広島のエース、日本球界のエース、前田健太が4連勝中だったDeNA打線の勢いを止めて今季3勝目をマークした。
「あまり調子が良くなかった」と本人が言う通り、初回、いきなり先頭の石川に2号ソロをライトスタンドに運ばれた。
しかし負けられない理由がいくつもあった。
首位で4月を終えたチームはその間、2連敗が2度だけ。前日は早い回に先発の篠田がつかまり大敗を喫した。乗せると手ごわいDeNA打線を抑え込んでおく必要があった。
個人的には防御率1点台で早くもトップに立ちながら2勝で足踏み。すでに5勝の巨人菅野や4勝をあげているライバルたちの後塵を拝するわけにはいかなかった。
2対1で迎えた四回には中村に犠飛を許し同点にされたが「何とか粘り強く投げれば勝てると信じて投げた」と前田健太。その後は八回までスコアボードにセロを並べ、九回のミコライオにバトンタッチした。
5対2で逃げ切った広島は20勝に到達して貯金も10。およそ3万2000人が詰めかけたマツダスタジアムのスタンドは大いに沸いた。
だが、前田健太にはおそらくもうひとつ、ムダな失点のできない理由があったのではないか?
首位を行く広島にあって今、大きな話題となっているルーキー右腕の大瀬良大地はここまで5試合に先発してクオリティスタート成功率100パーセント。すべての試合で6回3失点以内の投球を続け、決して試合を壊さないことで首脳陣の信頼を勝ち取った。
ところが前田健太はこの試合の前まで5試合に先発してクオリティスタート成功率60パーセント。一時期、右上腕に張りを訴えていたといはいえ、大エースが大卒とはいえ新人のそれに見劣りするような数字に甘んじているわけにはいかないのである。
得意のスライダーを五回まで抑え気味できていた広島バッテリーは、その後“宝刀解禁”で六、七、八回をノーヒットに抑え込んだ。
8回98球を投げて3安打2失点。かくしてエース右腕は見事、クオリティスタートに成功したのである。