運命のドラフト会議が午後5時から都内である。野球賭博事件に揺れる球界…。ドラフトどころではないのが実情だが、冠スポンサーもつき、地上波中継もあり、すべてのだんどりが整っている状況で「休止しよう」と声をあげる勇気のある関係者はいない。
それはともかく、ドラフト会議があるからにはどの球団も通常通り、戦力補強に躍起になるしなかない。
特に広島。シーズン終了を機にメジャー挑戦の夢を追う前田健太は、その周辺から「身支度を進めている」という声も漏れ聞こえてくる。加えて全身全霊を復帰元年に傾注した黒田博樹は「現役続行」宣言をせぬまま、しばらくプライベートタイムとなった。
仮に前田健太が抜ければ広島は大変なことになる。
前田健太の3シーズンの成績(先発数、勝敗、投球回)
2013年 26試合15勝7敗、175回3分の2
2014年 27試合11勝9敗、187回
2015年 29試合15勝8敗、206回3分の1
こんなに大きな穴が開いたら今季、勝率5割にも届かなかった(60勝62敗3分け)広島は来季、逆立ちしても勝ち越せない、と考える方が普通だろう。
一方の黒田は…
2015年 26試合11勝8敗、169回3分の2
…とこちらも来季、日米通算200勝に向け絶対に”続投”してもらわないとチームもファンも困ることになる。
2013年に25試合に先発して10勝10敗、163回を投げた大竹が巨人にFA移籍した際は、新人王の大瀬良が26試合に投げ10勝8敗、151回を投げその穴を見事に埋めた。
一方で期待された野村祐輔は前年149回3分の1を投げたのに104回3分の2に止まり、さらに今季は87回3分の1と2012年の新人王は右肩下がりの傾向にある。
逆に2014年に先発4試合で合計60回しか投げていなかった福井は今季131回3分の1を投げ9勝6敗と野村祐輔の分を補う活躍を見せた。
また2014年に23試合で9勝8敗、131回3分の2を投げたバリントンの穴は新加入のジョンソンが28試合14勝7敗、投球回数194回3分の1でお釣りがくる数字を残した。
…こうしてみていくと、前田健太という大きな柱があることで、先発陣の顔ぶれが変わっても何とかその戦力を維持(向上ではない)できていたことは明白である。その大エースが仮に海を渡るとなれば、広島はきょうのドラフトで最低でも大瀬良、野村祐輔の1年目に匹敵する即戦力投手の指名に成功することが必要で、大瀬良が先発に戻っただけではカバーしきれない。
…そう、今度のドラフトで失敗は許されないのである。