画像は矢野雅哉(今秋キャンプから)
広島東洋カープ契約更改(11月26日)
黒原拓未 3400 +2000
矢野雅哉 5300 +3550
(単位は万円、金額は推定)
カープOB会長も務める大野豊さんの目は確かだった。
あとからだったら、どうとでも言える。大事なのは将来起こり得るであろうことを事前に口にする、または示唆すること。ひろスポ!は常々、そう心掛けている。
一軍投手コーチやヘッドコーチ、アテネ五輪コーチも務め、指導者としても卓越した目を持つ大野豊さんは、「今年の黒原はいいよ!」とキャンプ視察時点で太鼓判を押していた。24番を特別視した訳ではない。その投球スタイルから見て取れる安定感が、各段に増していたのだ。
3月3日、冷たい風の吹き抜ける倉敷マスカットスタジアム。先発のトーマス・ハッチに代わって三回からマウンドに上がった黒原拓未は立ち上がりわずか11球でアウト3つを奪うと、続く四回は辰己涼介を真っすぐで二ゴロに、浅村栄斗を内角チェンジアップで見逃し三振に、島内宏明を低目の144キロで見逃し三振に仕留めた。それぞれ推定年俸が8000万円、5億円と1億2000万円。計7億円を手玉に取った。
五回は2安打され一死一、二塁となったがわずか7球で後続を断った。一番からの六回は代打・阿部寿樹に四球を与えたものの、やはり17球で片付けた。
この時すでに24番は“変わり身の術”を会得していたのだろう。力の入る場面で昨季まで何度となく見られていた“暴発”球もなくなっていた。
キャンプで取り組んできた成果を実戦で試して自分のモノにする。理想的な流れだ。ただ、オープン戦での出番はこれが最後になった。開幕日は二軍…ところがその翌日(3月30日)、右肘の張りを訴えた森下暢仁の代役として出場登録され開幕2戦目のDeNA戦(横浜スタジアム)に先発した。そしてわずか3球で危険球退場となった。“暴発”球再発?否、さすがに心の準備ができなかったのだろう。
2度目の先発となった4月7日の中日戦(マツダスタジアム)では5回3安打1失点、2戦2敗となった。
それでも初戦でいきなりの頭部死球で内角を突きづらいはずなのに、三者凡退のイニングが3度あった。だから新井貴浩監督は配置転換で様子を見ることにしたのだろう。それが結果的には53試合4勝3敗3ホールド、防御率2・11の成績につながった。過去2シーズンでは22回1/3、防御率8・87だった。
特に9月。チームが悪戦苦闘する中、13試合も投げた。驚くべきはその球威がぜんぜん落ちなかったこと。40度近くまでにもなった酷暑の広島の影響をモロに受け、野手も投手もヘロヘロになる中、涼しい顔で?与えられた役どころを貫徹した。
ひろスポ!はシーズン半ばから、その”奮投”ぶりを見るにつけ「給料2倍」「給料3倍」でお願いします!とつぶやいてきた。
黒原拓未が“給料3倍”に届かなかった代わりに?矢野雅哉が3倍増をクリアした。
ショート小園海斗、サードに、マット・レイノルズで開幕戦を迎えた内野陣はたったの2日しかもたず、開幕6戦目でショート矢野雅哉、サード小園海斗が試された。
「レギュラーを取る」と宣言していた矢野雅哉にとっては千載一遇のチャンス!5月7日からは、この三遊間で固定され「ショート矢野」は期待通りの守備力で勝利に貢献、やがてその打撃力もスタメンに相応しいものになり始めた。
「打率・280なら文句なし!レギュラー」(朝山東洋打撃コーチ)
それが3年目の昨季、93試合119打数で22安打、打率・185だった矢野雅哉に与えられた“テーマ”だった。まだ課題とするには実力不足、と見られても仕方ない。なんせ実態と目標値には約1割の差があった。
2月、朝山東洋コーチのトスでロングティを繰り返す矢野雅哉は、自身に適した打撃スタイルを模索していた。井端ジャパン(3月6、7日に京セラドームで欧州選抜戦)招集が確実視されていた田村俊介からも助言を受けるなど、とにかく貪欲にトライした。
だが、矢野雅哉がオープン戦でスタメンに起用されたのは3月20日の西武戦(ベルーナドーム)が最後。しかも九番セカンドだった。そのあとの仕上げのソフトバンク3連戦では「三番ショート小園」は固定され、ラスト2戦は「四番サード・レイノルズ」。
ひろスポ!では当初から“シャイノルズ”の打力に疑問を投げかけてきた。過去孤記事を見れば分かる。レイノルズに至っては6月28日に契約解除となった。そんなポンコツを四番に据えねばならないほど、今季のチームは人材不足であり「龍馬の抜けた穴」を埋めることなど、とてもムリだった…のである。
矢野雅哉はそんな“ラッキー”を着実に生かしたことになる。
そして打席を重ねていく中で、ファウル打ちのためのファウルから、ヒットゾーンに強い打球を返すためのファウル打ちへと進化を遂げ、最終的には戸郷翔征や高橋宏斗のフォークも、菅野智之のスライダーもフォスター・グリフィンやアルベルト・バルドナードの155キロ超えもヒットにする術を身に着けた。
矢野雅哉の月別別打率と出塁率
4月 ・227 ・346
5月 ・264 ・276
6月 ・215 ・288
7月 ・267 ・343
8月 ・241 ・289
9月 ・304 ・366
月別打率は上がったり下がったりまた上がったり…6月の打率が・215なのに出塁率が・288なのは四球を多く選んでカバーしたからだ。矢野雅哉の38四球は野間峻祥のチーム最多41四球に次ぐ。
今秋のキャンプではその“術”に肉付けするために、体重を増やし強い打球を打つことを目指しバットを振り続けた。ゴールデングラブ賞をこれからも続けていこうと思えば、試合に出続けて打ち続けるしかない。過去3シーズンで35安打、今季はイッキに112安打、打率・260で“ノルマ”まであと「2分」。とはいえ、レギュラーを張るには150安打クリアを3、4年続けることが条件だ。
今季の左右別対戦では右投手が打率・268、左投手が同・248。その差を埋めつつ全体を上げる必要がある。今の上昇曲線をキープできるかどうか、それは本人しだい…(ひろスポ!取材班&田辺一球)
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