広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)にたなびく日本とウクライナ国旗
2月20日夜、人権問題ほか多くの大事なことを置き去りにしたまま開催された北京五輪が閉幕した。
五輪開会式前日の2月4日、中国の習近平国家主席はロシアのプーチン大統領と北京で会談し、NATOのさらなる拡大に反対するとした共同声明を出した。
「両国は、政治や軍事による同盟が他国の安全を犠牲にして一方的な軍事的優位性を追求することは、国際的な安全保障秩序と世界の戦略的安定を著しく損なうと考える」という考え方。
そのロシアは五輪期間中、ウクライナとの国境などに巨大軍事力を展開させ、さらには19日、プーチン大統領の指揮の下で核ミサイル部隊などの軍事演習まで実施して見せた。
大惨事(第3次世界大戦)の幕開けの手前の段階…
危機感を募らせる西側諸国は18日から20日まで、各国首脳らが安全保障の課題を議論する国際シンポジウム「ミュンヘン安全保障会議」をドイツ・ミュンヘンで持つというタイミングになった。欧米などから100人超が参加する中、ロシアは1999年以降で初めて代表団派遣を見送った。
英国のジョンソン首相はこの会議の中で「ウクライナが侵攻されれば、その衝撃は世界中に響き渡るだろう。東アジア、台湾にも影響を及ぼすだろう」 と話し、その結果「侵略は得であり、力は正義だ」という結論に至るリスクがあると指摘した。習近平国家主席の覇権主義を念頭に置いたものと思われる。日本にとっては国際問題における対ロシア、対中国の二重の十字架だ…
習近平とプーチンにはシンプルな共通点がある。何だ、かんだ、と西側にいちゃもんをつけるフリをしながら、最初からやりたいことは心の底で決めている。
いろいろな文句を言えば言うほど、西側も見透かす。
今回のウクライナ危機でも、米国や英国の諜報機関などが、片っ端からロシア側の「偽旗作戦(にせはたさくせん)」をあらゆるメディアを使って世界に発信した。
※偽旗作戦…相手が攻めてこないので、自分たちで攻めてきたように見せかけ、相手を攻める口実を作る“せこい作戦”を指す。代表的なものとして知られているのが、日本が1931年(昭和6年)9月18日に“やらかした”柳条湖事件(りゅうじょうこじけん)がある。
満州事変の発端となるやらせの鉄道爆破事件で、日本国内の各新聞は9月19日付の号外で事件勃発を報じ、ラジオも19日午前6時半、「臨時ニュース」としてこれを伝えた。要するに当時のマスメディアは自分たちの新聞の部数を増やしたいがために、日本壊滅の片棒を担ぎ、それ以降も「大本営発表」垂れ流しで国民の戦争への士気を煽り、軍部の意図的な「熱狂」創りに加担した。
こうした愚かな行為が日中戦争、真珠湾攻撃、広島・長崎への原爆投下、日本国土の壊滅と敗戦につながった。
……
欧米に情報戦で先手を打たれたかっこうのロシアは次々に新たな「偽旗」を上げ、そして北京五輪閉会のタイミングで、日本語に訳すと「軍事技術的な措置」となるウクライナ侵攻、イコール人殺し、抵抗する者皆殺しの準備を整えた。
広島とウクライナ。
先ごろ、広島文化学園大学芸学部(広島市安佐南区)の学生らがウクライナの専門学校生とオンラインで交流会を行った。
1986年4月のチェルノブイリ原発事故という悲惨な過去を持つウクライナと被爆都市広島。ウクライナでは加えて、2014年2月(どうやら“やる”なら2月のようだ)に始まったのロシアによるウクライナのクリミア半島への侵攻以来、戦闘による死者が万の単位で出ているがたぶん実数ははっきりしない。
共通の感情と意識、平和を希求する両国の学生の交流は意義深い。福山平成大学(福山市)の「広島スポーツ学」、「スポーツとメディア」の授業でも年末から年始にかけて「ウクライナ危機と広島」は大きく取り上げられた。
