全国高校野球選手権、第8日1回戦。午前7時15分「満員通知」の出た甲子園。午後8時プレーボールの広島新庄と早実の対戦は記憶に残る激戦となった。
1回戦完投の広島新庄、2年生エース・堀瑞輝は初回、二死一、二塁のピンチを乗り切ったが、二回、早実の「スーパー1年生」三番・清宮幸太郎に先制打を許し、四回にも2点を奪われたところで二番手・関藤真哉にマウンドを譲った。
3点ビハインドの四回裏の広島新庄。
早実の先発、松本皓から定永真亮、岩本卓也の五、六番が連続四球を選んで一死一、二塁。ここから迫田守昭監督が続々と勝負手!
七番に代打で左打者の小泉時生から同じく左打者の松井塁。フルカウントまで球筋を見極めた松井は6球目を左前に見事に弾き返してこれで満塁。続く遠目塚彪が松本の足元を抜く2点タイムリーを放ち1点差に詰め寄ると、堀の代打・北谷奨吾が中越えに勝ち越し2点適時二塁打。
さらにランナー一、三塁の場面で打席には堀をリリーフした関藤。広島大会打席ゼロの関藤は早実二ん番手左腕の上篠哲聖の前にボールカウント1-2と追い込まれた。
ここで迫田監督は満員のスタンドと相手ベンチの度肝を抜くダブルスチールにGOサイン。ピッチャーに返球しかけた早実の捕手・加藤雅樹が途中でサードランナーの動きに気づいたが間に合わず白球を地面に叩きつけ、そのまま三遊間に転がる間に北谷が5点目のホームを駆け抜けた。
しかし直後の五回、関藤が2点を奪われて試合は5対5の振り出しに。さらに二死二、三塁のピンチで九番・渡辺大地の詰まった当たりをセカンド杉村泰嘉がみごとにさばいてアウトにすり替えた。
六回以降の広島新庄は執念の継投策で早実の打ち合いで互角の展開へ。
六回は関藤が清宮に死球を与え一死一、二塁とされたところで3人目の大深穣をマウンドへ。四番の加藤に勝ち越し中前打された、五番・金子銀佑の痛烈な打球をここでも杉村が併殺打にして試合の流れを相手側に渡さなかった。
その裏、広島新庄の攻撃は送りバントが併殺打になり二死無走者となったあと、途中出場の原田和宏のヒットと二盗でチャンス拡大。ここで大深の打球はバックスクリーンへと伸びていく大飛球…。しかしセンター渡辺の超ファインプレーで同点に追いつくことはできなかった。
1点を追いかける八回、広島新庄は早実4人目の服部から松井が四球を選び、遠目塚の送りバントと北谷の右前打で一死一、三塁。ここでここまで4打数無安打ながら好守連発の一番・杉村が初球をみごとに右前に打ち返してとうとう6対6同点に追いついた。
しかし九回、痛恨の1点が早実に入る。
マウンドには4人目左腕の佐々木祥人。八回のピンチで大深を救援した佐々木は、清宮へのワンポイントリリーフの感が強いこの”勝負”を火の出るようなピッチャーライナーに”仕留めたが、続投の九回はヒットと四球で一死一二塁とされ、ここで再び大深へマウンドを譲った。
その後、場面は二死満塁となって打席には守備で大ファインプレーの九番・渡辺。球数が増えるに従って投球リズムの出ていた大深は宮崎をスライダー2球で追い込んだが、3球目のボールになる外スラを詰まりながら右前に落とされ勝ち越しを許した。二塁走者はライト北谷の好返球でタッチアウト!
わずかに1点を追いかける九回の広島新庄の攻撃は先頭の佐々木がショートゴロ。期待の定永は外角ぎりぎりのストレート見逃し三振、代打・奥田司が空振り三振。この試合、初めての3者凡退でゲームセット。6対7、ヒットの数12本対16本で、広島新庄、初めての夏の大舞台での挑戦が終わった。