中央公園の広島新サッカースタジアム完成に向け4者の思いが実は一致していない…画像は3月の4者会談から
特報!マツダスタジアムの3倍の270億円財源の不思議、ウイズコロナの広島中央公園サッカースタジアムが抱える問題点に迫る(1)
6月28日付の中国新聞1面に「サッカー場建設に260億円」「広島市事業費手当て21~24年度」の見出しの記事が掲載された。5面にも関連記事がある。
その要旨は…
・工事費約260億円の見積もり
・その財源は国からの交付金や寄付金、県と市からの支出
・広島市は支出分について20年度一般会計補正予算案に債務負担行為として設定、9月11日開会予定の市議会定例会に提出。
・県と市の間の負担割合は未決定、県議会側は広島市の提案した1:1割合に強く反発
・市民らに約束した2024年J開幕前の開業に向けスケジュール感的にぎりぎり
…というもの。
※債務負担行為…予算は単一年度で完結するのが原則。しかし1つの事業や事務が単年度で終了せずに後の年度においても「負担=支出」をしなければならない場合、あらかじめ後の年度の債務を約束することを予算で決めておく。議会ではその期限や限度額が決められる。
最初から広島の新サッカースタジアム問題をウォッチングしてきた広スタ特命取材班としてはまさに突っ込みどころ満載の状況ではあるが、まず指摘しなければならないのは全体の建設費だ。
中国新聞記事には「260億円」とある。
だが実はこの金額は「仮」のもの。まだ跳ね上がるかもしれない。
なぜか?
最終的な金額は、設計施工を一括方式で受注する事業者が議会承認を経て決まらなければ弾き出せない。
また「260億円」という数字自体も怪しい。すでに総事業費で言えば「270億円を超えている」という証言をひろスタ特命取材班では確認している。
しかし、それではまずいのだろう。
今年3月に作ったばかりの「基本計画」では総事業費は230~270億円だった。そのMAXもオーバーしている。
だいたい、行政側が示す「総事業費」ほどアバウトなものはない。自分のお金じゃないからいい加減なのか?計画性がないからそうなるのか?
松井市長と湯崎知事が二人三脚で「広島みなと公園」へのスタジアム建設をパワープレーで推し進めていたのはほんの数年前の話だが、その時、広島市が示した数字は次のようなものだった。
広島みなと公園での全体整備費192億円(歩道など12億円)
旧広島市民球場跡地での全体整備費260億円(高さ制限による掘り下げ費用など約99億円、本体160億9000万円)
中央公園での全体整備費190億円(本体172億円、歩道など12億円)
以上は2017年12月の時点での数字だ。3年もしないうちに中央公園での費用は、このどれよりも高くなった。
基町地区住民だけでなく、大多数の市民やサポーターの声を押し切って松井市長がリーダー役の4者会談で「中央公園」を建設地としたのは2019年2月。2017年12月時点での建設費比較表は”そのためだけ”に作られたものであり、その役目を終えた今となってはもう必要なし。ただし、さすがに旧広島市民球場跡地での260億円を上回る数字を中国新聞記者に伝えることは控えた、と見ることもできる。
…我々の目は節穴ではない。操るためだけの数字で「見出し」を取ったりはしない。
世界に誇る新たな器。持続可能性を大前提にした国内スタジアムの中でもマチナカの利点を最大限に活用した365日賑わう平和で笑顔の溢れる空間。
それを実現するのために相応の巨費がかかるのは当然だ。しかもウィズコロナの逆風が吹いている。
金額の高い低いよりも大事なのは、何にどれだけ投資してどんなベネフィットを生み出す計画なのか?その具体策はあるのか?それは実現できるのか?その責任者は誰なのか?
すでにひろスポ!では3月30日に開催された「4者会談」のそのタイミングで松井市長と湯崎知事の”不仲“イコール広島市と広島県の連携不足についての”不安材料”を投げかけておいた。
今回の中国新聞の記事の中でもそのことに触れている。広島市のリーダーシップの弱さが今後、サッカースタジアム建設を再び迷走させる恐れはないか?
それにしても270億円といえば、広島市が秋葉前市長の時から言い続けて未だ訂正していないマツダスタジアムの建設費「90億円」の3倍だ。もちろんマツダスタジアムの3倍以上のベネフィットを市民・県民・サポーターや広島っ子に提供できるのだろうからそれはそれでいいのかも…ではあるが…(ひろスタ特命取材班)
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