交流戦最下位に沈む広島の起爆剤として一軍に初めて呼ばれた高卒2年目の高橋が只者ならぬ存在感を見せつけた。
ウエスタン・リーグトップの10本塁打の肩書を引っさげ、いきなり八番DHでスタメン出場。結果は4タコに終わったが、ただの”タコ”ではい、いや、黄金の錦鯉になる可能性を十分に感じさせるデビュー戦になった。
その凄さを語るのに欠かせないのが独特の大きな構えから繰り出すフルスイングのすさまじさ。4打席合計でスイングした回数は実に13度にものぼり、その大半は体がねじれんばかりの豪快なものだった。
第1打席は左腕の楽天・川井に対し5球目でレフトフライ。角度は良かったがバットの先だった。
第2打席は二番手・宮川の2球目で三邪飛。
第3打席は宮川と2度目の対戦で8球目まで粘りエンドランがかかった9球目で空振り三振に倒れた。
第4打席は3人目の永井と対戦。ボールカウント2-2からの7球目、アウトハイのストレートを読み切ってスイングしたかに見えた一撃は高さが外れていた分、高く上がって大きめのライトフライになったが、もう少し低く来ていればライトスタンドまで持って行っていた可能性もある。
4打席の中で何度もファウルを放ち、相手投手に23球も投げさせていることからも、一軍のスピードやキレを初めて経験してもしっかり見極めていた様子がうかがえる。
ウエスタン・リーグでは左投手は打率4割近く打ち込めていても右投手との対戦では思うようにスイングできないケースも多かった。
しかも前を打つ廣瀬が3安打したため、普通なら送りバントのケースが2度あった。
それでも広島首脳陣は高橋にスイングするチャンスを与え続け、高橋もそれに応えた。
背番号25はかつて、広島でホームランキングのタイトルを獲得した新井貴浩(現阪神)の系譜を引き継ぐ。その前が金本、その前は江藤…。
歴代四番を”露地栽培”で育ててきた広島のこのグラウンドで、またしても無限の可能性を秘めた小さな芽が顔をのぞかせた。13度のスイングを刻み込んだ、その手のひらに残る感触とともに…。