画像は二葉山峠越えの地点で拡幅工事を待つ市道(画像手前)、後方には広島駅周辺の高層マンションなどの風景が広がる
広島女学院大学はいつ頃から傾き始めたのか?
気になることがあった。
広島は土砂災害警戒区域が国内で断トツに多い危険な自治体である。広島女学院大学のキャンパスが広がる牛田山は花崗岩(かこうがん)の山で表面は風化し、真砂土で覆われている。ある大雨の日、大学の施設が点在する裏山から大量の土砂や巨木が校舎の窓や壁を突き破って施設内に大量に流れ込んだ。複数個所で土砂崩れが発生した。
土と木の匂いが部屋や廊下に充満する異様な光景がそこには広がっていた。土砂はキャンパス内だけでなく正門を越えてバズ道路にまで及んでいた。惨憺たる状況と言っていい。
だが、この災難が表に出ることはなかった。
普通なら被害状況に応じて、学生らも片付けたり、復旧復興へ向けた過程が何らかの形で明らかになるはずだ。それを良しとしない、それが大学特有の「閉鎖性」。なるべく世間の目をキャンパスの中に向けたくない理由があったのだろう。
この連載では湯崎英彦知事を散々、叩いてきたが、当然ながら組織のトップが判断を誤ると、広島女学院大学のように取り返しのつかないことになる。戦後、広島の人たちから長らく親近感を持たれ、多くのアナウンサーを輩出し、広島の顔、世界の顔でもあるサーロー節子さん(93)の母校でもある、その格別なブランド力におんぶにだっこ、だとこうなってしまう。
気づいた時には手遅れ。それは戦前戦後、国内有数の教育県として知られてきた広島の、教育環境の様々な要因による弱体化、悪化にも重なる。山積する教育課題を考えれば、広島に無知な平川理恵氏なんて呼んでる場合じゃなかったはずだ。そんな見てくれ重視の湯崎県政がそのまま「転出超過4年連続全国ワースト」につながった。これまた、気づいた時にはもうほとんど重篤な状況で、「中四国の中心、広島」は過去の話となり、他県の人たちから「広島のようにはなりたくない」という目で見られるようになった。
ところで、ひろスポ!取材班は、小学生の頃から何度となく牛田山を歩いてきた。ゆえに、その地理は熟知している。
北側から広島駅のある南側へと、牛田中学校のある神田山、牛田小学校の裏手にある見立山、さらには牛田側と、JR芸備線が走る中山側を分ける尾長山、そして広島駅裏の光町・二葉の里エリアに接する二葉山と続く。この一連の山は広島市東区にとって大きな財産であり、今後はさらにその存在を確たるものにする必要があるだろう。
二葉山と尾長山の間を抜ければJR広島駅北口から広島女学院大学まで歩いていける。実際、このルートで犬の散歩をする女性もいる。全行程2キロ弱の峠越えだ。北口や南口と広島女学院大学を結ぶバスルートより距離は短い。
この市道はもう何十年も拡幅工事が言われては先延ばしになってきた。もしもこのルートが整備され、北口-広島女学院大学のマイクロバスが運行していれば、利便性は各段に向上していただろう。実際、今も拡幅工事が徐々にではあるが進められている。
その中間地点よりやや駅寄りにあるのが広島桜が丘高校だ。1901年開校の私立松本学校がその前身。1968年に広島第一女子商業高校になり、1979年4月に今の校名となり普通科が設置された。2004年には普通科男女共学になった。同校を一躍有名にしたのが教育系ユーチューバー桐原琢氏の副校長着任!大卒1年目、23歳の挑戦として話題になった。
市道から学校レベルまでの高低差をショートカットでつなぐ生徒専用エスカレーターが整備されると同時にこの付近の市道は拡幅された
広島桜が丘高校
この間に学校側では市道と学校の高低差に配慮してショートカットでつなぐ「生徒専用エスカレーター」も整備した。HPには広島駅から「徒歩12分」とある。
こうした一連の動きは、広島桜が丘高校よりさらに古い1886年創設の広島女学院大学の定員充足率が右肩下がり向かう時期と重なる。尾長山を挟んで北(広島女学院大学)と南(広島桜が丘高校)で真逆の結果になった。
広島第一女子商時代の生徒は靴の踵を踏み、長いスカートに茶髪ロングの厚化粧で「ビー・バップ・ハイスクール」(きうちかずひろ作、1983-2003)を地で行っていた。広島女学院大学に大勢の「お嬢さん」が通っていたころの話だ。今ではスマートな男女が元気に「桜が丘」の坂を上がっていく。
似たような立地にありながら片方は潰れかけ、片方はマスメディアにも頻繁に取り上げられるようになった。
女学院の失敗は「女学陰」になったことにある、とひろスポ!はそう考える。やはり大事なのは組織のトップのありよう、そして開かれた場であること。二葉の里の新病院問題はぜんぜん開かれた場での話にはなっていない。だから湯崎英彦知事はまた必ず失敗する。(ひろスポ!広島スポーツ100年取材班&田辺一球)
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