トップ画像は横川本通り(2020年10月19日撮影)
ひろスポ!に「横川駅界隈をウォーキングがてら、見て回りました。”アンジュヴィオレ広島を応援しましょう”、”存続に向け、みなさんの力で…”みたいなポスターや横断幕などがなかったけど、どうなのか?」という情報が少し前に寄せられた。
中国新聞に「アンジュ存続へ向け奔走」「アマで運営企業傘下も視野」「J1広島が翻意」などの見出しの「スポーツ最前線」連載1回目の記事が出たのが9月18日。そこには随時連載します、と明記されている。
この記事に関してはサッカー関係者の間で「これじゃサンフレッチェ広島が悪者にされているのでは?」の声が上がった。”大反響”のあった記事、と言ってもいい。そうでなければ広スタ特命取材班は動いていない。もちろん両者に肩入れすりような報道はしない。事実だけを記事にする。
中国新聞は第2弾を報じていない。
冒頭の記事の内容の問題点については、すでにひろスポ!で取り上げた。
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「アンジュヴィオレ広島存続に向けて」ホームページ発表、その中に「詳細は中国新聞記事をご覧ください」しかし「どうしてあんな記事を書いたのか?」の声上がる
(2020年9月18日掲載)
hirospo.com/pickup/68203.html
で、もう1カ月以上経つ。
実際にJR横川駅界隈と商店街を歩いてみた。アンジュヴィオレ広島の幟やスケジュールを告知するポスター以外に特別なものを見つけることはできなかった。
アンジュヴィオレ広島がかつて情報発信スペースとして使用していた角地の店舗は閉鎖され、前に置かれたベンチは憩いの場(毎日ここで会話を楽しむのだそうだ)になっていた。
シャッターの奥にかつてはアンジュヴィオレ広島と街の人たちを繋ぐ空間があった
ポスターを指さしながら広スタ特命取材班に語る店主
また、そばの衣料品店の主はポスターを指しながら「アンジュは最初からずっと応援していますよ、でも今どうなっているのか分からなくて…」と話した。
9月18日掲載の中国新聞記事について、ひろスポ!ではサンフレッチェ広島がWEリーグ参戦を発表した会見の場で直接、署名記者にこう尋ねてみた。
「読者から”あの記事は本当か?”という問い合わせがあったと聞いているが、記事についてどういう見解でいるのか?」
「アンジュヴィオレ広島の経営を苦しくした大きな要因は大口寄附がなくなったことだが、なぜそれは書かないのか?」などなど…
明確な答えを得ることはできなかった。
中国新聞記事ではいきなり「アンジュヴィオレは当初、WEリーグへの参入を視野に入れていた」と書いてある。複数の県内サッカー関係者や、アンジュヴィオレ広島の組織内部でその経営に関わりNPO法人総会にも出席してきた関係者からは「そんな話は聞いていない」という声が上がっている。
また記事には「(アンジュヴィオレ広島運営のNPO法人の)三谷光司事務局長が、J1広島から協力しないことを今月になって告げられたことなど…」と書いてある。だから「J1広島が翻意」の見出しになった。
サンフレッチェ広島の仙田信吾社長はWEリーグが行った多くの関係者やメディアが見守るリーグ参加11団体のトップによるリレー会見(10月15日)でこう述べた。
「広島で女子サッカーを根付かせるために手弁当で奮闘してこられたアンジュヴィオレ様にも私たちが名乗りを上げたことには喜んでいただきました。私たちはイチからのスタートになりますが、懸命に走って参る所存であります。どうぞよろしくお願いいたします」
そのあと広島市中区のホテルであったクラブの会見では冒頭、WEリーグ参入までの経緯について次のように説明した。
「WEリーグに正式承認されましたことは、まず地元で女子サッカーの普及発展にご尽力してこられた広島県サッカー協会女子委員会のみなさま、各種別のチーム指導者、選手、それを支えていただいた保護者のみなさん、多くの関係者のみなさまに心より感謝を申し上げます」
「さらには9年間に渡って女子サッカーの発展に努力をされてきているアンジュヴィオレ広島のみなさまと、それを支え続けてこられている横川地区のみなさまに改めて感謝と敬意を表するものでございます」
「これまでの経緯を簡潔に申し上げます。今年の初め、女子のプロサッカーリーグに手を上げて欲しい、このお話をアンジュヴィオレ広島様からいただきました。私どもはその時点では参入する意思のないことを実はお伝えいたしました。さたにはコロナ禍で女子サッカーのプロ化がどうなるのか、心配しながら見守っていました」
