交流戦6勝6敗と勝率5割に戻した広島は、しかし通算では25勝32敗の借金7でセ・リーグ最下位からなかなか脱出できないでいる。
しかし福井優也の活躍がなければもっと苦しい状況になったいた。福井は前日の楽天戦で7回3安打1失点で勝ち投手。5月10日の阪神戦(甲子園)以降、先発5度で4勝を荒稼ぎしてとうとう黒田博樹と並ぶチームの勝ち頭になった。
エース前田健太はここまで11試合4勝4敗、防御率1・76と抜群の内容なのに完投負け3つと打線との歯車がかみ合っていない。
黒田は10試合5勝2敗、防御率2・94。「男気」人気に相応しい活躍を見せている。
しかし福井は8試合で5勝1敗、防御率2・83。勝率8割3分3厘で黒田の7割1分4厘をも上回る。
福井は2010年ドラフト1位右腕。2011年には8勝10敗でシーズンを通してローテーションを守った。
しかし12年2勝3敗、13年0勝2敗、14年4勝5敗。この4シーズンは野村前監督の5シーズンと重なる。
野村前監督は試合中、福井に限らず3ボールになる回数をメモして試合後の反省材料にしていた。だが、この方法は「荒れ球」が持ち味の右腕から「球威」を奪い、やがて先発失格の烙印へと繋がった。
緒方監督にバトンタッチされても福井が厳しい立ち場に追いやられていることに変わりはなかった。
「今年結果を出さなければ終わり」と覚悟を決めて臨んだシーズンではあったが、エース前田健太に加え、黒田、新外国人左腕ジョンソン、それに自分よりあとから入ってきた二人のドラ1新人王、野村祐輔と大瀬良大地…。若手台頭もあり、ローテーション候補はオープン戦の時期には目白押しだった。
そんな状況下でも確実に実績を踏んだ福井に先発の機会が巡ってきたのはシーズン9戦目、4月6日の中日戦(ナゴヤドーム)だった。
結果は6回2失点。勝ち投手にはなれなかったが、「価値投手」になれるきっかけを記すことができた。
2度目の先発は4月17日の中日戦(マツダ)。6番目の先発だからずいぶん登板間隔が空いたが7回を投げてスコアボードにゼロ7つ。「スミ1」を守りシーズン初勝利をマークした。
その次の出番は…
5月3日にやっと回ってきた。が、三回途中4失点KOされた。それまで會澤とバッテリーを組んだがこの日は石原と組んだ。
そこから5試合に投げて4勝を挙げた。途中、5月24日のヤクルト戦(マツダ)で4回5失点KOという日を挟んではいるが、その時の悪い内容を引きずることはなかった。
昨日の福井は1イニングで3暴投を記録した。そのうちひとつはタイムリー暴投で相手に先制点をプレゼントする形になった。
だが福井は「1点ぐらい取られることもある」とそう割り切って後続を断ち最少失点でピンチを切り抜けた。直後の攻撃で會澤が同点タイムリーを放ってくれた。
同じように「こんな日もある…」と例え打ち込まれても気持ちを切り替えることができるようになった。
チームナンバーワン、と言われる球威を武器にローテで活躍できる資質はもともと備えていた。ただ、欠点ばかりを言われたことで長らく長所が消し去られていた。
現時点で福井は47回と3分の2を投げ22四死球。
黒田のそれは64回3分の1で16四死球、
前田健太は82回を投げわずかに18四死球、である。