3連勝しかなくなった巨人3連戦の初戦。3万人を優に超えるスタンドの声援を受け、マエケンの115球がうなりをあげた。8回を投げ許したヒットは2本だけ。4対0快勝をその手で呼び込み、明日への希望、その先のコイのミラクルへ向けエースはこんな誓いを口にした。
「腕がちぎれてもいいぐらい投げていく」
お立ち台で、そんなことを言う前田健太は初めてだった。今季、巨人戦は5度先発して勝ち星なし。さらに8月の終わりからチームが一番大事な時期に3試合続けて白星を手にすることができなかった。
回りから厳しい目で見られ、厳しい声が飛び交った。9月3日の群馬敷島公園で雨の中、短長3安打され2点を失い、さらに長野にツーランを場外まで運ばれた。雨のカーテンの向こうに消えていくコイの優勝ロード。だが、チームメートたちのおかげで、まだわずかながら23年ぶり逆転Vへの挑戦権は残されていた。
ただあの雨の日のことが強烈な印象として残ったため、長野から始まる初回は慎重の上にも慎重を期した。7球で長野を一飛に取り、続く橋本に四球。坂本を空振り三振に、阿部をニゴロに退けた時には球数は25球を数え、この回だけで15分も投げていた。
しかし二回は7分、三回は5分、四回は4分で3人斬り。五回も5分で片付けた。この4イニングの内訳は内野ゴロ8つ、三振3つ、内野フライ1つ…
六回、先頭片岡の打球をセンター丸と接触しそうになったロサリオが捕り損ねた(記録は二塁打)が「(先制)ホームランを打ってくれたんで…」と気にも留めず後続をピシャリ。ネット裏でスピードガンを片手に見守るメジャースカウト陣も納得顔のピッチングで、七回は坂本をインハイ148キロで空振り三振、阿部はスライダーで見逃し三振、亀井は三ゴロと回を重ねてもまったく付け入るスキを与えなかった。
昨年の今頃はクライマックスシリーズ初出場へ向け、チーム一丸、無心で走り続けていた。そして9月4日、やはりこのマツダスタジアムでDeNA打線を相手に8回無失点で12勝目をあげたあと、お立ち台の前田はこう言った。
「クライマックスに…、行きたいです!選手一丸となって頑張っていきます。カープファンのみなさん、セ・リーグで一番の力をください。よろしくお願いします!」
もし、同じ調子でいくとしたら「必ず優勝!ファンのみなさん、一緒に戦いましょう!!」だったろう。だが、そんな呼びかけは今回、封印された。
あす、あさっても巨人のマジック減らしを許さず、中5日でDeNA戦のマウンドのあともう一度お立ち台にあがるとすれば…
その時、スタンドの赤に混じって「必ず優勝」のプレートがいくつも揺れる風景を見渡しながら、マエケンはどんな呼びかけをするだろうか?
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