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2018年11月11日
編集部

城福浩監督のサンフレッチェ広島はどうして勝てなくなったのか?否勝たせてもらえなくなったのか?最大の転機はあの浦和レッズ戦…

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城福浩監督
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監督就任会見で足立修強化部長と握手する城福浩監督(トップ画像)

サンフレッチェ広島がJ1優勝を逃した。

端的に言えばそうなる。

しかし昨年の今ごろ、サンフレッチェ広島は降格危機の真っ只中。11月26日にエディオンスタジアム広島であった第33節のFC東京戦に勝って何とか残留を決めるというありさまだった。

今季を「J2への降格」という立場で迎えた大宮アルディージャは最終節を前に何とかプレーオフ圏内5位をキープ、同じくヴァンフォーレ甲府は15勝1分け14敗で9位、アルビレックス新潟に至っては16位…

それだけを考えればまさに地獄と天国、である。さらにACL出場への夢、アジアナンバーワンの道までも残されている。

 

2018年サンフレッチェ広島を励ます会(サンフレッチェ広島を励ます会世話人会主催)が2月19日、広島市中区のANAクラウンプラザホテルで開催された。政財界関係者、サポーターら455人が集まる盛大な雰囲気の中で城福浩監督は次のようにあいさつした。

本日はこのような会を持っていただき、ありがとうございます。先ほどの(広島城に福があるとの)深山会頭の話、私の名前からしてホームでは絶対に負けられないと…(一同笑)

みなさん、本当にサッカーをよくご存じで、応援をしてくださっているというのは広島に来て、いればいるほど感じています。選手とも、接すれば接するほど、去年の悔しさというものを秘めてプレーをしているということがすごく伝わってきます。

その中でこれまでのいろいろな経験を総動員して、我々スタッフと一緒に、ワンランクもツーランクも上がったチームをみなさんにお見せできるようなシーズンにしたいと思っています。

(湯崎知事の話の中で)メンバーがなかなか決まらないというご指摘もいただきました。これは私はポジティブにとらえています。…というのは、それだけチーム内競争が激しい毎日を繰り広げていますので。

シーズン最後まで11人しか出せないメンバーで頭を悩ませる、18人しかベンチに入れないところで胸を痛めながら1シーズンを過ごせる。このチームは必ず高みに行けると思っています。

毎日のピッチが一番大事だと思っています。選手と一緒に戦っていきたいと思っています。1年間、よろしくお願い致します。

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城福浩監督は今も「毎日が勝負」と言い続けている。

 

サンフレッチェ広島は2月24日のJ1開幕戦で北海道コンサドーレ札幌に1-0で勝利した。そのあとYBCルヴァンカップの3試合も含めて11試合負けなかった。

その間、完封した試合が8度もあり、失点しても1点。11試合で3失点だった。

そこからW杯ロシア大会のための中断期間まで10試合(YBCルヴァンカップ3試合を含む)では5勝4敗。ペースダウンは著しかった。その間の失点は12だから課題は明白だった。

もうひとつ。カップ戦とリーグ戦は別モノだが、YBCルヴァンカップの対戦成績は計6試合で○○△●●●というものだった。2度目の対戦ではことごとくやられた。城福浩監督もこの時点で、嫌な予感がしたのでないか?

 

中断期間に入った5月25日付の中国新聞に「クラブ新15試合勝ち点37」の見出しの記事が掲載された。2位のFC東京とは勝ち点9差。6月の終わり、サンフレッチェ広島は8日間の韓国キャンプで中断期間明けに備えた。

7月18日、中断明け第1戦。第16節のガンバ大阪戦(エディオンスタジアム広島)は4-0快勝だった。第17節の名古屋グランパス戦は0-0引き分け。サンフレッチェ広島は2位のFC東京に勝ち点7差をつけリーグ戦を折り返した。

その6日後、第18節の浦和レッズ戦で1-4の大敗を喫した。ホームでやってはいけない試合をやってしまった、と傍から見ればそうなる。だが、ピッチで戦った選手たちはもっと別の感覚を持ったに違いない。何かが違ってきている。相手の方が上を行っている…と…。

3月4日、第2節の浦和レッズ戦は2-1で勝利した。なぜ2度目の対戦では「堅守」が崩壊したのか?

