広島みなと公園、2016年1月撮影。
3/3/3サンフレッチェ広島、久保允誉会長の旧広島市民球場跡地への建設案発表を受けその動きが注目される広島の新サッカースタジアム問題で、広島市の湯崎知事、広島市の松井市長が広島みなと公園案で強行突破することが関係者の話で分かった。
湯崎知事、松井市長に広島商工会議所の深山会頭を加えた3者会談が3月末に広島みなと公園建設案を正式に発表する段取り。
ところが現在、広島商工会議所はこの問題で紛糾している。
商議所会員が登録している部会は全部で7。それぞれの部会で「スタジアム問題」が始まったのは3月1日。これまで深山会頭も松井市長、湯崎知事の「広島みなと公園案」を追随してきたが、実際には討議されていなかった。
7部会は順次、スタジアム問題についての意見交換を進めて行くことになるが、会員からは疑問の声が様々な角度からあがっている、という。
現状は深山会頭にとっては苦しいもので、すでに3つの部会が、宇品候補地でのスタジアム建設自体について問題あり、さらには協議の進め方についても問題あり、の方向で意見をまとめている。
その商議所ビルと、同じ敷地にある旧広島市民球場跡地への久保会長のサッカースタジアム建設案。なんとも皮肉な状況だ。
一方、湯崎知事は3月8日にあった広島県議会予算特別委員会の中でスタジアム問題について聞かれ、久保会長の発表した案には「誤解がある」とこれまでの主張を繰り返した。
「サンフレッチェ広島の経営が成り立たないようなスタジアム使用料になることはありえない」と答弁したが、資金調達方法に具体性を持たせた久保案に対して、まだ誰がどれだけ負担して誰が建てるか、まったく決まっていない湯崎・松井案の方は結論ありき、にしか聞こえない。
また湯崎知事はことあるごとに「前提が異なる」と「前提」を前面に掲げている。その「前提」とは、サンフレッチェ広島前社長の小谷野薫氏も名を連ねたサッカースタジアム検討協議会を指すのだろうが、この協議会、まともな議事録さえ残されていない。ただ、小谷野氏が「ぜひ3万人規模のスタジアムでお願いします」と言った訳ではないことは参加した委員に聞けばすぐに分かる話だ。
今後、県と市は久保会長案の詳細を聞く、としているが、それで事が済むはずもない。
一番大事なことが欠落している。
宇品地区では港湾関係者は当然ながら、地域住民からも「大反対」の声が上がりつつある。それと同時に、広島市民、県民、サポーターは久保会長案のHiroshima Peace Memorial Stadium(仮称)に高い評価を与え、しかも「宇品反対」を唱えている。
サンフレッチェ広島の意見を聞いてこなかったことを認め、その声を聴くなら、市民・県民・サポーターの声も拾い上げないといけない。
両者はふたつでひとつだ。
湯崎知事や松井市長の口から「市民の意向はどうか」「県民の希望はどうか」という話を知りえる範囲で聞いたことがない。
広島県では鞆の浦埋立て架橋計画問題やJR連続立体交差化事業で地元住民らとの話し合いがこじれにこじれている。
このまま「地元住民の声」さえ聞かずに「広島みなと公園」で決定、とした場合は間違いなく新たな火種が生じ、それと同時に紙屋町エリアの衰退が、久保会長の懸案どおり加速する。
仮に広島”でも”そごうも撤退…、という状況にでもなれば、県・市はどう対応するのだろう…呉も福山もみな撤退、平日はガラガラの紙屋町シャレオを引き合いに出すまでもなく広島とて例外ではない。
広島には都市構築、都市再生のためのグランドデザインがない。旧広島市民球場跡地へのスタジアム建設はその起爆剤に十分なりえるはずだ。
そして広島みなと公園へのスタジアム建設は、例えとしては適切かどうかは別にして、たった6年で廃止された「呉ポートピアランド」に重なってみえる。臨海エリアにはそれぞれの特性があり、その特性に沿った用途の選択が重要になる。
それにしても、ユートピアを夢みる時代はバブル崩壊で終わったはずだが…
広島新サッカースタジアム取材班