二回にも一死二塁のチャンスを迎えた。ここで二番・竹森夢月(3年)は自分の判断でバントした。二死三塁。続く福田海翔主将の適時打で加点した。

 

二回戦の初回んは、先頭の大隅颯真(2年)が中前打すると、竹森夢月も力強く引っ張って右前打。福田海翔主将は右越えにアーチをかけた。わずか8球で3得点。

 

ここまでの3試合、天野耕平監督、山村心部長の下でキビキビと明るく元気にプレーする選手たちの姿からは、ひたむきさが伝わってくる。そして、投手交代などの選手起用も含めて、その試合の流れを見ていると、ベンチに迫田穆成さんもいるのでは?とさえ思えてくる。確かに遺影は持ち込まれてはいるのだが…

 

 

「僕は打撃が課題なのですが、迫田さんは打たなくてもいいから、しっかり守れと。それで気持ちが楽になって…高目のボール球は振らないなど課題を見って打席に入っています」(竹森夢月)

 

「僕はこの3年間で、チームとしては打力が向上して、打ち勝っていく野球ができつつあると思います。その中でも守備を常に課題にやっています。そして、自分の成績じゃなくてチームが勝つためにどうしたらいいか?を考えています。僕は(エースの)原田のあとを打つのでツースリーまで粘るとか、あとはキャッチャーなので全体をいつも見るようにしています」(寺戸暖捕手)

 

そして2番をつけた寺戸暖はその背中でこう言い切る。「相手がどこでも、そこで負けるチームじゃない、ベスト4は行ける、甲子園を目指せるチームです」

 

 

迫田穆成さんは竹原の町にやってきたあの日、街中のマクドナルドでハンバーガーを頬張りながらこう話した。

 

 

「4、5年後には甲子園へ。県内ベスト8までは行けてもその先は簡単ではないですから、上級生が下級生を教えることでチームを強くしたい。そういう選手を育てていきたい」

「最近ちょっと腰が痛くてゴルフはやっとらんのですが、トレーニングジムには行っとります。今の選手らは私の話を聞く時でさえ、下を向いたりしてなっとりませんが、でも野球の楽しさを伝えていけばやってくれるはず。学校側も竹原市も協力してくれるそうなので、呉や広島などからも選手を集めたいと思っとるんです。達川にも手伝どうてもろうたりしてね…」

 

ほどなく竹原市民らの協力で街中に専用寮が誕生して、グラウンドで練習試合があれば多くの市民が訪れるようになった。迫田穆成さんが、マックで語っていたことが現実となる中で、しかしその夢は選手たちひとりひとりの思いの中に託された。

 

ここまで3度手にしたそのウイニングボールは迫田穆成さんの仏前に飾られている。

 

届けた福田海翔主将は、竹原の町の人たちに大一番を前にこう話したという。

 

「僕ら、海田戦、勝ちますよ!」

 

(ひろスポ!広島スポ―ツ100年取材班&田辺一球)

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