その答えのヒントは、中断期間に入ってすぐの時点で聞いた足立修強化部長の話の中にもあった。

足立修強化部長の話

勝ち点差はまったく私たちは考えてませんね。勝ち点9は野球だと3ゲーム差みたいなものです。すぐに追いつける、置いつかれる数字ですからそこは気にしない。

やっぱりこれからも選手も僕らもそれは忘れて、一戦一戦目の前の勝ち点を取っていく。

ただ、この中断期間についてはいろいろなことがあると思いますし、下には力のあるチームがひしめいています。例えば莫大な資金で選手を取ってくるとか、もしかしたら監督も交代するようなことも考えられるし、以前にも言いましたが後半戦は別のリーグになるんじゃないかと思いますね。

今年は特殊なシーズンですから、今までの勝ち点、成績は忘れて、またもう一度ゼロから目の前の試合に集中する。それしかないと思いますし、うちはそういう集団ですから。

(城福浩監督も最近は、相手ではなく自分たちとの戦いだと言っている、と振られて)そうそう、そのとおり。我々がもっと勝負にこだわらなければいけないし、自分たちの求めているフットボールはまだまだ完成されていないので、その中で日々、自分たちと向き合いながらやっていきたい。

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足立修強化部長の言う「別のリーグ」(第18節以降)でサンフレッチェ広島はどんな戦いを目指すのか?

その準備を韓国キャンプなどを通じてじっくりとやったのは間違いない。

ただ、サンフレッチェ広島がトップに立つようなJ1リーグの折り返しを予想した関係者はほとんどいない。だいたい城福浩監督も「励ます会」のあいさつで「優勝します」とは言ってない。

足立修強化部長はこの時、「自分たちの求めているフットボールはまだまだ完成していない」とも言っている。

そうなると中断期間中に城福浩監督は「自分たち」の目指すサッカーと、J1首位をキープするサッカー、この2つのテーマを同時に追いかけることになったのではないか?別の見方をすれば、早々から首位に立ったため、城福浩監督が当初目指していた試合を重ねることで成長していくというスタイルにはならなかった、ということになる。

「生き馬の目を抜くJリーグ」(足立修強化部長)では、そうした相手のわずかな隙も突いてくる。それが首位を行くチームならなおさらだ。

中断期間は2カ月もあるのだから、サンフレッチェ広島のストロングポイントが相手のスカウティングによって丸裸にされたと考える方が普通だ。

サンフレッチェ広島は浦和レッズ相手に大敗を喫したあと、横浜F・マリノスに4-1で勝利、湘南ベルマーレに2-2で引き分け、V・ファーレン長崎とのピースマッチに2-0勝利と勝ち点は重ねていたものの、失点は止まらなくなった。

そして”直接対決”となった第23節、8月19日の川崎フロンターレ戦に1-2で敗れて、第22節で2位に浮上した川崎フロンターレを自分たちで勢いづかせた。

川崎フロンターレは猛追からのJ1制覇を得意とするのだから、この1敗もまた浦和レッズ戦の負けに匹敵するような手痛いものになった。

その後は第24節のセレッソ大阪戦に1-0で勝利、第25節の鹿島アントラーズ戦に3-1で快勝。

9月2日の中国新聞の見出しは「サンフレ首位固め」だった。2位の川崎フロンターレとは勝ち点9差。

だが”2度目の対戦”での本当の難しさ、「別リーグ」の怖さはそのあと急激にサンフレッチェ広島の攻守のバランスを狂わせた。

4月には1-0で勝ったサガン鳥栖に0-1で敗れ、同じく4月に1-3で敗れたFC東京には1-1で辛くも引き分けたが、そのあとガンバ大阪、柏レイソル、清水エスパルス、ジュビロ磐田、そしてベガルタ仙台に返り討ちにされた。この5チームには前半戦で負けていない。

けっきょく酷暑とハードスケジュールを乗り切り、さあこれからというはずの9月半ばからの7試合で6敗1分け。

数字で見ていくと今季の得点はパトリックに偏り過ぎている。これじゃマークが厳しくなるのは当たり前。そんなことは誰でもわかる。

そうならないように、城福浩監督も様々なトライを続けてきた。しかし結果的には急激に変化する相手の”包囲網”に対するオプションが少なすぎて「良い守備からよい攻撃」の形を取り戻すことはできなかった。

ちなみにサンフレッチェ広島の優勝の可能性を消された”決勝ゴール”はベガルタ仙台の石原直樹だったが、2012年のサンフレッチェ広島優勝では佐藤寿人の22得点に続く7得点を挙げたのがこの石原直樹と森崎浩司。

2013年のサンフレッチェ広島連覇では佐藤寿人17得点、石原直樹10得点。

また2015年の3度目のJ制覇では佐藤寿人12得点、32試合にうち30試合に途中出場の浅野拓磨が8得点で、21得点を挙げたドウグラスへのマークを見事に分散させている。

11月11日、サンフレッチェ広島が優勝を逃したことを憂う中国新聞には「広島のサッカーどこへ」の見出しが取ってあった。

サンフレッチェ広島のサッカーがどこかに行ってしまったというよりは、相手によってストロングポイントの芽をことごとく摘み取られ、実りの秋を迎える前に積もる落ち葉のどこかに埋もれて見えなくなっている、のではないだろうか?

エディオンスタジアム広島
エディオンスタジアム広島正面から望むイチョウ並木

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