「それが今年6月、新しいリーグを立ち上げることが決まりました。来年秋の開幕を目指す、その上で申請は7月末が締め切りだとたいへんきつい日程が提示されました。私たちは、アンジュヴィオレ様が女子サッカーに手を上げない場合、トップリーグに広島の名前がなくなることをたいへん危惧いたしました。サンフレッチェ広島が手を上げないと女子サッカープロから広島の名前が消えてしまうことをたいへん懸念いたしました」
「もうひとつは先ほど久保会長からもありましたように、男子Jリーグもオリジナル10として最初から参加しています。その歴史をたいへん重くとらえました。先ほどWEリーグの全体の記者会見でも申し上げましたが、女子サッカーについては私自身もそういうイベントに関わった鮮烈な”映像”がございます」
「それは被爆70年の5年前、エディオンスタジアムであの戦火にあったアフガニスタンの国を代表する女子サッカー選手たちがアンジュヴィオレ広島さんと親善試合をいたしました。14対0でアンジュヴィオレが圧勝しました。しかしアフガニスタンの選手たちは、自国でサッカーするのはまさに命がけ。それが満面の笑みを浮かべ懸命にひたむきにゴールに食らいついていく。その姿勢こそが広島に必要な、広島に求められている平和な、女子のサッカーの姿だと思いました」
「これから3年数カ月後には平和公園、平和資料館、原爆慰霊碑、原爆ドームの延長線上にサッカースタジアムも完成、作っていただきます。そこには平和の象徴であるこうした女子サッカーの姿も絶対に必要である、男子も女子もサンフレッチェ広島が担っていきたいということであります」
質疑応答では「アンジュヴィオレ広島との今後の関係性」を聞かれ、仙田信吾社長は次のように答えた。
「冒頭で申し上げましたようにアンジュヴィオレ広島さんが手弁当で、ボランティアで横川地区を中心に女子サッカーの文化を作り育成普及していくために奮闘してこられたことに対して心より敬意を表し、リスペクトしています。その志を引き継ぎたいと皆さまに申し上げ、そして女子プロサッカーリーグにアンジュヴィオレ広島ではなくサンフレッチェ広島として手を上げて欲しいというご要望に対して我々ずっと悩みながら、しかし6月の時点で受けますと申し上げました」
「その時にアンジュヴィオレ広島さんには本当に喜んでいただきました。その時にはトップチーム監督と選手、アカデミーの監督、選手は申し訳ないのですけれども引き受けることはできません(とお伝えしました)。女子プロリーグは日本代表クラスが参加してくるトップリーグです。そこにチャレンジしていくためには、やはりイチからやらなければいけないことをご理解くださいと伝え納得していただきました」
「アカデミー、いわゆる育成の高校生アンダー18と中学生アンダー15について、男子のサンフレッチェユースもそうですがもうプロを目指す集団です。非常に厳しい規律の中で勉学に励みながらプロを目指す。そういうレベルのユースやその前提となるジュニアユースを育てていくためにはやはりイチからやらないといけません、ということを申し上げました。それと普及のサッカースクールについてはアンジュ様も頑張っておられる。それは引き継がせてもらえますよと正式に申し上げております」
以上のように、9月18日付紙面で中国新聞が報じた内容と、サンフレッチェ広島仙田信吾社長の発言にはシンプルに考えて異なる点がいくつも存在する。
それはなぜなのか?
横川を見て回った最後にアンジュヴィオレ広島の事務所をアポなしで訪ね、関係者に直接聞いてみた。しかし、明快な答えはここでもなかった。
なお同記事によればアンジュヴィオレ広島は存続に向け「10月末までスポンサーを探す」となっている。10月19日の時点では「まだ何も決まっていません」がNPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブの公式の見解、と受け止めて間違いなさそうだ。(ひろスタ特命取材班&田辺一球)
商店街の掲示板
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以下、10月26日加筆
10月25日に、ひろスポ!に次のメールが届いた。
……
ひろスポ様
横川に住んでいる者です。
10月19日の記事の写真の、広島銀行の方に進んで、ラーメン屋の辺りまで出た、頭上に張ってあるアンジュヴィオレの横断幕に「絶対存続」だったか、文字を添えてあるものが、一応はあります。少し前までは、別の横断幕だったかもしれません。
……
10月26日、広スタ特命取材班では現地に行き、ご指摘のあった横断幕を確認した。ひろスポ!では、読者のみなさまからの情報を引き続き募集中!
10月26日撮影、横川本通り入り口の「絶対存続アンジュヴィオレ広島」横断幕