広島県民がどれほど記憶しているかは定かではないが、2021年6月10日、広島市安佐南区の広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)では、なでしこジャパンとウクライナの国際親善マッチがあった。東京五輪を控えたなでしこジャパンが8-0で大勝。ウクライナの指揮官は「こんなクソ暑い中ではコンディションもへったくれもない」と愚痴ったほどだった。
だが、平和あってのスポーツ。あの当時、ウクライナの人々も戦況がまさかここまで急速に悪化するとは思っていなかったはずだ。戦禍は突然、やってくる。極論すれば、あの8月6日、自分たちの頭上、地表から高さ600メートルで巨大な破壊エネルギーと化す核分裂反応が起こることを予期した市民はいただろうか…
プーチン大統領は何だ、かんだと言いながら、けっきょくは自分が一番かわいいのだろう。
2021年1月、「プーチンのための宮殿」と題する動画に世界中が注目した。この動画を暴露したのはロシアの反体制派指導者であるアレクセイ・ナワリヌイ氏の関連団体。ナワリヌイ氏は今、悪名高き刑務所で服役中。おそらくいつ殺されてもおかしくない状況にある。
プーチン大統領のせこさ、が改めて示されたのがドイツ第2の都市、ハンブルクからの豪華クルーザー脱出劇だ。
時価1億ドル(およそ115億円)といわれる「グレースフル」号は数カ月もの間、ハンブルクの造船所に停泊し改装中だったのに、急きょ、バルト海に向けて出航しロシア領域に舞い戻った。
「ロシアがウクライナに侵攻した場合、制裁のひとつとして同号が押収される可能性が高いため」とドイツメディアの「ビルト」は伝えている。「ビルト(光景)」はハンブルク生まれのドイツ最大のタブロイド紙。プーチン号が焦ってハンブルクをあとにする「光景」が目に浮かぶようだ。
自分の財産のために、ウクライナ侵攻を考える?プーチン大統領の行いがもしも本当に正当化されれば、ジョンソン首相が危機感を抱くとおり、次は習近平発の台湾侵攻が現実のものとなる。香港の民主化を骨抜きにして、着々とその準備を進める中国はとうとう“無事”北京五輪も終えてしまったことになる。日本のメディアは五輪中継に現を抜かしている場合じゃないだろうに…(ひろスポ!広島スポーツ100年取材班&田辺一球)
※この記事はメディアのありようを中学・高校生、大学生のみなさんに考えてもらうため、わかりやすい(極端な)表現が使われています。
以下、ひろスポ!ハンブルク取材班撮影
ハンブルク港に退役潜水艦、早朝6時撮影、非情に寒い…
ハンブルク港の修理ドッグ
2017年1月にオープンした巨大開発事業、ハーフェンシティ地区にあるコンサートホール、エルプフィルハーモニーハンブルク(中央奥)「エルプ」はハーフェンシティの前を流れるエルベ川のこと
建設記念の案内もある
日本から株式会社永田音響設計(東京都文京区)が参画した
エルプハーモニーから再開発地区を見下ろす、水害対策で建築物の”足元”に様々な工夫が凝らしてある
まさに水生都市…6つの川が流れる広島市は大いに参考にすべきだ
運河に面した倉庫街は世界遺産
倉庫街夜景
エルベ川の氾濫対策で高い位置に動線が張り巡らされている
ハンブルクのナイトシーン…
アダルトショップは堂々と明るい雰囲気…
見せ方もスポーツ用品のよう
ドイツの新聞
ひろスポ!関連記事
真珠湾攻撃から80年、その時広島では旧広島市民球場跡地で「対米英宣戦必勝広島国民大会」も暗転、大和撃沈、原爆投下、カープ誕生…そして2022年1月平和の軸線で新サッカースタジアム着工… | 【ひろスポ!】広島スポーツニュースメディア (hirospo.com)
(2021年12月8日掲載)
中止となった広島新サッカースタジアム起工式1月26日は「サッカーの日」、似島と戦争と平和と日本サッカー100年の歴史 | 【ひろスポ!】広島スポーツニュースメディア (hirospo.com)
(2022年1月21日掲載)
東京五輪で金字塔を…と同時に森保監督率いる五輪代表は長崎・広島のピッチに立ち世界発信を! | 【ひろスポ!】広島スポーツニュースメディア (hirospo.com)
(2017年10月14日掲載)