DeNA先発三浦に7回まで封じられ完封負けを喫した広島。連勝が4で止まった試合の中で内容的にはそちらに目が行きがちだが、残りのシーズンを考えた場合、ポイントは別にある。
広島の野村監督は五回に福井の代打に天谷を送った。福井は4回2失点で降板となった。失点はいずれも犠飛で許したヒットは2本。死球に自らの悪送球、初回いきなり先頭打者への四球など、確かに”マイナス査定”のオンパレードだったが、本当にコレでよかったのか?
福井は中3日登板で前回、17日の巨人戦(マツダ)は二回に3点を失いそこで交代指令を受けている。それ以前は3年ぶりの完投勝利を”起点”に3連勝。バリントンを抹消し、前田健太が長期低迷期に入り、大瀬良も不安定という状況下で、球威にかけては球界トップクラスの福井の右腕を”もてあそんで”いる余裕はあるのだろうか?
仮に福井が同じ過ちを繰り返している、というなら堂林はとっくにスタメン落ち、いや二軍落ちだろう。今夜も三浦のスライダーに徹底的にやられ、いったい何度空振りしたか?右投手の対戦打率が2割そこそこでスタメンでいられるはずはないのだが…
8月10日 携帯サイト「田辺一球広島魂」コラム
「ど真ん中への開き直り」
福井の113球がチームを今季初の同一カード3連敗から救った。そして、負けていれば最大で12もあった貯金が1になるところだった。
そんな小手先の計算をしがちな関係者が多い中で「失うものは何もない」と開き直った時の快速球右腕はたくましかった。
7月29日のマツダスタジアムで3年ぶりに阪神打線を相手に完投勝利を挙げた。満員のスタンドからの温かい拍手に「これからも一生懸命頑張るんで応援よろしくお願いします」と約束した。
自分の言動で自分をこれまで縛ってきた。「四球に気をつける」と報道陣に話した翌日に四球連発でKO降板することも珍しくなかった。
それは「…してはいけな」というマイナスの発想が原因だった。四球を怖がっていれば当然、腕の振りは鈍くなる。
だから今回も「逃げない気持ちで向かって行く」と宣言した。3日の東京ドームでも7回5安打2失点。当たっていないとはいえ巨人打線にも「開き直り」投法が通用した。
相手のバットを詰まらせることができれば打球野手の正面に飛ぶ。2試合で5つの併殺打を奪うことにも成功して、テンポのいい投球がバックに与える影響の大きさも改めて実感した。
前回の対戦では33球で序盤3回を投げ終えたが同じくアウトを9つ取るのに50球を要した。ヒットはシングル3本で無四球だった。
四回は一死から福留に四球を与え伊藤隼に右前打されて初めて得点圏に走者を背負った。最後は鶴岡を145キロ高目のボール球で空振り三振に仕留めた。4対0。3連勝を目論む相手ベンチの鼻っ柱をへし折った。
ところが五回は代打の新井良太と一番・上本に連打され無死一、二塁となったことで「開き直り」より「うまく切り抜けたい」気持ちが頭をもたげかけた。一死から鳥谷に四球を与えて満塁になり、四番・ゴメスにはフォークを投げてうまくゴロを打たせたのに併殺崩れの間に1点を返された。
さらに福留にも四球を与えて再び満塁。代打・新井貴浩にはストレートを思いきり投げ込んだがほぼ真ん中に入り打球はレフト前へ。2者が生還してとうとう1点差になった。だが続く伊藤隼にもフルカウントからためらうことなく144キロを真ん中に投げ込んだ。相手のバットが空を切った。5回3失点。欲を言えばキリはないが、試合の主導権は渡さなかった。
味方打線が奪った4点は初回、プロ初登板の阪神ドラ1左腕・岩貞の立ち上がりを攻めたものと四回、梵の三塁打に相手のミスを絡めた得点だった。
一日で四番に戻ってきたブラッドは初回のチャンスで空振り三振.同じく得点圏に走者を置いた七回にも空振り三振、九回の先頭打者でも空振り三振だった。
八回にも3点を加えて結果的には7対3で阪神に一矢報いることはできた。ただ「勝つには勝ったけど、エルドレッドのところが…」と野村監督も今後についての課題をもう一度口にした。
マツダスタジアムに戻ってのヤクルト、巨人6連戦。スタンドを埋め尽くすファンとともに開き直って挑んでいく姿勢が試される。