広島の福井が強打のヤクルト打線を7回3安打無失点に抑え、チームの延長十一回サヨナラ勝ちを演出した。
野村監督からここ2試合連続で早々と交代を告げられた福井は「今回ダメなら二軍」と首脳陣から最後通牒を突き付けられ、あとがない状態で先発マウンドへ。
そして最初のバッター、山田に対していきなり3球続けてアウト―に146キロの真っ直ぐを投げ込んだ。判定はストライク、ストライク、ボールだった。
実はこのアウトローへの快速球、今季プロ6年目で中継ぎとして大ブレークした中田が勝負球として使い、その投球スタイルを短期間のうちに確立させることに成功した。
福井は学年でいえば3つ下に当たる中田の姿から”ヒント”を得て、そして試合前にも2人でいろいろと話込んだという。そんな福井について中田は「きょうは相当気合いが入っていた」と”証言”する。
セ・リーグ打率2位の山田に対して4球目もストレート。ファウルにされると5球目にフォークを投じて左飛に仕留めた。
この1打席の勝負で福井のこの試合での投球スタイルが決まった。ストレートが走っていることを確信して、ファウルでもカウントを稼ぎ、フォーク、スライダー、カットボールで早いカウントから遊び球なしで勝負に行った。
初回、川端にライナー性の打球をライト前に打ち返された。しかし残りのヒット2本はファーストベースに当たった雄平の二塁打と、高く弾んだ同じく雄平の内野安打だけ。山田、バレンティン、畠山の右打者3人を9の0に封じ込め、改めてその剛腕ぶりを証明した。
打たれれば二軍…、バックアップ要員の今井も二軍から昇格してモロに重圧がかかる中での福井の102球には本人の言葉通り「向かっていく」気迫がみなぎっていた。
3年ぶりの完投勝利を飾った7月27日、マツダスタジアムの満員のスタンドに向け「これからも頑張る」と宣言した福井はその1カ月後、お立ち台こそ勝利投手の中田とサヨナラ打の石原に譲ったものの、ファンとの約束をきっちりと果たしたことになる。